【著者に聞く】『イランとアメリカ、そしてイスラエル 「ガザ以後」の中東』の高橋和夫が語るイラン戦争の今後

 トランプ政権がイランへの軍事行動に踏み切ってから2カ月、事態は当初の予測を大きく超えて泥沼の様相を呈している。世界有数の歴史と自負を持つイランに対し、アメリカとイスラエルが仕掛けた「短期決戦」というギャンブルは、今や世界経済を巻き込む巨大なリスクとなった。イラン側の強固な抵抗と、揺らぎ始めたアメリカの覇権、そして水面下で蠢く諜報機関の影──。混迷を極める中東情勢の深層と、日本が直面する現実について、『イランとアメリカ、そしてイスラエル 「ガザ以後」の中東』を上梓した高橋和夫氏に聞いた。(聞き手:池松聡)

──本書の冒頭に、「情勢がシナリオを追い抜いて進行している」という一文がありました 。まさに現在、予測を超えて動いているイラン情勢についてどう分析されていますか?

高橋和夫氏(以下、高橋):はい。ちょうど戦争が始まって1カ月ちょっと過ぎ、2カ月目に入ったところですね。率直に言って、アメリカとイスラエルは「戦争は簡単に終わって、イランの体制はすぐに崩れるだろう」と高を括っていたのだと思います。特にアメリカはその傾向が強かった。

 しかし、蓋を開けてみればもう1カ月以上も続いています。ある意味でトランプ大統領は、「簡単に戦争に勝てる」というギャンブルに踏み切り、その賭けに負けてしまったわけです。このままギャンブルをやめて家に帰るのか、それとも「陸上部隊の投入」という、さらに大きな賭け金を積み増してもう一度勝負に出るのか。トランプ大統領は今、とても苦しい瀬戸際に立たされています。

イランの反撃を受けるイスラエル(写真:ロイター/アフロ)

──その歴史的な背景として、イランとアメリカの関係はこれまでどのように変化してきたのでしょうか?

高橋:歴史を紐解くと、イランという国は常に北のロシアと、南(インド側)の大英帝国という二大国からの圧力を受けて苦労してきました。その状況を打破するために、イラン人が「助けてほしい」と期待を込めて接近したのがアメリカだったのです。

 ところが、1953年にアメリカはイギリスと共にクーデターを仕掛け、当時の民主的な政権を倒して自分たちに都合の良い王様(国王)を無理やり押し付けました。イランの人々にとって、アメリカは「憧れていたのに裏切られた相手」という深い傷跡になっています。

 それが1979年の革命で一気に爆発し、体制がひっくり返りました。すると今度は、アメリカ側が1979年の革命時の大使館の占拠事件や人質事件を「自分たちが被害者になった瞬間」として記憶することになります。

 つまり、アメリカ人は自分たちをイラン関係での「被害者」だと思い込み、イラン人もまたアメリカに騙された「被害者」だと考えています。双方が被害者意識に凝り固まっていて、相手の歩んできた歴史に思いをいたすことができない。これが、この関係の最も不幸な特徴です。

──そもそもイランとは、どのような国家なのでしょうか?