2026年1月16日、日本で行われた日伊首脳会談では、両国関係の強化に向けた議題の一つとして、宇宙分野が取り上げられた。

日本とイタリア(伊)は、ともに宇宙開発分野において高い技術力と実績を持つ国である。近年は、月探査や地球観測、宇宙安全保障といった分野を中心に、日伊間での連携強化が注目されている。欧州宇宙機関(ESA)の中核国であるイタリアは、衛星、ロケット、地上運用といった宇宙産業の主要領域を自国企業で広く持つ数少ない国の一つだ。

本記事では、言及された日伊協力の文脈を踏まえつつ、今後、日本との協力も期待されるイタリアを代表する宇宙企業3社を紹介する。

日伊が宇宙開発で協力

今回の日伊首脳会談では、両国関係が特別な戦略的パートナーとして位置付けられ、防衛・安全保障やエネルギーなど、幅広い分野で協力関係を強化していく方針が確認された。

宇宙分野については、技術協力を進める枠組みとして、新たに「宇宙協議」を立ち上げる方針が示された。国際宇宙ステーションにおけるミッション協力をはじめ、地球観測、産業間連携、災害監視などの分野で、具体的な成果をともに目指していくとしている。

イタリアはESAの主要出資国であり、NATOとも強く結びついた宇宙防衛技術を保有する。一方、日本は高い信頼性を強みとする衛星・ロケット技術に加え、近年は軌道上での接近・運用技術(RPO)でも存在感を示している。こうした特性を踏まえると、日伊の協力は技術面と地政学的観点の双方から合理性が高いと言えるだろう。

イタリア(伊)を代表する宇宙企業3社

イタリアで活躍する企業のなかで、今後日本との協力でも名前が上がる可能性の高い、代表的な3社を紹介する。

Leonardo(レオナルド)

Leonardoは、イタリアを代表する航空・防衛・宇宙の統合企業であり、宇宙分野では同国最大級の存在感を持つ。旧フィンメカニカとして知られ、現在も国策色の強い企業だ。

主な事業領域は以下の3つ。

衛星搭載用センサー(SARレーダー、光学系)

宇宙用エレクトロニクス

防衛宇宙システム

特にSAR(合成開口レーダー)分野では世界トップクラスの技術力を有し、気象条件に左右されない地球観測能力を提供している。これは防災、インフラ監視、安全保障用途で極めて重要だ。日本企業に例えるなら、三菱電機やNECの宇宙・防衛部門を統合したような存在であり、日伊協力においても中核的パートナーとなり得る。

Avio(アヴィオ)

Avioは、イタリアを代表するロケットメーカーであり、欧州の小型〜中型打上げを担うVegaロケットシリーズの主契約企業だ。

主な事業領域は以下の3つ。

Vega / Vega-Cロケットの開発・製造

固体燃料ロケットエンジン技術

欧州の小型衛星打上げインフラを支える

近年、小型衛星コンステレーションの需要拡大により、小型ロケットの戦略的重要性は急速に高まっている。Avioはこの分野で欧州の独自性を支える存在である。

SITAEL(シタエル)

SITAELは、イタリアを代表する新興宇宙企業の一社であり、小型衛星と電気推進分野を中心に存在感を高めている企業だ。大手企業が主導してきたイタリア宇宙産業の中で、次世代・低コスト・量産志向を体現するプレイヤーとして注目されている。

主な事業領域は以下の3つ。

小型人工衛星の設計・製造

電気推進システム

低軌道向け宇宙機プラットフォーム

特に電気推進分野では、軌道変更や寿命延長に不可欠なイオンスラスターを自社開発しており、燃費性能と運用効率の高さが強みだ。これは小型衛星コンステレーションの拡大が進む現在の宇宙市場において、運用コスト削減とミッション柔軟性の両立を可能にする重要技術である。

宇宙デブリ問題はアストロスケールに注目

宇宙分野における日伊協力を考える上で、近年国際的な政策課題として存在感を増しているのが、宇宙デブリ(スペースデブリ)問題である。

地球低軌道(LEO)を中心に人工衛星の数が急増する一方で、運用を終えた衛星や破片が軌道上に滞留し続けることで、衝突リスクは年々高まっている。これは通信・測位・地球観測といった民生用途だけでなく、防衛・安全保障面でも深刻な脅威となっている。

こうした中で注目されるのが、日本発の宇宙スタートアップ、アストロスケールだ。同社は、世界で初めて宇宙デブリ除去を主目的とした事業化に挑戦しており、すでに実証フェーズから商業フェーズへの移行段階に入りつつある。

アストロスケールは、日本のみならず欧州とも関係が深い。英国子会社を通じて欧州宇宙機関(ESA)や各国政府と連携し、デブリ除去技術の実証を進めてきた。 こうした背景を踏まえると、今回の首脳会談を契機に、日伊連携の枠組みの中で宇宙デブリ対策が具体的な協力テーマとして位置付けられていく可能性もあるだろう。

さいごに

宇宙開発はもはや一国完結の時代ではなく、価値観と技術力を共有する国同士が、制度や役割分担を前提に連携していくことが不可欠となっている。日本とイタリアは、いずれも民生と安全保障の両立を重視しつつ、国際的な枠組みの中で宇宙開発を進めてきた点で共通しており、協力関係を構築しやすい条件を備えている。

今後は、地球観測や月・深宇宙探査といった伝統的な分野に加え、宇宙インフラの安全確保や産業連携といった政策色の強い領域でも、日伊協力が具体化していく可能性がある。今回紹介したイタリアの宇宙企業が、日本企業や日本の宇宙政策とどのように関わっていくのか。日伊関係の深化とともに、その動向を引き続き注視していきたい。