宇宙新興企業スペースワン(東京)の小型ロケット「カイロス」3号機は5日午前11時10分、和歌山県串本町の発射場から打ち上げられたが、直後に飛行中断措置が取られた。天候などを理由に延期を繰り返した末の挑戦も初号機、2号機に続く失敗となり、見学場に詰めかけた約400人のファンからはため息が漏れた。

打ち上げられた「カイロス」3号機を見上げる人たち(5日午前11時10分、和歌山県串本町で)=吉野拓也撮影打ち上げられた「カイロス」3号機を見上げる人たち(5日午前11時10分、和歌山県串本町で)=吉野拓也撮影「カイロス」を巡る主な経緯「カイロス」を巡る主な経緯

 串本町の見学場では、集まった親子連れらが発射予定時刻に合わせてカウントダウン。快晴の空にロケットが
轟音(ごうおん)
とともに真っすぐ打ち上がると、「頑張れ」「行け」と声援を送った。会場には拍手があふれたが、間もなく飛行中断措置を取ったとのアナウンスが流れ、驚きが広がった。

 ロケットのエンジニアになるのが夢だという兵庫県伊丹市の小学6年の男児(12)は、カイロスの柄が入った帽子を身に着けて見守った。男児は「打ち上がる音や光がすごい迫力だった。成功するまで応援し続ける」と力を込めた。

 大阪府箕面市から訪れた見学者(62)は、道中の道の駅で知り合ったバイク乗り2人と一緒に見学。ツーリングが趣味で、ロケットの発射場がある鹿児島県を旅行した際に「打ち上げの迫力がすごい」と聞き、一目見たいと足を運んだという。「万歳できずに残念だったが、これからも応援したい」と語った。

 見学場は、串本町の隣の那智勝浦町にも設けられた。奈良県大和高田市の会社員(50)は妻(47)、長男(7)と家族3人で来場。初号機の打ち上げから毎回訪れており、「子どもの成長を見守るような気持ちで応援してきた」という。

 この日の打ち上げはうまくいかなかったが、「2号機の時のように上空で旋回して見えたので、失敗かなと思った。でも、とにかく打ち上がって良かった。また来ます」と話した。

「串本と一緒に見守る」、出身の大学生打ち上げを見守る清野さん(5日午前11時12分、和歌山県串本町で)打ち上げを見守る清野さん(5日午前11時12分、和歌山県串本町で)

 和歌山県串本町出身の和歌山大2年、清野健太郎さん(20)は、カイロスの挑戦に魅了された一人だ。5日は母校の県立串本古座高校(串本町)で後輩らと打ち上げを見守り、「今回の失敗を糧に、成功に向けて進んでいってほしい」とエールを送った。

 人口減が進んでいた串本町に発射場が建設されることが明らかになったのは、中学生だった2019年。「宇宙事業は町の起爆剤になる」。串本古座高校に入学すると、教育用の「模擬人工衛星」の開発など宇宙関連の課外活動に同級生らと取り組んだ。宇宙をテーマに生まれ育った町を盛り上げたいと、和歌山大観光学部への進学を決めた。

 入学直前の24年3月にあった初号機の打ち上げでは、町内の灯台から動画配信に取り組んだ。初号機は発射の約5秒後に爆発したが、「とても大きな挑戦に立ち会っているんだと実感した」とカイロスへの思い入れがより強まった。

 大学では地方の観光振興策について学ぶ傍ら、民間企業が企画する発射場の見学ツアーにガイドとして協力。母校の課外活動の紹介や宇宙に絡めた町内の商品の宣伝などを行っている。

 目標は「宇宙分野を通じて地元へ恩返しする」ことだ。打ち上げ予定だった今月1日は串本町の見学場でのトークイベントに登壇。予定時刻の直前に延期となったが、「楽しみが延びた」と前を向いた。

 5日は、直前に打ち上げが中止された4日に続いて母校で行われた動画中継イベントに協力した。後輩たちとカウントダウンで盛り上げ、3号機が発射されると、「上がれ」と声援を送った。打ち上げは失敗に終わったが、「成功する日まで、串本や全国の皆さんと一緒に見守り続けていきたい」と話した。

関西発の最新ニュースと話題
あわせて読みたい