2026
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2026年2月18日から20日にかけて開催される「Consensus Hong Kong 2026」は、単なる業界の祭典ではなく、世界の暗号資産政策の潮流を決定づける極めて重要な分水嶺となる。CoinDeskと世界的な規制研究機関が共同で発表する「State of Crypto Policy(仮想通貨政策の現状)」レポートは、米国における政治的な行き詰まりと、対照的に着実な法整備を進めるアジア太平洋地域のコントラストを鮮明に描き出している。
目次
「State of Crypto Policy」が浮き彫りにする米国の停滞とアジアの好機
今回のカンファレンスで最も注目されるのは、CoinDeskがThe analusis and research teamsと共同で作成した包括的な政策レポートの発表である。このレポートは、2025年の米国大統領選挙後の政治的混乱がいかに業界の足かせとなっているかを冷徹に分析している。トランプ政権下での期待とは裏腹に、米国では連邦レベルでの包括的なステーブルコイン法案や市場構造法案の成立が遅れており、SEC(証券取引委員会)とCFTC(商品先物取引委員会)の管轄争いも解決の糸口が見えていない。対して、レポートは香港、シンガポール、日本といったアジア諸国が、明確なライセンス制度と消費者保護ルールを確立し、機関投資家の資金を呼び込むための「安全地帯」を構築している点を高く評価している。Consensus Hong Kongの政策トラックでは、この「規制のアービトラージ(裁定取引)」が加速する現状に対し、米国の政策立案者やアジアの規制当局者がどのような見解を示すかが最大の焦点となる。
香港における規制の成熟とステーブルコイン・RWAへの実務的アプローチ
香港は2023年のVATP(暗号資産取引所)ライセンス制度導入以降、Web3ハブとしての地位を確固たるものにしつつある。今回のイベントでは、香港金融管理局(HKMA)や証券先物委員会(SFC)の幹部が登壇し、次なるフェーズである「ステーブルコイン発行者に対する規制サンドボックス」の成果や、RWA(現実資産)トークン化に関する法的ガイドラインの詳細を共有する予定である。
特に、クロスボーダー決済におけるステーブルコインの活用は、米ドル覇権に対する挑戦とも捉えられかねない敏感なテーマだが、香港当局はこれを金融包摂と効率化の文脈で推進する姿勢を崩していない。
また、中国本土との「コネクト」機能についても、デジタル人民元(e-CNY)との相互運用性を含めた技術的な実証実験の進捗が語られる可能性が高い。これは、閉塞感が漂う欧米市場に対し、アジアが実需に基づいたユースケースを着実に積み上げていることを世界に示す好機となる。
DeFiとプライバシー規制の調和点を探る
政策トラックのもう一つの隠れたテーマは、DeFi(分散型金融)とプライバシープロトコルの扱いである。米国ではトルネード・キャッシュ制裁以降、プライバシー技術に対する風当たりが強いが、アジアの一部地域では、コンプライアンスを遵守した形でのプライバシー保護技術(ゼロ知識証明など)の導入に前向きな議論が存在する。
Consensus Hong Kongでは、規制当局と開発者が同じテーブルにつき、マネーロンダリング対策(AML)と技術革新を両立させるための「埋め込み型監督(Embedded Supervision)」の可能性について議論が交わされる。これは、規制をコードに直接組み込むことで、事後的な法執行ではなく、リアルタイムでのコンプライアンスを実現しようとする野心的な試みであり、その成否は今後のDeFi規制の国際標準を左右することになるだろう。
まとめ
香港で開催される「Consensus Hong Kong 2026」に向けた政策プレビューのニュースは、アジア、特に香港が、欧米の規制の不透明感を背景に、世界の暗号資産・Web3政策の「新たな羅針盤」としての地位を確立しようとしていることを示しています。
これは、暗号資産のハブを巡る世界的な主導権争いが、米国からアジアへと大きくシフトし、より明確で予測可能な規制枠組みが市場の成長を牽引するフェーズに入ったことを意味します。
Consensus Hong Kong 2026では、ステーブルコインの包括的な法規制、RWA(現実資産)のトークン化、そしてデジタル資産のカストディ(保管)に関する国際標準が主要な議題となっています。香港当局は、個人投資家への門戸を開放しつつ、厳格なライセンス制度(VASP制度)を運用することで、「イノベーションと投資家保護の両立」という世界中の規制当局が直面する難題に対して、一つの完成されたモデルを提示しようとしています。特に、香港を拠点としたステーブルコイン発行の枠組みや、ETFを通じた既存金融との統合は、中国本土との関係性も含め、世界の投資家が最も注視する政策動向です。
分析的な視点では、香港が主導する政策形成には大きなメリットがあります。米国の規制が「執行による規制(Regulation by enforcement)」と批判され不透明さを増す中で、香港が提供する「ルールに基づいた規制」は、大手機関投資家が安心して参入できる土壌を提供します。これにより、アジア全域での流動性が向上し、Web3関連のスタートアップや人材の集積が加速します。一方で、課題やリスクも存在します。中国本土の厳格な暗号資産禁止方針との整合性をどう保ち続けるかという政治的リスクや、シンガポールやドバイといった他のハブとの激しい誘致合戦の中で、独自性をいかに維持するかという点が問われています。また、規制が厳格すぎることで、初期段階のイノベーションが阻害される可能性(オーバーレギュレーション)も常に懸念されています。
今後の展望としては、Consensus Hong Kong 2026で示される政策の方向性が、G20や金融安定理事会(FSB)による国際的な規制議論にどの程度反映されるのか、そして香港が名実ともに「暗号資産の首都」としての地位を米国から奪うことになるのか、その「政策の輸出」の行方に注目すべきです。
