
テレビ番組では、堅苦しいニュースに流行歌で味付けをする。列島改造論で地価はおろか、株価もうなぎ上りだった1972年、うってつけの曲がヒットする。へそ出し姿で山本リンダさんが歌った「どうにもとまらない」である▲デートの誘いに揺れる乙女心を歌うデビュー曲「こまっちゃうナ」からの大変身だった。これが「とまらない」株高に連動の一曲となる。作詞者の亡き阿久悠さんも「経済動向にピタリとはまった」と振り返っていた▲BGMは聞こえてこないものの、上昇基調の日経平均株価が5万円を先日突破した。半世紀前の上げ潮は高度経済成長のさなかだった。今回は企業の成長に見合うものなのかどうか。物価高に日々悩まされる身には実感が伴わない▲「どうにもとまらない」のは、むしろ続発する特殊詐欺への心配だろう。広島県内の被害額は、ことし既に17億円台に乗り、残念ながら過去最多となった。無意味は重々承知の上で「こまっちゃうナ」と嘆きたくなる▲冒頭の話には、落ちがある。翌年、リンダさんの曲「狙いうち」や「燃えつきそう」が出ると株価は下落した。株に振り回されることなく、ぜひ特殊詐欺こそ「狙いうち」に。
