「空飛ぶクルマ」と呼ばれる新型航空機が、早ければ6月にも米国の空域で運用を開始する。ヘリコプターのように狭い場所で離着陸し、飛行機のように飛行できる。米運輸省が3月9日(米国時間)に発表した。
ニューヨーク州やニュージャージー州、テキサス州、フロリダ州、ニューメキシコ州アルバカーキなど全米8地域が、3年間のパイロットプログラムに参加する。連邦航空局(FAA)の正式認証前でも、新型機が人や貨物の輸送に使われる見通しだ。
この技術を開発する企業は、自社の航空機はヘリコプターや飛行機よりも静かで低コスト、排出量も少ないと説明している。なかには完全自律飛行による移動を実現できるとする企業もある。
電動垂直離着陸機(eVTOL)や超短距離離着陸機(ULSTOL)など、プロジェクトにかかわる多くの機体は、従来の航空機よりもはるかに小さなスペースで運用できる。空港ではなく、人々の生活や職場に近い場所で離着陸することも可能だ。企業側は、一般の人々が隣接する都市間を数分で移動し、地上の交通渋滞の上空を航行する未来を描いている。

Electraが開発中の9人乗りハイブリッド電動式超短距離離着陸機「EL9 Ultra Short」。
Courtesy of Electra「空飛ぶクルマ」、SFから現実へ
今月初めの投資家向けの決算説明会で、プロジェクトに参加する企業のひとつ、Archer Aviationの創業者兼最高経営責任者(CEO)アダム・ゴールドスタインは、この連邦政府のパイロットプログラムについて「わたしたちにとっての“ウェイモの瞬間”だ」と表現した。無人タクシーで知られるウェイモがそうだったように、SFのようだった構想が現実へと変わる転換点だという。
「これからの目標は、国内の大都市で50万人が、これらの航空機を日常の通勤手段の一部として見るようになることです。ちょうど人々が毎日のようにウェイモの車を目にするようになったのと同じです」とゴールドスタインは語った。
Archer Aviationの電動エアタクシー「Midnight」は、最大4人の乗客を乗せ、60〜90分程度の移動を想定して設計されている。同社はテキサス、フロリダ、ニューヨークで実施されるパイロットプロジェクトに参加する予定だ。
ゴールドスタインは投資家に対し、Midnightは認証取得に向けた重要な工程を「今後数四半期のうちに」完了する見込みだと語った。
同社には自動車メーカーのステランティスやユナイテッド航空が出資している。
パイロットプロジェクトにはこのほか、小型の電動航空機を手がけるBeta Technologies、トヨタやJetBlueが出資するエアタクシー企業Joby Aviation、ハイブリッド電動式ULSTOLを開発する Electraなども参加している。これら4社はいずれも、米国で試験飛行を終えている。
「パイロットプログラムの意義は、これが幻想ではないことを示せる点です」とElectraのCEOマーク・アレンは『WIRED』に語った。「SFではありません。現実のものです」
規制緩和と認証制度
トランプ政権がこの新しい航空技術への支持を初めて示したのは2025年6月だった。トランプ大統領は、米国でのドローンや空飛ぶクルマ、超音速航空機の運用を巡る「煩雑な規制」を削減することを目的とした大統領令に署名した。
