インドの西ガーツ山脈に生息する希少なキングコブラの一種が、鉄道を利用して本来の生息地ではない場所へと分布を広げている可能性が研究によって示されました。学術誌・Biotropicaに掲載されたこの研究は、過去22年間にわたる救助記録や目撃情報の分析から、特定の個体が鉄道インフラの近くで発見されている事実を明らかにしました。

Snakes on Trains: Railways May Sway Goa’s King Cobra Distribution – Parmar – 2026 – Biotropica – Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/btp.70157

Snakes on trains: King cobras are ‘hopping railways’ to unsuitable habitats in India
https://phys.org/news/2026-01-snakes-king-cobras-railways-unsuitable.html

ドイツ・ケーニッヒ動物学研究博物館の研究チームは2002年から2024年までの記録を基に、キングコブラの一種であるOphiophagus kaalingaのインド・ゴア州における47カ所の生息地点を特定しました。

モデルの分析によると、生息適性に最も強く寄与した変数は、最も暖かい時期の降水量(41.5%)であり、次いで最高気温(29.8%)が重要な要因となっていました。Ophiophagus kaalingaは州内の東部内陸側に位置する、標高が高く植生が豊かな森林地帯や川沿いの湿地帯(リパリアンゾーン)を主な生息地としていることが明らかになりました。


一方で、生息に不適切と予測された低地の沿岸部などで5件の発見例があり、これらはいずれも主要な鉄道インフラから330m以内の近距離に位置していました。統計的な分析の結果、鉄道付近で見つかった地点の生息適性値は平均0.48であり、森林などの本来の生息地の平均0.84と比べて有意に低いことが判明しています。

具体的な事例として、ゴア州南部のチャンドール駅では、鉄道の整備資材の下からキングコブラが救助されています。また、ゴア州のバスコ・ダ・ガマ駅の近くでも生息適性モデルの予測から大きく外れた場所で個体が発見されました。


インド国内では走行中の列車内でインドコブラが目撃されるなど、鉄道車両内にヘビが侵入する事案が増加しており、研究チームはこれらのヘビが獲物となるネズミや他のヘビを追って、あるいは身を隠す場所を求めて貨物列車などに紛れ込み、そのまま遠方へ運ばれたという「受動的な拡散」の仮説を立てています。

こうした鉄道車両による移動は、道路が個体群を分断する障壁や致死的なリスクとなるのとは対照的に、個体群を繋ぐ高速の移動経路として機能している可能性があります。しかし、本来は分布していないはずの人間居住区に猛毒を持つヘビが現れることは、公衆衛生上の深刻な脅威となります。インドにはキングコブラ専用の抗毒素がなく、噛まれた場合は15分以内に死に至ることもあるため、人間とヘビの双方にとってのリスクを軽減するための啓発活動や調査の継続が求められています。

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