「オルン X デザイナーズ」プログラムに参加したブランドの作品。左から「オロー コンセプト」「ヨシタ 1967」「ロムジー」「イミ&キミ」

伝統的な職人技術やクラフトの価値が見直される中、2025年に発足した汎アフリカ組織のオルン(ORUN)は、文化・クリエイティブ産業をアフリカの経済的・社会的基盤として再定義することを目指している。そして1月8日、初のプログラムとなる「オルン X デザイナーズ(ORUN X DESIGNERS)」のイベント「偉大な遺産の日(Heirs of Greatness Day)」をモロッコ・カサブランカで開催した。

アフリカの経済的・文化的・技術的主権を築くために集まった汎アフリカの専門家や起業家によるアフリカ・カレンシー・ネットワーク(AFRICA CURRENCY NETWORK)を母体とするオルンの活動の核となるのは、「記憶(Memory)」「構造(Structure)」「継承(Transmission)」という3つの柱から成る「ザ・ソブリン・コード(The Sovereign Code)」。それを適用する同プログラムでは、アフリカが有するクラフツマンシップの遺産を持続可能なシステムへと転換し、デザイナーを社会的・文化的インパクトを生み出す担い手へと変えていくことに挑む。

イベント会場での展示

イベント会場での展示

イベント会場での展示

イベント会場での展示

イベント会場での展示

イベント会場での展示

イベント会場での展示

今回参加したのは、ケニアの「ヨシタ 1967(YOSHITA 1967)」やセネガルの「ロムジー(ROMZY)」、コートジボワールの「オロー コンセプト(OLOOH CONCEPT)」、中央アフリカ共和国とフランスで活動する「イミ&キミ(IMI & KIMI)」、モロッコとフランスを行き来する「アスワド(ASWAD)」など、アフリカ各地にルーツを持つブランドのデザイナーやアーティスト。それぞれが自身の故郷の伝統やサヴォアフェールを現代的な視点で再解釈しながら、職人と共に作品を制作した。

「偉大な遺産の日」では、会場に織物、染色、クロシェ、皮革、鋳造、陶芸、クチュールというクラフトの分野ごとにスペースが設け、異なる演出でデザイナーやクリエイターが制作した作品を展示。イベントは、音楽やダンスを通してアフリカの文化を体感するガラディナーで締めくくられた。

ガラディナーでのパフォーマンス3

ガラディナーでのパフォーマンス3

ガラディナーでのパフォーマンス3

ガラディナーでのパフォーマンス3

ガラディナーでのパフォーマンス3

ガラディナーでのパフォーマンス3

「偉大さとは、単に力や富のことではなく、私たちが生み出すことができる永続的な影響力のこと」と考えるハビバ・ティエロ(Habyba Thiero)創設者兼アフリカ・カレンシー・ネットワーク最高経営責任者(CEO)は、「ラグジュアリーはいつから意義や時間、卓越性に根差した体験ではなく、価格と経済的排除を示す記号になってしまったのか」と今の世界に問う。そんな彼女に、オルン設立の背景から国を超えて取り組む理由、今後の構想までを尋ねた。

ハビバ・ティエロ=オルン創設者兼アフリカ・カレンシー・ネットワーク最高経営責任者

WWD:オルンを立ち上げた背景には、どのような問題意識があったのか。

ハビバ・ティエロ=オルン創設者兼アフリカ・カレンシー・ネットワークCEO(以下、ティエロ):オルンは、根源的な必要性から生まれた。それは、人間の尊厳を私たちの発展モデルの中心に戻すこと。アフリカでは歴史的にお金だけで価値が測られてきたわけではない。価値とは、社会に与えるインパクトであり、有用性であり、時間の中で残される痕跡だった。そして私たちのエコシステムにおける最大の課題は、クリエイティビティーではなく構造の欠如。アフリカの創造を持続的に評価・価値化し、次世代へと引き継ぐためのシステムがなく、共通の基準や長期的な認知、継承の仕組み、そして自らの物語を語るための主権が欠けていた。

WWD:オルンの中核である「ザ・ソブリン・コード」とは、具体的にいうと?

ティエロ:オルンは、時間を超えて持続するインパクトを生み出すことを目的に設計されている。そのための基盤となるのが、「ザ・ソブリン・コード」だ。第一の柱である「記憶」とは、分断されてきた過去に立ち返り、アフリカの文化的アイデンティティの基盤を成す知識や物語、ジェスチャーを認識・記録し、正当に評価すること。記憶なくして、継続性はない。第二の柱は、私たちの遺産を今の時代に定着させる「構造」。どれほど素晴らしい創造であっても、構造がなければ脆弱なまま終わってしまう。品質基準やガバナンス、バリューチェーン、経済モデルなどを通じて、創造を持続可能なシステムへと変革したい。そして第三の柱は「継承」。教育、認証、文献化、人材育成を通じて、今日生まれた価値が個人に依存することなく、次世代へと受け継がれるようにする。継承を通じて、システムが時を超えて存続することを保証する。

WWD:オルンが国を越え、アフリカ全体で取り組む理由は?

ティエロ:アフリカの課題や可能性は、国家の枠組みを越えて存在している。分断は弱体化を招き、協働は力をもたらす。一団となって行動することで知識や専門性を共有できるだけでなく、国際市場で通用する規模と信頼性を持ちながらアフリカ独自の基準を構築し、グローバルな文化産業において力強く統一された声を発することができると考えている。オルンの汎アフリカ主義はイデオロギーではない。競争力、主権、そして持続可能性を確保するための実務的なものだ。

WWD:「オルン X デザイナーズ」に続き、今後はどのような取り組みを構想しているか?

ティエロ:今後は、教育および認証プログラム、研究と文献化のプラットフォーム、国際機関や教育機関、産業との協働、文化・テクノロジー・経済開発が交差するプロジェクトを段階的に展開する予定だ。いずれの取り組みも、文化的遺産を持続可能な開発の推進力に変えるという共有の目的に基づいている。

WWD:5年後、オルンはどのような姿を目指しているか?

ティエロ:5年後、オルンの成功は明確な指標で測られるだろう。それは、職人が自らの手仕事によって尊厳ある生活を送れているか、アフリカのデザイナーが自身のバリューチェーンを掌握しているか、アフリカの基準が国際的に認められているか、そしてこの継承のシステムが創設者を超えて存続しているかということ。それが、時間を超えて生き残るインパクトで偉大さを測るということだ。