コックス傘下で自動車価格情報サイトを運営するケリー・ブルー・ブック(Kelley Blue Book)の推計によれば、米国の第3四半期(7〜9月)におけるEV販売台数は前年同期比29.6%増の43万7487台と過去最高を更新し、EV普及の加速が際立った。

自動車価格情報サイトを運営するケリー・ブルー・ブック(Kelley Blue Book)による米国EV販売台数(緑棒・左軸)及び市場シェア(紺線)の四半期推移。自動車価格情報サイトを運営するケリー・ブルー・ブック(Kelley Blue Book)による米国EV販売台数(緑棒・左軸)及び市場シェア(紺線)の四半期推移。Cox Automotive

しかし、そうした華々しい市場の成長ぶりの裏には厳しい現実がある。

大半のEVメーカーは生産規模を拡張するに至っておらず、野心的に電動化の道を突き進みながらも赤字を垂れ流す状況が現在も続いているのだ。

テスラはその唯一の例外で、第3四半期の市場シェアは41%(年初来の3四半期計では43.2%)と前年同期から8%ポイント減らしたものの、首位を堅持した。

同四半期の販売台数は17万9525台。主力製品の『モデルY』『モデル3』だけで16万8000台超を売り上げ、他社を圧倒した。

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対照的に、同四半期に米国で販売されたEV約90車種のうち、1万台以上の売上を記録したのはわずか9車種にすぎなかった。

アウディ(Audi)Q6 e-tronシボレー(Chevrolet)Equinoxフォード(Ford)F-150 Lightning/Mustang Mach-Eホンダ(Honda)Prologue現代自動車(Hyundai)Ioniq5テスラ(Tesla)Model 3/Model Yフォルクスワーゲン(VW)ID.4

実は6000台を超えるのも簡単ではない。1万台超の車種を除くと以下の4車種にとどまる。

キャデラック(Cadillac)Lyriqシボレー(Chevrolet)Blazer 起亜自動車(Kia)EV9リビアン(Rivian)R1S

製造、サプライチェーン、車載ソフトウェアを一体として規模の経済を追求するにはおそらく数量が足りない。

9月末のEV購入補助終了を控えた駆け込み需要があったにもかかわらず、メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz、前年同期比3.0%増)、BMW(同16.4%減)、トヨタ(同26.6%減)、日産(同60.9%減)といった主要ブランドの販売台数は横ばいもしくは大幅減だった。

VW(同230.7%増)、GMC(同83.7%増)、ホンダ(同60.0%増)、現代自動車(同97.8%増)のように販売台数を大きく伸ばしたブランドもあるが、将来に希望を持てる数字とは言えても、米国におけるEV事業を黒字化できるほどの販売台数ではない。

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実際、例えばフォードのEV部門は2025年上半期に販売台数を伸ばしたにもかかわらず約22億ドルの損失(利払い前・税引き前)を計上。「第二のテスラ」有力候補の筆頭に挙がるリビアンも同期間に17億ドルの純損失を出した。

一方、販売台数、生産規模ともに十分なテスラは、同期間に15億ドル超の純利益を計上している。

そうした状況を受け、レガシー自動車メーカーの多くはEV投入計画の見直しに動いている。生産規模を拡大できなければ赤字を垂れ流し続けるリスクがあるのだから当然のことだ。出血はどこかで止めなくてはならない。

メルセデスは7月末、米国でのEV受注及び納車を一時的に凍結したことを明らかにした。ロイター報道(7月30日付)によれば、需要の鈍化によるディーラーの在庫過剰を調整するためという。

ステランティス(Stellantis)は長く期待されたフルサイズ電動ピックアップ『Ram 1500 REV』の開発を中止。

VWグループのポルシェ(Porsche)も9月下旬にEV計画の見直しを発表。間もなく電動化モデルを発売する人気車種『カイエン』について、改良した内燃機関モデルを2030年代後半まで販売するほか、一部車種の開発中止を判断するなど、2030年までに新車販売台数の80%以上をEVとする目標の達成を事実上断念した。

25〜30%という圧倒的な営業利益率の高さで知られる高級車ブランドのフェラーリ(Ferrari)でさえ、2030年までにEV比率を40%とする計画を半分の20%に引き下げた。同社は逆に内燃機関の割合を40%と倍増させて利益確保に動く。

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連邦政府のEV購入補助が廃止されたことを受け、コックス・オートモーティブのアナリストチームは第4四半期(10〜12月)から2026年上半期に販売台数の減速を予測する。

政府支援なしでEV市場が成立し得るか、米市場は試練の時を迎える。EV事業の損失を飲み込みつつスケールを実現できる体力のある自動車メーカーはどこなのか、今後明確になっていくだろう。

現時点で言えるのは、年初来欧州を中心とした販売不振の伝えられるテスラだが、数量が物を言う自動車業界の(EVという)新たな領域で、自力で生き残る能力を証明できているのは同社だけということ。肉薄する存在すらほぼ見当たらない、それが現実なのだ。

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