
スズキは2027年3月期の四輪車世界販売を前期比7%増の355万台とする計画を掲げています。実現すれば、ホンダの世界販売(339万台前後)を上回り、日本メーカーとして初めて世界2位のポジションに立つ公算が大きくなります。2026年3月期の四輪世界販売は332万台となり、販売規模を拡大するなかで、売上収益も過去最高水準に達しました。
一方、原材料価格や海上輸送費の上昇が利益を圧迫し、スズキは営業利益ベースで2期連続の減益を余儀なくされる見通しです。2027年3月期も売上高は伸びる一方で、原材料高などの影響により純利益は前期比で減少する見通しであり、数量拡大と収益性の両立が経営上の焦点となっています。
成長の軸となるのがインド事業です。スズキはインドで長年トップシェアを維持しており、同国での販売は世界全体の約6割に達します。インド自動車工業会によると、2025年度のインド新車販売台数(商用車を含む)は過去最高を更新しており、拡大を続ける内需がスズキの販売を支えています。スズキは、日本の軽自動車で培った小型車開発のノウハウを生かし、価格競争力と扱いやすさを兼ね備えた小型車を展開することで、中間層の拡大とともにモータリゼーションの波を取り込んできました。
その一方で、タタ・グループやマヒンドラ・アンド・マヒンドラ、韓国・現代自動車グループなどが安全性やデザイン性を訴求した小型SUVを相次いで投入し、スズキのシェアは一時の6割超から足元では4割を切る水準まで低下しています。調査会社のデータでは、インド市場におけるSUV比率は小型車を上回り、現在は5割に迫る水準に達しており、小型車中心のラインナップを持つスズキにとってSUVの拡充が喫緊の課題になっています。
インド拠点の輸出拡大とリスク
スズキはインド市場でのシェア維持と並行して、同国をグローバルな輸出拠点として活用する戦略を加速させています。インドでの四輪車年産能力については、2030年度をめどに400万台へ引き上げる計画で、現在の約260万台規模から5割以上の増強となります。2026年3月期にはインドからの輸出台数が前期比3割超の伸びを記録しており、アフリカなど成長性の高い地域向けの供給が拡大しました。インドで大量生産した車両を周辺地域に展開することで、スズキは規模の経済を追求し、価格競争力の一段の強化を狙います。
一方で、外部環境の不確実性は大きなリスク要因として横たわっています。中東紛争の長期化や原油価格の高止まりは、燃料費の上昇を通じてインドの自動車需要を押し下げる可能性があります。スズキは、原材料価格や海上輸送費の高騰が現在の水準で続いた場合、年間で1000億円規模の利益押し下げ要因になり得るとの試算を示しています。
競合他社もインドへの投資を強めており、トヨタはインド西部に新工場を建設し、2030年代に同国での生産を100万台規模に拡大する計画です。ホンダも2028年以降、インドで全長4メートル未満の小型車や中型車を投入し、二輪と四輪の顧客データを連携させるデジタルサービス会社を設立するなど、成長市場としてのインドへのコミットメントを鮮明にしています。
こうしたなかで、鈴木俊宏社長は「順位そのものではなく、顧客に受け入れられるクルマづくりが使命だ」と強調しており、インドでの競争力強化とアフリカなどへの輸出拡大という二正面の戦略によって、世界販売355万台と日本勢2位のポジションを確固たるものにする構えです。
