2025年11月1日 午前7時30分

 【論説】江戸時代に発展した日本独自の数学「和算」の研究者らが集う「第21回全国和算研究大会福井県丹南地区大会」がこのほど、越前市などで開かれた。講演や市民講座のほか、県内高校生の発表などもあり、和算への理解を深めた。大会の成果を踏まえ、先人が培ってきた和算や算額を「郷土数学」として守り、その魅力を伝えてゆきたい。

 福井県と和算のつながりは深い。県内には数学の問題や解法を記した絵馬「算額」が、丹南地区を中心に23面現存(全国13位)している。このうち県、市町指定文化財は8面あり、全体の約35%で全国平均を大きく上回る。中でも越前市の大塩八幡宮に1701年奉納された算額(県指定文化財)は現存では全国で5番目に古く、絵付き算額としては最古。鯖江市には神社の情景が描かれた算額が4面あり、民俗的資料としての価値が高いという。越前町の福通寺の算額は、全国を旅し数学を教えた山口和の「道中日記」に記された算額のうち、現存する唯一のものとみられ貴重だ。

 和算は鶴亀算から代数・幾何の高度な問題まで扱った。福井県では丹南地区に多くの算額が残っているが、その理由の一つとして考えられているのが鯖江藩の関与。藩士から和算家を何人も輩出し、和算の最大流派である関流の開祖・関孝和の肖像画も鯖江藩士の子孫の家に伝わっている。

 和算には人々の知的好奇心を満たすとともに、農林漁業や商業など日常生活を支える実用的な側面もあった。庶民も学んだ地域における和算活動については今日、「郷土数学」として調査、研究が行われている。

 その調査には研究者だけでなく高校生も関わり、成果を上げてきた。丹南地区では50年ほど前に旧武生商業高の生徒が数学クラブの活動として多くの算額を発見した。今回の研究大会でも、大野高の3年生3人が大野市の日吉神社の算額の解き明かしに挑戦した活動を発表し注目された。

 和算は明治時代以降、学校教育で西洋数学が教えられるようになると表舞台から消えた。だが、和算は今日でも小中学校の一部教科書で取り上げられ、全国各地に愛好者や研究者の団体がある。和算を研究する福井大の風間寛司准教授は「西洋の数学に引けをとらないレベルに発達を遂げた和算を学ぶことは文化史的意義がある」と指摘する。

 研究大会では福井大教育学部の学生が、出前講座を通じて子どもたちに郷土数学の面白さを伝えたり、算額や奉納寺社に関するリーフレットを作製し、文化財の保存・活用に寄与する取り組みを発表した。郷土の歴史や文化を大切にする人材を育む上でも和算を生かしたい。

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