川喜多 綾川喜多 綾

カナダ市民権法の改訂

明けましておめでとうございます。2026年もTORJAの皆様に有意義な情報を提供させて頂けるよう、尽力致しますのでどうぞ宜しくお願い致します。
さて、この記事を書いている2025年12月15日にカナダ政府は通称Bill C-3、「An Act to Amend the Citizenship Act 2025」を正式に制定しました。これは長年議論されてきた 「first-generation limit(第一世代制限)」 を見直す歴史的な改革と言えます。

第一世代制限とは

カナダで生まれて海外へ居住し、そこで子供が生まれた場合には、その子供はカナダ国籍であるものとされてきました。但しその子供(つまり孫であり第二世代)が海外で生まれた場合には、自動的にカナダ国籍を得ることはできないというルールでした。この制限によって、海外で生まれた子供たちがカナダ国籍を認められない事例が相次ぎ、長年「Lost Canadians」として問題視されてきました。

弊社のお客様でも、過去に「私は日本で生まれたが、親がカナダ生まれのカナダ国籍なので、自分はカナダ国籍保持者でもある。今回、子供が日本で生まれたので、子供のカナダのProof of Citizenshipを申請したい」というお問い合わせを頂き、最終的にお子さんは残念ながらカナダ国籍ではないということが判明した案件もありました。

申請条件

Bill C-3の施行により、カナダ国籍の認定に関する 対象者の範囲が明確化・拡大されました。主なポイントは次のとおりです。

2025年12月15日以前にカナダ国外で生まれ、これまでの第一世代制限がなければ本来カナダ国籍であったはずの方は、今後 カナダ国籍として認定されます。従ってProof of Citizenshipの申請が可能となります。2025年12月15日以降にカナダ国外で生まれ、親がカナダ国籍であり、そのカナダ市民の親自身も 海外生まれである場合でも、以下の条件を満たせば カナダ国籍を認定されることとなります。
a. 子供が生まれた時点で、親がカナダ国籍であること
b. その親が、カナダとの実質的な関係、つまり子供がカナダ国外で生まれる前に、合計3年(1,095 日)以上カナダに滞在していたこと(Substantial Connection)が証明できる。2023年に導入された暫定措置(Interim Measures)に基づいてProof of Citizenshipを申請した場合でも、新しいBill C-3のルールを考慮した審査が行われます。尚、既にこの申請をしている方は、改めて2025年12月15日以降に申請し直す必要はありません。Bill C-3が制定されるまでの経緯

Bill C-3は、突然成立した法律ではなく、約2年間にわたる司法と政府の対応の積み重ねの末にようやく実現した制定です。
発端は2023年12月にオンタリオ州上級裁判所(Ontario Superior Court)の判事が、当時のカナダ市民権法に含まれていた 「第二世代制限(Second-Generation Limit)」 について、憲法違反であるとの判断を下したことです。裁判所は、この規定が「カナダ市民を二つの階級に分け、一方には市民権を子供に継承する権利を十分に与えず、不平等を生じさせている」と指摘しました。
この判決に対し、当時の連邦政府は上訴(争うこと)を選ばず、市民権法そのものを改正する方針を取ることを決定しました。政府には当初、2024年までに法改正を行う期限が与えられていましたが、期限内に改正案を成立させることができず、その後も複数回にわたり裁判所に期限延長を求めることになり、最終的に2025年11月20日にBill C-3は法案が両院ともに通過し、「国王裁可(Royal Assent)」に付されて成立が決定しました。

このように、Bill C-3は裁判所による違憲判断をきっかけに、長期間の法的・政治的調整を経て成立した法律であり、カナダの市民権制度における重要な転換点と位置づけられています。

業界の意見

カナダの移民弁護士や政府公認移民コンサルタントの多くは、Bill C-3について「長年問題視されてきた不公平を是正する、重要で前向きな法改正」であると評価しています。特に、海外で生まれたという理由だけでカナダ国籍を継承できなかった人々、いわゆる「Lost Canadians」の救済につながる点は、憲法上の平等原則に沿った素晴らしい制定であると評価されています。

一方で、新たに導入された「カナダとの実質的な関係(Substantial Connection)を証明する」という申請条件については、再び不公平を生む可能性があるとして、慎重な見方を示す者もいるのが現実です。特に、海外養子縁組のケースなどでは、条件の適用方法が今後の課題になると指摘されています。
総じて、Bill C-3はカナダ市民権制度を現代のグローバルな現実に近づける大きな一歩である一方、実務面での明確なガイドラインと公平な運用が強く求められている、というのが法律専門家の共通した見解です。

Aya K. Immigration Services Inc. Xアカウント @ayak_ca

aya-kawakita川喜多 綾
カナダ政府公認移民コンサルタント Aya K. Immigration Services Inc.代表移民法以外にも様々な法律を学んだ後、有名移民弁護士事務所にて実務を学ぶ。移民コンサルタントとしての国家資格取得後、2009年に起 業。お客様とご相談しながら、ビザや移民取得に向けたプランを提案。個人のみならず、大手日系法人のクライアントも多い。Website: www.ayak.ca
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