イェンス ヴィッシング監督のもとで始まった新生ガンバのキーワードは『前へ』。

選手、スタッフの誰もがその言葉を心に据えて、

プレーも思考も、さらにはフットボーラーとしての生き方を含めて前への意識を強め、サッカーに向き合っている。

今シーズンのWE ARE GAMBA OSAKAはそんな「前へ」突き進む男たちが、

キャリアを大きく動かした体験や出会いといった『突破』の瞬間にスポットをあてる。

その先に、彼らはどんな世界を見出したのだろうか。

 ガンバ大阪ユース時代の高校1年生の時、日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の決勝戦で味わった悔しさは今も山本天翔の脳裏に焼きついている。そこで感じた自分への不甲斐なさは反骨心に変わった。

「全国大会のグループステージでこそ途中交代で出た試合もあったんですけど、なかなか出場時間を伸ばせないままチームは準決勝、決勝と勝ち上がって…。しかもその決勝では同期の當野泰生が同点ゴールを、武井遼太朗が逆転ゴールを決めたんです。結果、延長、PK戦の末に優勝することができたんですけど、ベンチ脇からその姿を見ていた自分に残ったのは悔しさだけでした。でも、それを晴らすには腐らずにやるしかない、と。クラブユースが終わった後も試合に出られない状況が続いて、Bチームでプレーしていた時期もあったけどとにかくやり続けようと思っていました」

 小さい頃から目先の目標を1つずつクリアしながら成長を見出してきたからこそ、その時も自分の足元を見つめて、変化を求めたという。

「まずはクラブユースのことは一旦、忘れて、もう一度、自分の1つ1つのプレーや日々の過ごし方を見つめ直し、課題を着実にクリアしていくことを心掛ける毎日を積み重ねていました」

 その助けになったのが、中学1年生の時からずっと書き続けてきた『サッカーノート』だ。ジュニアユース時代から毎日、書き続けてきた言葉の数々は、自分から目を逸らさずに前に進む力に変わった。

「御堂筋線で千里中央駅まで1時間近く電車で移動しなくちゃいけなかったので、その時間を有効に使おうと思い、テスト勉強とサッカーノートを書く時間に充てました。以来、寮生活になったユース時代も含めて6年間、ずっとサッカーノートを書いていました。その日、自分が感じたこと、なぜそんな気持ちになったのか、とか、プレー面でもよかった部分、悪かった部分を挙げて、頭の中を整理し、次の日の練習に活かすみたいな感じです。自分の現状をちゃんと理解した上で進んでいこうと思っていました」

 そうした日々が、初めて実を結んだと思えたのは高校2年生時に迎えた日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の決勝戦だ。この試合に先発した山本は、2-2で迎えた前半アディショナルタイム。40+6分に直接フリーキックで決勝ゴールを決め、チームの『連覇』に貢献する。

「1年間コツコツ取り組んできたことが報われた瞬間だったし、自分の目の前の壁を1つ突破できた瞬間だったのかなと思います」

 と同時に、その成功体験は「日々を積み重ねる大切さ」をリマインドすることに繋がった。

「大きな目標から逆算して今を頑張る選手もいますけど、僕は性格的に大きな目標を立てるのが得意ではないというか。せいぜい1ヶ月先くらいまでのことしか考えられない。ユース時代も『絶対にプロになりたい』とは思っていたけど、それを具体的に考えることはほぼなかったです。3年生になり、進路を考える時期に差し掛かって初めて『自分はプロになれるのかな』と考えましたけど、それまではただ必死に毎日を頑張っていただけでした。それはプロになった今も変わっていません。1日も早くポジションを奪ってやるとか、試合に出たいという気持ちはありますけど、そこを漠然と目指していても叶わないと思うので。今の僕は、ボールを持っている時は強みを出せる一方で、オフザボールでのポジショニングや球際、運動量は課題が多いと感じているからこそ、まずはそこにしっかり向き合って、やり続けようと思っています」

 その日々を積み上げた先に、ピッチで輝く自分がいると信じて。



高村美砂●文 text by Takamura Misa