古墳を背に音楽ステージが組まれ、来場者はライブを聴きながら、ブースに並ぶ前方後円墳や
埴輪(はにわ)
形の手作りマスコットを手に取る。昨年11月、大阪府高槻市の
今城塚(いましろづか)
古墳公園で開かれた15回目の「古墳フェス はにコット」には、古代と現代が混在していた。

今城塚古墳で復元された埴輪と写真を撮る来場者今城塚古墳で復元された埴輪と写真を撮る来場者

 はにコットとは、「はにわ」と「マスコット」を組み合わせた造語。初めて訪れたという大阪市東成区の会社員の女性(42)は「埴輪の表情って、とてもポップ。様々な古墳や埴輪のグッズに囲まれることができる場所はここだけ」と満足げだった。

 今城塚古墳は墳丘の長さ181メートルの巨大な前方後円墳で、6世紀前半に造られた継体天皇の墓と考えられている。市が整備した古墳公園には出土した人物埴輪や家形埴輪、大刀形埴輪など約190点の埴輪が復元され、市民の憩いの場として愛されている。

古墳や埴輪への愛を語る牧梨恵さん古墳や埴輪への愛を語る牧梨恵さん

 フェスを始めたのは、約20年前に古墳の近くに引っ越してきたアクセサリー作家、牧梨恵さん(45)だ。ある日、幼い娘と散歩しているいつものコースが、古墳の区域内だと知った。日常が、当たり前のように1500年前につながっていることの驚き。「当時の人たちはどんな思いでこの古墳を造ったんだろう」。遺跡の向こうにいる古代人に興味がわいた。

 2011年に市が古墳公園を整備したのを機に、自身が得意とする手芸を使って歴史の魅力を伝えられないかと考えた。市に掛け合い、翌年、公園を会場にアクセサリーやグッズを販売するはにコットを始めた。

 古墳を愛好する人々は、これまでにもいた。奈良県明日香村の高松塚古墳で女子群像などの壁画が見つかった1972年、日本は考古学ブームに沸いた。89年には佐賀県の吉野ヶ里遺跡で弥生時代の
環濠(かんごう)
集落が見つかり、邪馬台国論争が巻き起こった。当時のブームの主な担い手は地域の中高年だった。

古墳や埴輪をモチーフとしたグッズが販売されたブース古墳や埴輪をモチーフとしたグッズが販売されたブース

 しかし今、はにコットに集まるのは若い女性や家族連れなどが中心だ。尚美学園大名誉教授(日本考古学)の桜井準也さんは「背景には2000年代以降の『かわいい』ブームがある。古墳や埴輪を擬人化したり、デフォルメしたり。ゆるキャラブームとの相乗効果もあり、若い世代が興味を持つようになった」と分析する。

埼玉古墳群を舞台に開催された「行田古墳フェスティバル」=埼玉県行田市提供埼玉古墳群を舞台に開催された「行田古墳フェスティバル」=埼玉県行田市提供

 そうした共通の趣味をもつ人たちが集まる場としてはにコットは1回目から3000人の来場者を集め、今では1日で約3万9000人が集まる一大イベントとなった。

 桜井さんは「現代の古墳ブームはグッズやアートを中心としたもので、これまでの古代史ブームとは異なる社会現象」とするが、グッズを入り口に古代史に関心を深め、発掘現場で開かれる「現地説明会」に埴輪のマスコットをぶら下げた若者たちが駆けつける光景もみられるようになった。

 丸みのある単純な造形に囲まれ、みんなで古代を感じることができる場所を、牧さんは「癒やしの空間」と表現する。

古墳シンガー まりこふんさん 

 全国3000基以上の古墳を訪れ、各地のイベントで古墳への愛を歌い上げる古墳シンガー、まりこふんさんに、古墳がもつ「場」の力を聞いた。

 ブルースシンガーの私が古墳に興味を持ったきっかけは、ライブの合間に訪れた大山古墳(仁徳天皇陵古墳、堺市)でした。教科書で勉強した鍵穴の形を見たかったのですが、大きすぎて森にしか見えず、宮内庁が管理している陵墓のため、中にも入れない。世界三大墳墓の一つなのにもったいない、と興味を持つようになりました。

 古墳には、前方後円墳だけでなく円墳や方墳、八角墳など色々な形があり、とてもかわいく、おしゃれだと思います。「古墳をゆるく楽しく
愛(め)
でる」をモットーに、2013年には「古墳にコーフン協会」を設立しました。堅苦しいこと抜きに楽しんでもらおうと、古墳バスツアーのナビゲーターも務めています。

 「かわいい」を求めて現地を訪れてみると、古墳を造った人や残そうとした人の思いに触れ、古代と現代がつながっていると感じることができます。様々な人の思いに触れることで、新しい楽曲のインスピレーションが得られることもあります。私にとって、古墳は創作意欲がわく場所でもあります。

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