人と企業が交差する 宮崎県えびの市 物流分野で投資相次ぐ

人と企業が交差する 宮崎県えびの市 物流分野で投資相次ぐ

宮崎県えびの市が分譲中の「えびのインター産業団地」で、企業進出が着実に積み上がっている。特に物流の分野で、同市に優位性を見いだす企業の受け皿として投資が相次ぐ。宮崎県の最西部にあり、熊本と鹿児島両県と接するなど南九州の中央部に位置し、市内で3方向に分岐する高速道の利便性が生きている。

低温物流倉庫が完成 高まる物流総合力

えびのインター産業団地
 人材確保、地の利で誘致堅調

2月上旬、えびのインター産業団地では、八代丸善運輸(熊本県八代市)が建設していた「えびの産業団地第2低温物流センター」が稼働した。一部2階建て、延べ床面積約3700平方メートルの施設で、同団地で初の冷蔵・冷凍機能を持つ倉庫となる。中山義彦えびの市長は「産業活性化に向けて団地が一歩進んだ」と祝辞を送った。

同センターは、低温物流大手のムロオ(広島県呉市)が施設全体を借り受けて運用する。えびの市内の営業所を移転し、機能を強化する。宮崎、鹿児島をはじめとする南九州エリアに本格的な低温倉庫を構えることで顧客ニーズや課題に対応する考えだ。

松岡弘次ムロオ取締役は「食の安全やeコマース拡大、物流の2024年問題などに対する変革において、極めて重要な戦略拠点になる」と力を込めた。顧客向け配送拠点となるほか、大手スーパーチェーンの低温物流センターの受託運営業務も4月に始める。


施設内部

八代丸善運輸は運営面でも協業するほか、同団地に取得済みの隣接区画で新たな展開も見据える。関連企業のマルゼングループ協同組合(福岡県久留米市)は24年、同団地に大型の賃貸型物流センターを開設。医療機器、園芸・農業用品、菓子の商社が入居している。今回の低温施設の完成で、団地内に3温度帯の物流施設が整い、総合力が高まった。

相次ぐ企業進出には、市の後押しも大きい。労働力確保では1人最大40万円の助成金を従業員に直接給付する。労働力人口は近隣6市町を含めて約7万人に上る。ムロオは50人規模の新規雇用を計画したが、市によると確保のめどをつけることができたという。

また立地企業への雇用促進助成金は最大1000万円。用地取得や工場建設にかかる優遇制度もある。テナント型物流施設を設ける事業者も対象だ。

宮崎県も九州で高水準となる限度額50億円の立地促進補助金を用意しており、地域を挙げて進出をサポートする。

新たな物流網の基点に 産官・異業種連携で実証

陸・海路で関西往復 モーダルシフト、BCPに強み

えびの市は交通の要衝に位置づけられ、多数の製造業や物流業が拠点を置く。市内を貫く九州自動車道は、北方面で福岡・熊本、南方面で鹿児島と接続する。九州道は市内で宮崎道が東に分岐し、都城市や宮崎市とも直接つながる立地にある。

事業継続計画(BCP)の観点からも注目される。南海トラフ地震に対する津波被害の想定はなく、宮崎県内の後方支援拠点にもなりうる。市内に駐屯する陸上自衛隊との連携も強い。こうした地理的条件を生かした、広域における物流変革でも着目される。


物流実証において宮崎港で下船するトラック

鈴与(静岡市清水区)を代表とする産官連携体「九州広域モーダルシフト・BCP推進協議会」は1月、えびの市を中継拠点として活用する共同物流実証を実施した。物流企業のほか、メーカーも参画する業界横断型の試みで、流通経済研究所(東京都千代田区)が事務局を務めた。

関西と南九州を結ぶ物流において、九州北部や中国地方を経由する陸路のみのルートからの転換を主眼とする。九州は宮崎港、関西は神戸港をフェリー輸送で結ぶことで、二酸化炭素(CO2)排出量の低減やトラックドライバーの負担軽減を図る。日用雑貨と酒類・飲料を積み荷として共同輸送、往復輸送することで積載率も向上させる狙いだ。

えびの市は南九州における出荷・集荷拠点として役割を果たした。25年にも農産物を対象に同様の実証を実施した。実証を重ねる中で手応えを得ており、災害時にも冗長性を持たせられる持続可能な物流網の形成に道を開く構えだ。

市は実証で終わらず、社会実装に向けて今後も活動を見込む。こうした物流面での存在感と機能の向上を通じて、製造業をはじめとする多様な産業の立地につなげることを目指す。

「なぜ、えびの?」立地企業に聞く

医療機関向け配送 “恵まれた立地” キシヤ

キシヤは1910年に創業し、福岡市に本社を置いています。九州各地の医療機関に向けて多様な医療材料を販売する企業です。注射器や針といった商品から、磁気共鳴断層撮影装置(MRI)などまで幅広く提供しています。なかでもSPD事業は病院内の医療材料すべてを一元管理する物流システムを用いた病院向けサービスで、93年に全国に先駆けて始めました。

えびの市に開設した物流センターは熊本南部、宮崎、鹿児島で物流の要となる拠点です。自然災害や地震などが起きた際にも、医療現場に向けた安定供給を実現するために進出しました。各事業所の戦略と連動しながら、顧客の要望に応えられるセンターの運営を目指しています。


キシヤ 高崎万寿男 専務

物流管理はパート職員の力が大事になります。当初、えびの市で必要とする規模の人材を確保できるか不安があったのも事実です。しかし、市による説明会や雇用対策助成金の成果もあって適切に運営できています。特に雇用対策助成金は有効で、「助成金があったため応募した」との声も職員から聞いています。

準備段階から考えても、えびの市は恵まれた立地です。企業が行政のサポートでチャレンジできる場所だと強く感じています。

南九州の拠点化で「2024年問題」解決へ 八代丸善運輸

八代丸善運輸は2006年に熊本県八代市で設立しました。「一般」「第一種」の貨物運送業、倉庫業を営んでいます。八代港の大型冷凍倉庫や35台の大型冷凍車などを駆使し、青果や食品をはじめとする貨物を冷凍・冷蔵で全国に配送しています。こうした経営資源と人材の総合力を背景にした、顧客ニーズに合わせた提案が強みです。

えびの市には24年、「えびのインター産業団地」に営業所を構えました。ドライバー5人を採用し、大型3台、中型2台のトラックを導入しました。協力会社の力も借りながら順調に運営できています。


八代丸善運輸 寺口賢 社長

物流業界ではドライバーの残業時間に対する上限規制などがかかる「2024年問題」の解決が課題です。当社にとって物流を維持するために南九州での拠点化が必須でした。

えびの市は熊本、鹿児島両県との県境にあり、当社の営業所は九州自動車道のインターチェンジまで500メートルという立地です。えびの市から南九州や熊本に向けてスピーディーにアクセスでき、生産性を高めることができています。

進出から1年が経過し、運営開始にまでこぎつけたのは人材採用をはじめとする、市の支援があってこそだと強く感じます。

 えびのインター産業団地のご紹介 お問い合わせはこちら

 ・えびのインター産業団地のご案内
 https://www.city.ebino.lg.jp/soshiki/kigyoritchi/1/1/1/1456.html

 ・えびの市 企業立地課 立地推進係
 郵便番号:889-4292 宮崎県えびの市大字栗下1292番地
 電話番号:0984-35-3727
 ファクス:0984-35-0401