スーパーラグビー・パシフィックが後半戦に突入する。
 ここまでの戦いを経て、各チームの勢力図も徐々に固まりつつある。上位争いが本格化する中、今週末には首位攻防戦となるハリケーンズ×ブルーズが激突する。
 本稿では、レギュラーシーズン前半戦を振り返りつつ、ニュージーランド(以下、NZ)勢5チームとNZを拠点(オークランド)とするモアナ・パシフィカを含めた6チームの現在地を整理し、NZ国内で注目度が増している今週の大一番の見どころを探る。

◆シーズン前半は、NZ勢が優勢。

 16節あるレギュラーシーズンは8節を終え、折り返した。この時点での順位は、1位ハリケーンズ(25P)、2位ブルーズ(25P)、3位チーフス(22P)、4位ブランビーズ(20P)、5位クルセイダーズ(19P)、6位レッズ(18P)の6チームがプレーオフ圏内に入っている。

 内訳はNZ勢が上位3チームを含む4チーム、オーストラリア(以下、AUS)勢が2チーム。昨年の同時期は、NZ勢が2チーム、AUS勢が4チームだったことを考えると、今季はNZ勢有利になっている。

 しかし、7位のワラターズ、8位のハイランダーズはいずれも14Pで6位のレッズとわずか4ポイント差。9位のフォース(9P)も第8節でレッズに敵地で勝利(42-19)を挙げるなど、敗戦でも接戦が多く、プレーオフ争いに食い込む可能性を残す。

 一方で、10位のフィジアン・ドゥルアは、アウェーで引き続き結果を残せず、ホームの強さにもやや陰りが見える。1勝のモアナ・パシフィカとともに、パシフィック勢は下位に沈んでいる。

R8終了時の順位表。Super Rugby Pacific 公式 Xより

◆NZ勢の現在地:新生オールブラックスへのサバイバル。

 今季、NZ勢の最大の関心事はデイブ・レニー新指揮官による「セレクションのリセット」だ。
「パフォーマンスを重視する」とレニーHCが語っているように、今季の出来が直接ブラックジャージの行方を左右するため、主力は安泰ではなく、すべての選手にチャンスがある。
 新指揮官の目に留まるのは誰か。代表選考を懸けたサバイバルにも注目だ。

【ハリケーンズ】
 この「サバイバル」において、今季最も勢いを感じさせるのがハリケーンズだ。5勝1敗で首位を走る原動力は、「新司令塔の覚醒」と「セットピースの改善」にある。
 長期離脱のブレット・キャメロンに代わり、10番に入ったルーベン・ラヴが台頭。得意のランに加え、パス、キックの精度も向上したその姿は、全盛期のボーデン・バレットを彷彿とさせる。このラブの躍動がバックスリー(WTB/FB)の決定力をさらに加速させた。

 FW陣では、これまで課題だったラインアウトが、日本代表のLOワーナー・ディアンズの加入で大きく改善。チーム全体に安定感をもたらしている。NZ国内のメディア・ファンからは「今季最大の補強」「彼は怪物だ」と絶賛されるなど評価はすこぶる高い。
 また、引き続き攻守で充実しているバックロー(FL/NO8)の存在も大きく、全11チームで唯一失点が100点未満(98点)という堅守を支えている。チームに安定感が出てきた今、優勝も十分に現実味を帯びてきた。

【ブルーズ】
 主力の流出の影響が懸念されたが、若手の台頭により5勝2敗で2位につけている。
特に目を引くのはバックスリーだ。WTBコーディ・ヴァイとブルーズのレジェンドであるカーロス・スペンサーの息子FBペイトン・スペンサー。ともに元セブンズ代表の2人が躍動し、11番ケイレブ・クラークも好調を維持している。
 大ベテランのSOボーデン・バレットをはじめ経験のある選手らが、高い得点力を持つ彼らを巧みに導いている点も大きい。

 FW陣では、LOサム・ダリー、 LOジョシュ・ビアーの2人が、怪我で出遅れているパトリック・トゥイプロトゥの穴をしっかり埋めている。バックローでは、開幕前に注目選手として挙げたFL/NO8マラカイ・ランプリングがサイズと走力を活かしたボールキャリーで存在感を発揮している。
 2年前に優勝した時の『FW陣の泥臭さ』と粘り強いディフェンスが戻りつつあり、今季のブルーズは大崩れしない。優勝争いに食い込んでくる可能性は十分にある。

CTBでプレーするチーフスのリロイ・カーター。(撮影/松尾智規)

【チーフス】
 本調子とは言い難い中でも5勝2敗で3位。地力の高さを示している。
 SO/FBダミアン・マッケンジーはやや波があるが、不在時にはジョッシュ・ジェイコブが10番で存在感を発揮しているのは明るい材料だ。
 今季手薄となったCTBは、昨季代表入りしたWTBリロイ・カーターがここ数試合は13番で起用され、適応力の高さを見せた。戦術の幅が広がった点はプラス材料だ。

 FW陣の層の厚さは健在。過去3年決勝で涙を呑んでいるだけに、終盤に向けて状態を上げ、ピークをどこに持ってくるかが鍵となる。あわせて注目したいのが、司令塔(10番)と最後尾(15番)のユニットだ。マッケンジーの変幻自在なランをどこで活かすのか、そしてジェイコブをどう組み込むのか。首脳陣の起用法がチームの爆発力を左右することになりそうだ。

【クルセイダーズ】
 昨季の王者は開幕2連敗と苦しんだが、直近は3連勝で持ち直し4勝3敗で5位につけている。
 試合内容には波があり評価は難しいが、負傷者が続出しても層の厚さでカバーする力は健在だ。なかでも若手のLOジェイミー・ハナが、機動力とワークレートの高さに加えてラインアウトでも強さを発揮。サバティカルで休養の中のスコット・バレットの穴を十二分に埋めており、近い将来代表入りも予感させるほど着実な成長を見せている。

 4月3日は、震災後14年間共にした仮設スタジアムのラストゲームで有終の美を飾った。これまでクライストチャーチの厳しい寒さは終盤戦の強力なアドバンテージだったが、屋根付き新スタジアムへ移る今季、そのアドバンテージがどう変化するかも、終盤戦を占う一つの焦点となりそうだ。

仮設スタジアムでの最後の試合。怪我人が出ても層の厚いクルセイダーズ(中央はJ・ハナ)。(撮影/松尾智規)

【ハイランダーズ 】
 開幕戦でクルセイダーズを破るアップセットを演じたが、その後は波に乗れず3勝4敗で8位と苦戦が続いている。
 開幕直前で肩を負傷し、昨年代表デビューを果たしたファビアン・ホランドが離脱したことで、引き続きLOの層に不安を抱える。人材豊富なバックローからコンバートされたオリバー・ヘイグが昨年に続いてLOの役割をカバーできるのが救いだが、今後のLO陣のコンディションが鍵になりそうだ。

 勢いに乗れないチームの中でWTBタンギタウの存在は一際光る。今季代表入りが確実視されるほどの、圧巻のスピードと強さを兼ね備えたランでトライを奪う能力はリーグ随一だ。BKはこうした決定力があるだけに、司令塔のキャメロン・ミラーのゲームメイクを含めたパフォーマンスが引き続き鍵を握る。

【モアナ・パシフィカ】
 開幕戦でタフな敵地フィジーでドゥルアに快勝(40-26)した。その戦いぶりは見事だった。しかし、その後は失点が重なり1勝6敗で最下位に低迷している。
 アタックには爆発力があるだけに、ディフェンスの改善が急務だ。次期オールブラックスのディフェンスコーチ就任が内定しているタナ・ウマンガHCにとって、この窮地をどう立て直すかは、まさに手腕が問われる局面と言えるだろう。

 爆発的なアタックを勝利に結びつけるためには、粘り強い守備が不可欠だ。ディフェンスに安定感が出てこれば、昨年ファンを沸かせたあの躍動感あふれるチームへと再び進化できるはずだ。

第9節の組み合わせ。Super Rugby Pacific 公式 Xより

◆今週の大一番/ハリケーンズ ×ブルーズ @ウエリントン

4月11日キックオフ 19:05(NZタイム)

 後半戦の幕開けでいきなり訪れる大一番。プレーオフに向けた順位争いはもちろん、今後の戦いに向けた『心理的優位』と『勢い』を手にするという意味で、非常に大きな価値を持つ。勝ち点25で並ぶ(得失点差でハリケーンズが首位)両チームの対戦は、NZ国内でも大きな注目を集める首位攻防戦。 お互いに4連勝中と勢いに乗る両チームが真正面からぶつかる一戦は見逃せない。

【見どころ①:FW戦】
●セットピース(スクラム、ラインアウト)
 両軍とも決定力のあるBKを持つだけに、ポゼッション(ボール支配率)の起点となるセットピースの優位性を見極めたい。

●ブレイクダウン
 パワー、機動力、スキルを兼ね揃えているハリケーンズのバックローに対し、ブルーズがどこまで対抗できるか。ブルーズは、キャップホルダーのダルトン・パパリィイの不在をどう埋めるかが鍵となる。対するハリケーンズはベンチに通常より1人多いFW6人の「6-2」の構成でバックローの控えを厚くしており、後半にギアを上げて勝負を決めにいく構えがうかがえる。 

ハリケーンズのメンバー。Hurricanes Facebookより

【見どころ②:BKの決定力】
 この試合最大の見どころは両軍のBKの決定力だ。その力を引き出すのは、FW戦の優位性と司令塔(10番)のゲームメイク。司令塔の『経験値』ではブルーズ、中盤の『推進力』ではハリケーンズに分がある。
 バックスリーの決定力も含め、どちらがチャンスを確実に仕留めるかが勝敗を分けそうだ。

【見どころ③:ワーナー・ディアンズの存在】
 NZ生まれでありながら日本代表の主将を務めるディアンズは、今季のハリケーンズにおいても重要な役割を担う存在だ。ラインアウト、ディフェンス、豊富なワークレートで、試合を安定させる役割を担う。この強度の高い一戦でどこまで実力を発揮できるか注目したい。

ブルーズのメンバー。The Blues Facebookより

◆注目マッチアップ
●ワーナー・ディアンズ×サム・ダリーのLO対決
 完全にチームの核となったディアンズと、オールブラックスに定着しつつあるダリーとの対戦は必見!

●ピーター・ラカイ× マラカイ・ランプリングのNO8対決
 昨年は代表でも存在感を示したラカイと、ポテンシャルが開花しつつあるランプリングとの対決。この大一番での活躍が、オールブラックス・セレクター陣への強力なアピールになるだろう。

●ルーベン・ラヴ×ボーデン・バレットの10番対決
 代表では、常にボーデンの背中を追い続けてきたラヴが、憧れの先輩に挑む。「10番がやりたい」と口にする若き天才が、ボーデンを相手にブラックジャージの10番をその手で掴み取れるか。世界を知り尽くしたボーデンが格の違いを魅せるのか。デイブ・レニー新体制の「司令塔争い」を占う意味でも、今節、最も注目のマッチアップだ。

 見どころ満載の首位攻防戦。勝敗のゆくえは容易に予想できない。今季ここまでの屈指の注目カードと言えるだろう。

【仲間への想いを背負うブルーズ】
 最後に、ブルーズはチームとして特別な思いを背負ってこの一戦に臨む。LO/FLキャメロン・スアフォアが病との闘いの末に現役引退を決断。選手たちはその思いを胸に、髪を金髪や坊主にして結束を示した。  
 その強い共感と一体感はチームに計り知れない力をもたらすに違いない。首位攻防戦という大一番は、単なる勝利を追うだけでなく、仲間の想いも背負った特別な一戦となる。