アメリカ陸軍は2025年9月下旬、演習で使用するためにミサイルシステムのタイフォンを日本に配備する。US Marine Corps photo by Sgt. Brian A. Stippeyアメリカ陸軍の中距離能力ミサイルシステム「タイフォン」が2025年9月、日本のアメリカ海兵隊岩国航空基地(岩国飛行場)に配備される。タイフォンはこれまでにフィリピンやオーストラリアでの演習で使用されてきた。このミサイルシステムの配備はこれまで何度も中国の反発を招いており、中国とロシアは日本への配備を非難している。
アメリカ陸軍は、2025年9月の日米合同訓練期間中に、自軍の強力な新型地上発射ミサイルシステムを日本に配備する。
この中距離ミサイルシステム「タイフォン(Typhon)」は、陸上や海上の目標に向けてさまざまな種類のミサイルを発射できる。トラックに搭載されたタイフォンの発射機は、垂直発射管にミサイルを搭載しており、太平洋上の艦隊や中国本土の施設を狙える射程を持つことから、繰り返し中国の強い反発を招いている。

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Business Insiderが入手した陸軍の声明によると、2025年9月に行われるアメリカ海兵隊と日本の陸上自衛隊による年次訓練「リゾルート・ドラゴン(Exercise Resolute Dragon)」で、アメリカ陸軍の第3マルチドメイン・タスクフォース(3rd Multi-Domain Task Force)が「広島県の岩国海兵隊航空基地(Marine Corps Air Station Iwakuni)にタイフォン(Typhon)ミサイルシステムを配備する」としている。
アメリカ陸軍はさらに、「タイフォンの配備は、日本のシステムや能力との訓練および相互運用性を、実戦に近い環境で高めることに重点を置いている」と説明した。タイフォンは同陸軍の戦術ミサイル(Army Tactical Missile System:ATACMS)の何倍もの射程を持つ巡航ミサイルを発射可能であり、その能力はアメリカ海軍の艦船と同等だ。また太平洋上の隔絶された基地に配備することもできる。
タイフォンが今後のリゾルート・ドラゴン演習に関与することが発表されると、中国からは新たな反発が巻き起こった。2025年8月29日、中国外務省の報道官である郭嘉昆は、「中国は一貫して、アメリカがアジア諸国に中距離ミサイルシステムのタイフォンを展開することに断固として反対している」と述べた。
タイフォンは砲台運用センター、4つの発射装置、牽引車、改造されたトレーラーで構成されている。US Army photo by Sgt. Perla Alfaro
ロシアもこの配備を非難した。ロシア外務省のマリア・ザハロワ(Maria Zakharova)報道官は、2025年8月29日、タイフォンの日本への配備について、「アメリカ政府は地上発射型の短距離・中距離ミサイルの能力を強化する方針を進めており、これは地域の安定をさらに損なう行動だ」と述べた。
さらにザハロワ報道官は、タイフォンが日本に配備されることについて、「ロシアに近い地域であり、ロシアにとって直接的な戦略的脅威となる」と述べた。
「タイフォンをインド太平洋地域で同盟国やパートナー国とともに配備するのは、日米などの部隊が互いに連携して訓練できるようにし、前線に展開した長距離精密ミサイルの能力を高め、地域の安全と自由な航行を守るためだ」とアメリカは説明している。
また、タイフォンの日本への配備の発表は、中国が2025年9月3日に行った大規模な軍事パレードの直前に行われた。
タイフォンは、スタンダード・ミサイル6(SM-6)や陸上攻撃ミサイル(Tomahawk Land Attack Missile)のトマホーク(Tomahawk)を搭載可能だ。SM-6の射程は最大で約370キロであり、改良型では約460キロまで届くと見積もられている。
トマホークは長射程の亜音速巡航ミサイルだ。射程は型によって約1610キロから約2500キロと見積もられており、アメリカの艦船や攻撃型潜水艦が通常搭載している。これらのシステムにより、陸軍は中国が太平洋上に構築した多くの海上・陸上目標への攻撃において、より遠くから広い範囲に攻撃できるようになる。
アメリカ陸軍は、タイフォンが開発されて以来、どのように運用すれば最大限の効果を発揮できるかを検討してきた。アメリカとソビエト連邦(当時)は1987年に中距離核戦力(INF)全廃条約を締結したが、アメリカは2019年2月、ソ連の後継であるロシア連邦が同条約を違反していることから同条約を破棄し、その後、失効したため、タイフォンを開発した。この条約は射程500キロから5000キロの地上発射型弾道ミサイルおよび巡航ミサイルを禁止する内容が盛り込まれていた。
アメリカと日本の当局者は、以前から中距離能力(MRC)システムを日本に配備することについて協議してきた。Darrell Ames/Executive Office Missiles and Space
この一連の動きは第一次ドナルド・トランプ(Donald Trump)政権時に行われ、ロシアのSSC-8/9M729ミサイルによる条約違反が原因だった。SSC-8/9M729は地上発射型中距離巡航ミサイルで、アメリカやヨーロッパにとって安全保障上の脅威とされていた。この条約の破棄、失効により、それまで禁止されていた兵器の開発が可能となったのだ。
