In a nutshell:
2023年4月に京都フュージョニアリング(KF)のPlasma Heating部門に入社した森山さん。筑波大学でミラー型プラズマ閉じ込め装置「GAMMA 10」の実験に関わったのち、現在の量子科学技術研究開発機構(QST)とその前身である日本原子力研究所(原研)ではJT-60プロジェクトに従事しました。約40年にも上るフュージョンエネルギーの研究開発で培った経験と知見を活かし、当社のジャイロトロンシステムの試験をリードするとともに、新たな技術開発拠点の立ち上げを行っています。

森山さんがフュージョンエネルギーに携わるようになったきっかけを教えてください。

私がフュージョンエネルギーに携わるようになったきっかけは、筑波大学の学部4年生の時に、フュージョンエネルギーを研究する研究室に入ったことです。研究室を選んだり、卒業論文のテーマを考えたりしていたころ、筑波大学で世界最大のタンデムミラー型プラズマ閉じ込め装置「GAMMA 10/PDX」の前身となる「GAMMA 10」があることを知り、それを機にフュージョンエネルギーについても知ることになりました。

当時、フュージョンエネルギーは「夢のエネルギー」と呼ばれていて、そのスケールの大きさや未知のエネルギーといった点に強く惹かれました。一方で、自分の手で実際に装置を動かして実験できるという現実的な手触りもあり、その二面性に魅力を感じ、フュージョンエネルギーの研究室に入ることを決め、この業界に携わるようになりました。また、子どものころから本やテレビ番組の影響で、物理と仮想現実に興味を持っていたことも関係していたかもしれませんね。

研究室ではどのような研究に取り組まれていましたか?

研究室では、GAMMA 10のプラズマ温度を確認するために高エネルギー粒子を計測したり、温度を上げるための中性粒子ビーム(NBI)を運転したりしていました。理論よりも装置を使いながら実験を行うことに重点を置いており、実際に手を動かして学ぶ機会が多くあったんです。

そのおかげで真空装置や高電圧電源、工作機械の扱い方、クレーンの運転方法まで、理論や知識だけでなく、実務に求められる様々な技術を身につけることができました。

やがて大学院修了を目前に、「より高い性能を持つ規模の大きな装置でフュージョンエネルギーの研究開発をしたい」という思いが強くなりましたが、当時の日本には今のようにフュージョンエネルギーに関わるスタートアップをはじめとした民間企業はほとんどなく、大手メーカーへの就職を考えていました。ちょうどそのころ、研究室宛に日本原子力研究所(原研、現在の量子科学研究開発機構:QST)の研究者募集の案内が届いたことをきっかけに、原研に入る道を選びました。ここまで研究を続けてきたフュージョンエネルギーに真正面から取り組める環境に飛び込めると分かったときは嬉しかったですね。

原研およびQSTではどのような業務を担当していましたか?

トカマク型のフュージョン実験装置「JT-60U」で、プラズマを加熱するためのイオンサイクロトロン加熱装置や電子サイクロトロン加熱(ECH)装置の運転と技術開発に携わっていました。現在KFの主力事業であるジャイロトロンシステムの開発に関わるようになったのがこの時です。

研究室での経験もあり、クレーンや高電圧電源の使い方など、実務的な業務は比較的早くできるようになりました。しかし、これまで研究をしていた高エネルギー粒子計画やNBIとは異なり、イオンサイクロトロン加熱装置やECHに必要なプラズマ高周波加熱の理論については、まだ覚えなければいけないことが山積みでした。

ただ、先輩研究者から装置の原理や仕様を丁寧に教えてもらい、少しずつ知識と経験を積み重ねていくうちに、「こうすれば装置の性能を上げられるのではないか」といった提案を自らできるようになりました。提案通りに機器の仕様を調整し、実際にジャイロトロンシステムの性能向上につながったときは、プロジェクトに貢献できたという実感が湧いて誇らしかったですし、エンジニアとしての自信につながりました。

こうした成功体験がさらに私を突き動かし、どのような仕様の装置が効率的なのか、どうやったら求めているデータを取得できるのかなどを日々考えながら仕事をするようになりました。専門家が集まるような会議や委員会にも積極的に出席し、巨大な装置を動かす上での注意点やどうすれば装置が壊れにくくなるのか、効率を上げるにはどこに注目すべきかなど、様々な情報やアイデアを集めていました。

その後、「JT-60U」の後継にあたる「JT-60SA」のプロジェクトが進む中で、これまでの経験や知見が評価され、プラント組み立て業務のマネジメントを任されることになりました。ジャイロトロンシステムなどの装置を組み立てる業務はこれまでにも行っていましたが、チームを率いるマネージャーとして関わるのはこの時が初めてでした。

それまでのように個人で完結する働き方とは異なり、マネージャーとしてチームをまとめる立場になったことで、思うような成果が出ないときには責任の重さを強く感じました。また、プロジェクトの進捗を踏まえた現場作業の調整やメンバーのモチベーションの維持など、マネジメントならではの難しさに頭を抱えることも少なくはありませんでした。しかし、チーム一丸となって試験を成功させたときの達成感は、個人で成果を出した時以上に大きいものでしたね。

森山さんがこれまで約40年にわたり、フュージョンエネルギーの研究開発に関わって感じる面白さややりがいについて教えてください。

私たちが作るフュージョンエネルギー分野で使用する装置は量産品ではありません。時には前例のないものを作ることもあり、一度で理想を実現するのは極めて困難です。そのため試行錯誤を繰り返し、時間をかけて少しずつ理想に近づけていく粘り強さが求められます。それゆえに挫折しそうになることもありますが、私がいた環境では、周りの同僚が一緒になって解決策を考えてくれたり、挑戦に対して背中を押してくれたりしたので、失敗を恐れずに研究開発を進めることができました。

また、大きな装置を動かして試験をすることの大変さをよく理解している人たちが周りにいたので、「成果を得るまで粘り強く実験を繰り返しても良い」という安心感も心の支えでした。

これまで世の中に存在していなかったものを扱うからこそ大変な側面もありますが、試験や運転がうまく行ったときの達成感は計り知れません。また、フュージョンエネルギーという次世代エネルギーの実現に貢献しているという使命感も、私が研究開発を進める上での原動力になっていましたね。

京都フュージョニアリング(KF)に入社しようと思ったきっかけを教えてください。

「JT-60SA」は国レベルで取り組むプロジェクトなので、スケールも大きく、携われることによる喜びややりがいも感じていました。ただ、ここまでのキャリアで、現場仕事からマネジメントまでの一通りを経験し、ふと私の原点である高周波加熱装置の技術開発に再び関わりたいと思うようになりました。ちょうどそのタイミングでKFのことを知ったんです。

調べてみると、ECHを主力事業の一つとしており、日本の長年の研究の成果とものづくり技術を結集させたジャイロトロンシステムとして研究機関や企業に供給していることが分かりました。「KFならやりたいことができるかもしれない」と大きな可能性を感じたことに加え、QSTで一緒にジャイロトロンシステムを開発していた坂本さんがKFで活躍されていたこともあり、「ぜひ自分も関わらせてもらいたい」と相談を持ち掛けました。坂本さんと話をしたことでより深くKFのことを知り、さらに転職の意思が強くなりました。その後、KFの求人に応募し、今に至っています。

現在KFで担当されていることを教えてください。

Plasma Heating部門のHead of ECH Facility Departmentとして、ジャイロトロンシステムの技術開発を行うための環境整備を担うチームをマネジメントし、電源などの各種設備の検討・設計・調達等に加え、直近では新たな拠点の立ち上げにも取り組んでいます。また、これまでのジャイロトロン開発の経験を活かし、技術開発や性能試験にも関わっています。

現在は主に拠点の立ち上げに時間を割いており、直近の発表にもある通り、ジャイロトロンシステムの研究開発拠点「KF滋賀イノベーションファクトリー」の開設を進めています。KF滋賀イノベーションファクトリーは、ジャイロトロンシステムとしては初めての自社開発拠点であり、今後の事業や技術開発にとって重要な役割を果たす場所です。これまでは研究機関や企業の施設を借りてジャイロトロンシステムの開発や試験を行っていましたが、拠点を集約することでメンバー同士の連携も強化され、開発スピードの一層の向上が期待できます。

ただ、実際にはゼロからの立ち上げで、相当な労力を要します。設備や備品の設置など、まだまだ整えるべき点は多いですが、今年秋の稼働に向けて、メンバーと連携しながら鋭意取り組んでいるところです。秋以降は高電圧を使う作業や、大きな機械を据え付ける作業などを予定していて、その後ジャイロトロンシステムの開発や性能試験を順次開始していきます。 直近では執務エリアのリノベーションを行い、イスや机を一通り設置できたので、ようやくオフィスらしい環境が整ってきました。研究開発エリアも段階的に整備を進めているので、拠点全体として少しずつ完成に近づいています。私は現地で対応していることもあり、まっさらな状態から拠点が徐々に形になっていく様子を間近で見られるため、日々とてもワクワクしながら取り組めています。

現在のKF滋賀イノベーションファクトリーの様子

さらに、KF滋賀イノベーションファクトリーは自社管理の開発拠点のため、場所の整備だけでなく各種ルールや安全対策についても準備が必要です。私は責任者としてチームをマネジメントしながら、安全管理業務を担当する松平さんらとも連携し、事故が起きないように細心の注意を払って、拠点に必要な機器や設備の導入や安全に関するルールの整備を進めています。

森山さんがKFで仕事をしていて感じていることを教えてください。

KFで働き始めてから、物事を動かすスピード感に驚くことが多いです。例えば、ジャイロトロンシステムの受注一つをとっても、顧客からの相談から契約の締結までの一連のプロセスがスムーズで、各部門が縦割りではなく横の連携がとてもできていると感じます。また顧客と対峙するビジネスメンバーは技術に関する知識も豊富で、これまで研究機関ではあまり接点のない職種の人たちだったこともあり、その仕事ぶりにはとても感心しました。「これが民間企業の推進力なのか」と驚くばかりですが、私も遅れをとるわけにはいきませんので、日々周りに刺激を受けながら必死に取り組んでいます。

ほかにも、メンバー一人ひとりが前向きに、楽しそうに仕事に取り組んでいるところは、KFの大きな魅力だと感じています。ジャイロトロンシステムは、すでに多くの受注を獲得していて、エンジニアをはじめメンバーはかなり多忙な状況です。そこへ新たに、アメリカのフュージョンスタートアップ「Realta Fusion」からも受注をしたことで、さらに忙しくなることは明白です。それでもメンバーは、お互いを励ましたり、サポートしたりしながら真摯に仕事に向き合っています。当たり前のことではありますが、そうした状況でもやりがいや楽しさを見出しているメンバーと働けていることはとても嬉しいですね。

森山さん自身もやりがいを感じながら仕事されているようですね。

KFに入社してから、日々やりがいを感じています。ジャイロトロンシステムの技術開発や試験、新たな拠点の開設に加え、メンバーのマネジメントと、責任ある仕事に幅広く関わることができ、とても充実しています。 拠点の開設においては、開発や試験ができる環境として十分な広さや特殊な電源設備など様々な制約があることから、候補地を見学するために日本各地を飛び回った時期もありました。並行して、拠点に必要な設備の仕様書を書いたり、機器の配置を検討したりと、業務の多さに圧倒される毎日でした。だからこそ「KF滋賀イノベーションファクトリー」の開設を発表し、それが新聞などのニュースとして取り上げられているのを目にしたときは、達成感と喜びに満たされました。

最後にKFおよびフュージョンエネルギー業界で達成したいことを教えてください。

1つ目には、より効率よくジャイロトロンシステムを開発できるように、仕組みや体制を構築していきたいです。ジャイロトロンシステムの性能を発揮させるためには細かな調整を行う必要があるのですが、それには職人のようなスキルが求められます。理論だけでなく、経験によって得られる言語化が困難な「感覚」も必要です。これを、AIや自動制御を使って再現できるようにすることで属人化を解消し、次世代のエンジニアが自立的にジャイロトロンシステムの性能を試験できるようにしたいと考えています。

2つ目には、ジャイロトロンシステムの開発をより加速させるためにも、チーム全体のスキルアップに取り組みたいです。そのために、私がこれまでのキャリアで培った経験や考え方を惜しみなく共有しています。エンジニアメンバーは優秀なので、ほんの少し方向性を示すだけで、指示の意図をしっかり理解し、自走してくれます。伝えたことをどんどん吸収し、エンジニアとして成長していくので教えがいがありますし、私ももっと頑張ろうと刺激を貰えているんです。

お互いに切磋琢磨しながら、全身全霊でチーム全体の技術力を高め、高い周波数、高パワー、高効率のジャイロトロンシステムの開発を推進していきます。

その結果、世界中の様々なフュージョンエネルギープラントにKFのジャイロトロンシステムが採用されるようになればうれしい限りです。

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