漁港を囲む高さ14.7メートルの防潮堤

そんな田老漁港を囲むようにそびえ立つのが、2021年に完成した新しい防潮堤だ。高さ14.7メートル、総延長1.2キロ。およそビルの5階の高さに相当する。

この巨大な防潮堤を近隣の住民は「高いほうがいい」と歓迎している、と近くで食料雑貨店を営む川戸弘治さん(79)は言う。

田老は有史以来繰り返し津波に襲われてきた町だ。慶長16年(1611年)をはじめ、複数の古文書に津波の記録が残る。近代以降も津波に襲われ、明治29年(1896年)では1859人、昭和8年(1933年)では911人と、多くの犠牲者を出してきた。

この多大な被災経験から、田老では昭和8年の津波の翌年から巨大な防潮堤を築いていった。

「防潮堤は私の子どものときにはもうあった。その上をマラソン大会で走ったり、イベントで活用したり。市民にとって田老に防潮堤があるのは当たり前という認識でしたね」

NPO法人・津波太郎の前理事長、大棒秀一さん(74)はそう振り返る。第1防潮堤が完成したのは昭和33年(1958年)のこと。高さ10メートル、全長1.35キロ。断面図にすると山型、上から見ると南北に「く」を裏返したような形だった。