先日、Abema Prime で議論された「勝利至上主義」の是非。
スポーツではフェアプレイとズル賢さをどちらが必要か、というテーマに対し、非常に興味深い議論が行われた。
この議論を見て、まさに日本サッカーとメキシコサッカーに当てはまるテーマだと感じた。
私がメキシコサッカーを発信し始めて2年以上になる。
別の記事でも書いたことがあるが、発信を続ける理由の1つは、メキシコサッカーにおける、この「勝利至上主義」への考え方が日本と違うことに、興味をそそられたからであった。
メキシコサッカーは、日本とどのように違うのか。
2026年の最初の記事となる今回は、その違いに触れ、メキシコサッカーを知る必要性について書いてみる。
(ここでは他の中南米のサッカーは省く。あくまでも、私がメキシコサッカーを直接見て感じことだ。)
単なる”荒い”ではない
メキシコサッカーは、荒い。
この事実は、間違っていない。
最近ではマリンボブさんの動画を見ると、そのイメージはよりわかりやすいだろう。
では、なぜ荒いプレーが多いのか。
私がメキシコサッカーを見て感じたのは、単なる荒さではないということ。そこには、「勝利へのこだわり」と「正義感」が関係していた。
「勝利へのこだわり」
メキシコでプレーする選手たちは、プロに限らず、アマチュアや育成年代まで、勝利へのこだわりが非常に強い。
常に、勝つためのプレーを選択する。
どうすれば、1点をもぎ取れるか、どうすれば、ゴールを守れるのかを常に考えている。「華麗なプレー」を見せることは目的ではない。もちろん、華麗なプレーがあれば、スタジアムは盛り上がる。だが、どんなにプレーで魅せたとしても、勝たなければ意味がない。これがメキシコサッカーの常識だ。
昨年行われた日本代表対メキシコ代表の親善試合でも、メキシコの勝利への強いこだわりが現れた。
試合終了間際、上田綺世の抜け出しを、CBセサル・モンテスがファールで止めた。モンテスは、このプレーで一発退場に。
もし、モンテスがファールをしていなかったら、日本が決勝点を挙げていた確率が高いだろう。1点を阻止するために、モンテスが選択したプレこそ、親善試合であっても負けられないという気迫を示す、まさにメキシコらしいシーンだった。
このような場面は、アマチュア、育成年代でも同様に見られる。
どのカテゴリーでも、常に勝利のためのプレーすることが求められているのだ。
「正義感」
メキシコ人の自チームへの帰属意識は、日本人以上のものを感じる。
例えば、とある選手がライバルチームに移籍した場合、日本ではサポーターがその選手を拍手で迎えることは珍しくない。
しかし、メキシコでは違う。拍手で迎えられることはまずなく、ブーイングか、無反応で終わる場合が多い。
自チームから離れた選手は、常に敵として見られているからだ。
この意識はサポーターだけでなく、選手も同様にある。
「チームの一員である」という意識や「自分がチームを勝たせる」という気持ちを前面に出してくる。
味方を守るため、相手に舐められないようにするため。
そうした行動を取り続けるため、ピッチでは常にバトルが繰り広げられる。
単に荒いだけではない。
勝利のための最善の選択、チームを救うための正義感。
これがメキシコサッカーの基礎となっている。
激しいプレーを見せるメキシコU8メキシコサッカーに苦しんだ日本の高校生
昨年春に行われた広島県高校サッカー選抜のメキシコ遠征。
日本人の高校生たちは、メキシコの”荒さ”に苦しんだ。
「これまでに感じたことない対人強度」だった選手が嘆くほどのプレッシングと当たりの強さ。
ファールをしてでも前に行かせないという荒々しさに、フラストレーションが溜まる選手も少なくなかった。
結果的に広島選抜は、3試合で1勝もできずに終えた。
実力差では優勢だった広島の高校生たち。しかも、1試合は相手が退場し、数的優位であったにも関わらず、勝利は遠かった。
ボールを扱う技術は、サッカーの一部分に過ぎない。
試合の状況に応じどうしたら勝つことができるのか、最善の選択を取ることも求められることを痛感した3試合となった。
大会後日、とある対戦相手の関係者が、
「日本の選手は技術は高い。でも、マリーシアを知らない選手が多い。」
と話してくれた。
この点については、現なでしこジャパンのニールセン監督も似たようなことを言及している。
技術や戦術だけでは勝てない。
日本に足りない要素をメキシコサッカーが示している。
メキシコスタイルを ”知る” 重要性
メキシコサッカーの ”荒さ” の真相について触れたところで、話をアベプラの議論に戻す。
「スポーツにおいて、フェアプレーとズル賢さ、どちらが必要か?」
動画内では、鄭大世さんをはじめとする世界で戦ってきた各競技のアスリートの多くが、「ズル賢さが必要」と答えていた。
だが、現代の日本のスポーツ界では、結果よりも内容を重視する傾向がある。
全てをメキシコや欧州のような ”ズル賢さ”を取り入れることは、困難だろう。ましてや、すでに ”ズル賢さ” が染みついている相手に、同じ方法で上回れるとは思えないし、そもそも国民性が違い過ぎる。
海外のやり方を真似するより大事なこと。
それは、相手のやり方を知ることだ。
”荒い” プレーにやり返すと、相手の思う壺。いかに、相手のスタイルに驚かず、冷静に受け流せるか。相手のペースに巻き込まれないようにするための賢さを日本は武器にしていく必要がある。
日本にはないスタイルを知ることで、単なる”荒い”という印象では終わらず、相手の狙いが見えてくる。
それが、世界で勝つ第一歩になるだろう。
世界の中でも、日本と同等のレベルにあるメキシコサッカー。(FIFAランク:メキシコ15位、日本18位)
日本と同じ目線で世界と戦っており、異なるスタイルを知るため¥¥には、絶好の国だ。
彼らが考えていること、どのようにして今のスタイルを築いたのか。
その奥深さは計り知れず、まだまだ掘り下げる価値がある。
そんなメキシコサッカーを今年も追いかけていきたい。
