大阪・関西万博の閉幕後も、パビリオンの展示や食に触れられる「アフター万博」の取り組みが各地で盛り上がっている。天神橋筋商店街(大阪市北区)のベーカリーでは、マルタ館で人気を集めた名物パン「フティーラ」が販売されている。万博を機に製造方法を学び、マルタ館にパンを提供した店主は「マルタとの交流の輪を広げていきたい」と話す。(新谷諒真、山根彩花)

ユネスコ文化遺産のパン大阪・関西万博のマルタ館で人気を集めた「フティーラ」を販売している野上さん(22日、大阪市北区で)=河村道浩撮影大阪・関西万博のマルタ館で人気を集めた「フティーラ」を販売している野上さん(22日、大阪市北区で)=河村道浩撮影

 フティーラは、地中海の島国・マルタに伝わる伝統のパン。高温で焼き上げるのが特徴で、ツナやオリーブを挟んで食べるのが一般的だ。2020年、国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。

 万博ではマルタ館で販売。外はカリカリ、中はモチモチとした食感が評判となり、行列ができた。

 フティーラを提供した店の一つが、JR天満駅近くの天神橋筋商店街にある「ORANGE FIELDS Bread Factory」だった。

 店主の野上剛さん(47)は今年2月、マルタ館のレストラン経営者アントニー・シクルナさんから、知人を介してパン製造の依頼を受けた。「マルタに行ったこともないし、フティーラも知らなかった。街のパン屋さんが伝統の味を再現できるのかなあと」

 不安はあったが、万博に関われることを光栄に思い、引き受けた。レシピを教わり、通常のパンより30度ほど高い約270度で、短時間で焼き上げる練習を繰り返し、開幕に備えた。

万博ファンが見つけSNS拡散

 当初は1日40個の約束だったが、開幕してしばらくすると、マルタ館側から「もっとたくさん焼いてほしい」と催促されるようになった。閉幕する頃には1日約500個を提供した。

マルタに伝わるパン「フティーラ」(22日、大阪市北区で)=河村道浩撮影マルタに伝わるパン「フティーラ」(22日、大阪市北区で)=河村道浩撮影

 野上さんは、店で作っていることを公表しないつもりだったが、店内でフティーラを冷ましている様子を万博ファンが見つけ、SNSで拡散。店で売ってほしいとの要望が相次いだ。

 閉幕後の10月20日、お礼を兼ねてシクルナさん一家が来店。「店でもマルタの文化を広めてほしい」と、フティーラに挟むおかずのレシピを教えてくれた。

 11月15日から販売を開始。おかず入りは税込み880円、パンのみは同330円で店頭に並ぶ。売り切れることも多いという。

 今月24日に来店した滋賀県東近江市の団体職員(48)は、万博で食べた味が忘れられず、SNSで探したという。「マルタに行かないと食べられないと思っていた。閉幕後も万博気分が楽しめて最高です」と喜んだ。

 野上さんは今月、ベーコンエッグを挟んだ新商品を開発した。「マルタの伝統を大事にしつつ、日本人の舌に合わせ、商店街の名物にしたい」と話している。

 年末年始のため、31日、来年1月1日は休み。

イベントも人気

 万博の会期中には予約が取りにくかった人気館の展示品を間近で見ることができるイベントもある。

 大阪科学技術館(大阪市西区)で14日にあったイベントでは、セルビア館で使われたビー玉をお玉ですくって持ち帰ることができるブースが設けられ、子どもたちでにぎわった。ビー玉には、セルビア国旗の色があしらわれている。

 セルビア館の壁には、歯車を組み合わせた装置が取り付けられ、来館者がビー玉を転がして遊ぶ体験が人気だった。閉幕後、寄贈の申し出があり、約20万個が引き渡された。

 大阪市阿倍野区の小学2年生(8)は「もう一度、行きたかったけど予約が取れなかった。ビー玉を見て万博を思い出したい」と話した。

 来年1月18日には、ビー玉を使って「起き上がりこぼし」を作る催しが行われる。小学校での出前授業では、子どもたちにビー玉をプレゼントしている。

 関西電力は、自社などでつくる電気事業連合会のパビリオン「電力館」の展示を紹介する展覧会を関電ビルディング(大阪市北区)で開いている。

 来館者がパビリオン内を巡る際に使用した「タマゴ型デバイス」や、閉幕日に来場者らがメッセージを寄せ書きした外壁など約10点を展示。1月10日には、万博の公式キャラクター・ミャクミャクらと記念撮影ができる催しも予定する。

 見学した大阪府守口市の会社員(49)は「万博が終わっても、展示物を見たりスタンプを集めたりして、関連の施設や場所を巡るのが楽しいです」と笑顔を見せた。

 同府柏原市は12月13、14の両日に開いたイベントで、ヨルダン館の砂やパキスタン館の岩塩など10か国から寄贈を受けた展示物を置いたところ、5000人以上が来場。イタリア館などのスタンプは、1時間待ちとなった。市の担当者は「万博効果は想像以上。今後も様々なイベントを検討していく」と語った。

 ネット上では、「アフター万博」のイベントをまとめたウェブサイトが複数公開されている。

 このうち一つを制作した大阪市天王寺区のウェブデザイナー・東海吉輝さん(47)は元々、会期中のイベントをカレンダー形式で表示するサイトを運営していた。閉幕後、「さみしくてサイトを見返してしまう」といった声が寄せられ、更新を続けている。

 東海さんは「思い出を共有し合う形で、万博ファンの『推し活』は閉幕後も続いている」と語った。

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