高知県室戸市の中心部にある室戸魚市場が設備の老朽化のため、3月31日、閉鎖されました。
漁業のまち・室戸の歴史を支えてきた市場の最後を追いました。
室戸市の室津港にある高知県漁協室戸魚市場です。
この日は午前7時から漁船が入り、漁師たちが前の日までに近海で獲った魚を持ち込みました。
メダイを中心にカツオやキハダマグロなど様々な魚が並びます。
水揚げ量は、あわせて約2トン。最近の水揚げでは、多い方だといいます。
■市場の人
「メナ(メダイ)が1トン近く、釣れた方ですね。カツオもいま、どこもかしこも揚がりゆうみたいで大漁です。室戸統括の市場に対しては、もう最後になるかと思います」
室戸魚市場は、49年前に建て替えたままで老朽化が進行。コンクリートの柱はひび割れ、外壁がはがれ落ちて、中の鉄筋がむき出しになっているところが目立ちます。
県漁協は2025年、建て替えや改修が困難と判断し、2026年3月末の閉鎖を決めました。
室戸魚市場は、明治時代につくられ、室戸市の中心市街地から一番近い位置にある市場として発展してきました。
戦後、室津港が全国有数の遠洋マグロ漁船の拠点になると、市場も隆盛を極め、室戸の経済を支えます。
しかし、排他的経済水域の制限や漁獲量の国際的な規制、オイルショックなどによって1970年代後半から室戸の遠洋マグロ漁は低迷しました。
その後、室戸の漁業を支えたのがキンメダイ。しかし近年、黒潮大蛇行の影響などで漁獲量が急激に減りました。
漁獲量の低下とともに、市場の年間の水揚げ額は2009年には7億7000万円だったのが、2024年は9000万円あまりまで下がりました。こうした流れも閉鎖を決断する要因となりました。
この日、水揚げに来た漁師の竹村正人さん(64歳)です。
父も漁師だった竹村さんにとって歴史のある市場の閉鎖に寂しさを隠せません。
■竹村正人さん
「子どもの頃でしたけど、父親もマグロ漁船に乗ってまして、ここを母港として出港して、本当ずらりっとマグロ船が立て続けに並んでいた状態で、出港の時には、家族とか友人、知人、たくさんの方が来て、紙テープ投げて、盛大な見送りしよった記憶はある。閉鎖になるいうなことは、まったく想像も、その当時からいえば想像もできなかった」
市場にサイレンの音が響くと仲買人が集まり、競りが始まります。
「ネイリ、タイ釣ってます―。ネイリ特2キロ」
仲買人が、値段を書いた紙を見せて魚を競り落としました。
■竹村さん
「(メダイが)200~300円ぐらい安い、キロ単価で。いつもやったら1000円以上しちょったんやけど、きょうは820円。燃料代とるのにいっぱいよ」
漁師たちを苦しめる魚価の低迷と燃料の高騰。
この状態が長引けば、操業にも影響が出てくると竹村さんは懸念します。
■竹村さん
「値段が良かったらね、少々天候が悪くても、無理してでも行きよった。これだけ魚価が安くなったら、天候が悪いからもう行かない漁師さん増えるでしょう。負の連鎖よ」
3月31日。時化の中で、室戸魚市場は、最後の日を迎えました。
水揚げに来た漁船は1隻だけ。
並べられた魚は、カツオとシイラの2種類。量もわずかです。
長年、室戸の街に響いていた市場のサイレンもこれが最後です。
■市場の競り人
「これが、ここでの最後の入札になります。高値でお願いします。きのうの分です。カツオの中。」
■競り人
「はい。これで終わりです。ありがとうございました」
わずかな時間で最後の競りが終わりました。
■仲買人
「最後の最後らしく、時化て少なかった。寂しいのひとこと」
漁業のまち・室戸の歴史とともに歩んできた市場が静かに幕を閉じました。
■市場の競り人
「にぎやかな時もあっただろうし、生まれる前からあった港なんで、閉鎖になるのは寂しい気持ちでいっぱいです」
市場とともに、近くにある県漁協室戸統括支所も閉鎖。
4月1日から、支所の人員や市場の機能は、約2.5キロ離れた、室戸岬魚市場に統合して新たな体制でスタートしました。
漁協の職員たちは、荷物の引っ越しや旧・室戸統括支所の片付けに追われていました。
■県漁協・芸東統括・室戸岬支所・室戸支所前田克子統括長
「皆さんが残念、寂しいって言われるけど、また、ここから新たにスタートできるように、我々職員一同頑張っていきたいなと思う」
室戸魚市場は、製氷機能や給油施設など一部の機能は残して、解体する予定ですが、費用などの点でスケジュールの目途は立っていません。
最後の競りが終わった市場に、予約で買い付けていた魚を取りに竹村さんが訪れました。
■竹村さん
「室戸の歴史が一つ、幕が下りたような感じで、本当に寂しいですよ。あっけないです」
室戸の中心的な存在だった魚市場の閉鎖は、地域の基幹産業である漁業の低迷と課題をあらためて浮き彫りにした形となりました。
