土田陽介のユーラシアモニター

【土田陽介のユーラシアモニター】ルーマニアはポーランドと並ぶウクライナ政策のフロント、ロシアの介入もあり得る

土田 陽介

土田 陽介
三菱UFJリサーチ&コンサルティング・主任研究員

follow
著者フォロー

フォロー中

2026.5.8(金)

2025年6月に発足した親欧のボロジャン政権だが、1年足らずで連立政権は崩壊した(写真:AP/アフロ)

 4月12日に行われたハンガリーの総選挙では、それまでの親露政権が崩壊し、新たに親欧政権が誕生した。一方、翌週の19日に行われたブルガリアの総選挙では、それまでの親欧の政党が敗北し、親露の政党が躍進するという逆転劇が生じた。とはいえ、ブルガリアの新政権がかつてのハンガリーのような反欧路線を採る公算は小さい。

 確かに、ブルガリアの総選挙で地滑り的な勝利を収めた中道左派連合を率いるルメン・ラデフ前大統領は親露の立場を取る。だからといって、国民の多くはブルガリアが欧州連合(EU)と敵対することを望んでいるわけではない。国民の多くがラデフ前大統領に託したのは、親欧の政党の下でブルガリアに蔓延した汚職の払拭である。

 汚職を払拭するには、法の支配を徹底していく必要がある。法の支配の徹底は、それこそEUがブルガリアに長年にわたり改善を求めていたイシューだ。親露だからといって、ハンガリーのビクトル・オルバン元首相のように法の支配を軽視し、血縁や地縁を優先するような政治を行えばラデフ元大統領は国民からの支持を直ぐ失うだろう。

 そもそもEUに加盟している以上、経済政策や外交政策の自主性は制限される。それにブルガリアは、この間にEUからの所得移転の恩恵を最も強く受けた国の1つでもある。年明けに悲願だったユーロ導入を果たし、外国人投資家による投資が増えると期待された折であるのに、ラデフ元大統領が反欧親露路線を採る必要はないと言える。

 また、ブルガリアはウクライナとの間で領土問題を抱えていない点も、ハンガリーとは大いに異なる。こうした意味で、ブルガリアの新政権が親露に転じるとしても、それはハンガリー的というよりもスロバキア的な性格にとどまるのかもしれない。つまり、親露だとしても、ブルガリアの新政権はEUとの全面対決は避けるということだ。

 ロシアにとってはEUにおいてハンガリーという“トロイの木馬”を失ったことになるが、その代わりにブルガリアが機能する可能性は低いのではないか。少なくともメインエンジンにはなり得ず、サブエンジン程度だろう。

 一方、ブルガリアよりもロシアにとってのトロイの木馬となりやすい国は、隣国のルーマニアである。

Share.