クアドリティクス(Quadlytics)取締役 CTO の山川俊貴氏

本稿はベンチャーキャピタル、サイバーエージェント・キャピタルが運営するサイトに掲載された記事からの転載。毎月第2水曜日に開催される Monthly Pitch へのピッチ登壇をご希望の起業家の方、オーディエンス参加をご希望の起業家の方の応募はこちらから

ウェアラブルと AI を活用し、てんかん発作を事前に予知するシステムを開発するクアドリティクス(Quadlytics)が、グローバル展開を加速させています。

熊本大学・京都大学・名古屋大学の三大学発スタートアップとして15年にわたる研究開発を経て、オーストラリアに子会社を設立しました。世界的なてんかん研究のメッカで治験準備を進め、来年のシリーズ A 調達を目指します。熊本で開催された Monthly Pitch KUMAMOTO で、取締役 CTO の山川俊貴氏が事業の現状と展望を語りました。

10秒あれば防げる怪我がある

てんかんは突然意識を失って倒れてしまう発作が特徴の疾患で、人口の1%、世界で5,000万人以上が罹患しているそうです。7割の患者は薬で発作を抑えられますが、残り3割は一生、発作の危険に怯えながら暮らさなければなりません。

階段を下りているときに発作が起きれば転落事故、料理中なら火傷、入浴中なら溺水と、日常のあらゆる場面が死の危険と隣り合わせです。クレーン車が小学生の列に突っ込んだ事故や、京都の花見客を軽ワゴンが次々にはねた事故など、周囲を巻き込む重大事故も発生しています。

「やはりこのてんかんという病気が一番怖いのは、発作がいつ・どこで起こるか分からないということです。患者さんはもちろん知りません。お医者さんも知りません。それによって仕事に就けない、車の運転ができない、危ないことができないと、QOL がものすごく下がっています」(山川氏)。

患者の約半数が年に1回は入院していますが、てんかんそのものではなく、発作による怪我が原因です。10秒前に分かれば、この怪我は防げるはずだと山川氏は語ります。

ウェアラブルと AI で発作を「予知」
リアルタイムに解析を行うスマホアプリ(同社ウェブサイトより)

クアドリティクスが開発するのは、ウェアラブルデバイスと AI を組み合わせた発作予知システムです。発作が起こる1分前から15分前までにアラートを発することに成功しており、怪我の予防や QOL の向上、就労支援への貢献を目指しています。

米国やオーストラリアの競合サービスでは発作の「モニタリング」機器が多数上市されていますが、事後に発作があったと分かっても患者自身の怪我は防げません。「前日に明日60%ぐらいで起こるかもね」(山川氏)と予報する機器もありますが、それで1日中家にいるわけにもいかず、QOL 向上には直結しません。

「唯一僕らと似たようなことをやっている人たちは『頭の中にチップを埋め込んだら予測してあげます』というもの。予測できるだけのためにオペしますかという話で、残念ながらあまり普及していないです」(山川氏)。

オーストラリアから世界市場へ

てんかん発作予知への需要は極めて高いです。オーストラリア、日本、欧州、米国での調査によると、患者の90%以上が「発作予知が欲しい」と回答しているそうです。米国の研究では月200ドル(約3万円)を自費で払う意向があり、オーストラリアでは保険により患者1人あたり年間約50万円までの保険償還が認められる可能性があります。

こうした背景もあり、同社は日本での研究開発をほぼ完了し、現在はオーストラリアに子会社「Quadlytics Pty Ltd」を設立しました。世界的なてんかん研究の拠点で検証を進め、その結果をもって米国市場への参入を狙う戦略です。

「お金を払う意思と強いペインがすでに揃っているので、そこで医療機器として上市さえできれば、という状況です」(山川氏)。

同社は京都大学・名古屋大学・熊本大学の技術シーズを結集して生まれました。山川氏は熊本大学で准教授を務めていましたが、退職してフルコミットで事業に取り組んでいるというお話でした。