アメリカが主導するロシア・ウクライナ停戦案では、ウクライナに対し国土の20%を放棄し、憲法に北大西洋条約機構(NATO)への「非加盟」を明記するよう求めている。アメリカのドナルド・トランプ大統領は、ウクライナのゼレンスキー大統領に対し、遅くとも11月27日の感謝祭までに提案を受け入れるべきだと迫った。ウクライナが見限られつつあるように見える中、トランプ氏が台湾をどう扱うのかに注目が集まっている。
新党副主席の李勝峰氏は『風傳媒』の取材に対し、「トランプ氏は中国との和解に向かっており、台湾問題をわざわざ刺激する理由がない」と指摘した。その上で、今後の米中関係は「互いに必要なものを交換する」構図になるとの見立てを示し、「アメリカは台湾の半導体サプライチェーンを取り込み、中国は台湾島そのものを得ようとするだろう」と分析した。

海外メディアによると、アメリカが推し進める停戦案は28項目からなり、ルハンスク、ドネツク、クリミアなど、ロシアが実効支配する広範な地域の「放棄」をウクライナ側に要求している。これらの領土はウクライナ全土の約20%に相当する。また同案は、ウクライナ憲法にNATO「非加盟」を盛り込むことや、戦争に関してロシアへ賠償請求をしないことまで求めている。

2025年11月3日、ウクライナのキーウで記者会見を行うウクライナ大統領ゼレンスキー氏。(AP通信)

アメリカのトランプ大統領は、ウクライナのゼレンスキー大統領に対し、感謝祭(11月27日)までに停戦案を受け入れるよう要求している。同案には、ウクライナが国土の約20%を放棄し、憲法にNATO非加盟を明記する内容が含まれる。(写真/AP通信)

トランプ氏はゼレンスキー氏に対し「感謝祭までに受け入れるべきだ」と強硬に主張。ゼレンスキー氏が難色を示す可能性は認めつつ、「気に入らないならウクライナは戦い続けるしかない」と語ったとされる。

さらにトランプ氏は、最近実施された中国の習近平国家主席との会談で「台湾」の話題に一切触れなかった。ウクライナに対し大規模な領土放棄とNATO非加盟を迫り、戦争終結を図る姿勢を示したことで、「では台湾問題はどう扱うのか?」という疑念が国際社会で広がっている。

アメリカは台湾海峡に介入できない 北京の確信

李勝峰氏は、中国政府が一貫して「アメリカには台湾海峡に介入する能力がない」と認識していると述べる。最近の一連の出来事を踏まえると、「アメリカは台湾海峡を動かす力を欠き、中国はその介入を拒む力を持つ」という構図が明確になってきたという。アメリカ自身も介入能力の限界を認識し、今では中国の前で台湾海峡問題をほとんど語らなくなっていると李氏は指摘した。

李氏によれば、10月30日に韓国・釜山で行われた習近平氏とトランプ大統領の会談は、アメリカの台湾政策を見極めるための重要な場だった。この会談でアメリカ側は台湾について一切言及しなかったが、その理由は明白だという。
従来、中国はアメリカの介入を警戒し、アメリカに「台湾海峡の現状は変えるべきではない」との声明を繰り返し求めてきた。しかし、アメリカが出すのは常に「一方的な現状変更に反対する」という抽象的な宣言にとどまっていた。アメリカが何も言わない場合、中国が先に声明を発表することもあった。

新党副主席の李勝峰氏は、トランプ大統領が中国と和解を望んでおり、両者は必要なものを取り合うだけだと見ている。(楊騰凱 撮影)

新党副主席の李勝峰氏は、トランプ大統領が中国との和解を望んでおり、米中は互いに「必要なものだけを取り合う関係」になりつつあると指摘する。(写真/楊騰凱撮影)

トランプ氏は対中和解を志向 台湾問題をあえて触れず

李勝峰氏は、今回の習近平氏とトランプ氏の会談で台湾問題が取り上げられなかった理由について、「今の中国には、アメリカに表明を求める必要がなくなった」と説明する。アメリカ側もまた「求められていない」と認識しているため、台湾問題を議題に載せる必要がなかったという。

アメリカは現在、中国との「包括的な和解」を模索しており、トランプ氏が台湾に触れないのは、単に「触れる必要がないからだ」と李氏は見ている。

李氏は「アメリカが和解を選び、台湾問題に踏み込まない姿勢を取っている以上、中国は自分のペースで台湾問題を進められる」と述べ、今回の首脳会談は「台湾は中国のリズムで処理する」という暗黙の了解のもとで行われた、と分析した。

米中貿易戦は「上甘嶺戦役」の再現

李勝峰氏は、現在の米中関係について「和解の下で競争と協力が続く『斗而不破』(闘うが決裂しない)状態に入った」と指摘する。長い応酬を経て、アメリカは「中国を抑え込むことは不可能」と理解し、中国も「勝利には莫大なコストが必要」だと認識したからだ。

アメリカは半導体産業を、中国は台湾そのものを狙う

李氏によれば、今回の貿易戦争を通じて中国本土は実力と自信をもってアメリカの圧力に耐え抜き、アメリカ側も最終的には「中国を押さえ込むことはできない」と認めざるを得なくなった。その結果、真の意味での「斗而不破」(対立しつつも決裂はしない)という米中関係が、習近平氏とトランプ氏の会談以降、本格的に始まったのだという。ここで問題となるのが台湾の位置づけだ。

李氏は「率直に言えば、アメリカはもはや台湾の『地理的価値』を求めていない」と指摘する。台湾という地域を維持することはアメリカにとって負担であり、むしろアメリカが本当に必要としているのは、台湾が持つ半導体を中核とした産業サプライチェーンだ。それこそが、アメリカの将来の先端技術と経済発展を左右する核心プロジェクトだという。一方で中国が求めているのは「地理的な台湾そのもの」であり、自国の科学技術力を高め、台湾の半導体産業チェーンに追いつくことが重要課題となっている。米国との産業チェーン争いがなくとも、中国がこのギャップを埋めるのは「時間の問題」だという見方もある。アメリカがTSMC(台湾積体電路製造)を米国へ誘致しようとする過程で、中国側がほとんどコメントを控えていたこと自体、米中双方が「それぞれ必要なものを取る」という、「各取所需」の構図が成り立ちつつあることの表れだと李氏は分析している。

2025年7月17日、TSMCの業績発表会。(柯承惠撮影)

米中が大きな和解に達した場合、アメリカは台湾の半導体産業チェーンを、中国は台湾島そのものを手にすることになると李勝峰氏は見ている。(写真/柯承惠撮影)

台湾も「一国二制度」を維持か

李氏はまた、中国本土が香港における「一国二制度」を何とか維持しようと、さまざまな工夫を続けている点を挙げる。香港では資本主義的な政治・経済体制が基本的に残されており、中国共産党の社会主義体制は全面的には持ち込まれていない。書記を頂点とする党組織も、香港には設置されていない。これは、中国側が「世界には社会主義体制だけでなく、資本主義の政治・経済システムも存在し、その代表がアメリカである」という現実を踏まえ、香港を西側との「体制間の橋」として維持しようとしているからだという。「人類社会に二つの制度が並立している限り、香港は崩れない」と李氏は述べる。

同じ発想から、台湾も中国本土にとって重要な「橋」とみなされていると李氏は見る。今後も台湾には「一国二制度」に近い形を保たせ、西側の資本主義体制や産業ネットワークと中国本土を結ぶハブとして機能させるつもりだというのだ。最終的な決着の時点では、台湾の指導者はもはや「総統」とは呼ばれなくなるかもしれないが、「肩書以外はほとんど変わらないだろう」と李氏は結んでいる。​