睡眠不足と健康の影響 

日本人の多くが抱える慢性的な睡眠不足。それが心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる病気だけでなく、糖尿病や肥満などの生活習慣病、さらにはうつ病のリスクまで高めていることをご存じでしょうか?

今回は、東京大学大学院 理学系研究科睡眠生理学研究室の林悠教授の監修書『ぐっすり眠り、スッキリ目覚める! 明日が変わる 睡眠の科学大全』(ナツメ社)を一部抜粋してご紹介いたします。

7時間睡眠がなぜ最も病気になりにくいのか、そして睡眠不足が引き起こす恐ろしい健康リスクについて、最新の研究データに基づき解説します。


心臓病や脳卒中、認知症になりやすい


7時間寝ている人が、いちばん病気になりにくい

睡眠不足はさまざまな病気のリスクを高めます。突然の胸痛とともに全身に酸素がいかなくなる「心筋梗塞」の発症率も上昇。脳梗塞をはじめとする脳卒中にもなりやすく、同じく命にかかわる病気です。

世界の疫学調査、日本の疫学調査を見ても、睡眠不足と死亡率にはあきらかな関連があります。睡眠時間7時間前後の人で死亡率がもっとも低く、短い人や長い人では上昇する「Uカーブ」を描くのです。睡眠時間5時間の人は、なんと28%も死亡率が高まります。

なお、短時間睡眠の問題はあきらかですが、長時間睡眠が問題かどうかは、現時点ではわかっていません。病気で具合の悪い人が長時間寝ているため、結果として死亡率が上がっている可能性もあります。

短すぎる睡眠も、長すぎる睡眠も危険信号

上は2282名の中高年男性を対象とした大規模疫学調査「JPHC研究」の結果。

2282名の中高年男性を14年間追跡調査。心血管病も脳卒中も、短時間睡眠で発症率が高かった。

約11万人の大規模疫学調査では、男性で図のようなカーブを認め、女性では影響がゆるやかだった。


生活習慣病のほか、心の病気にもなりやすい

心筋梗塞や脳卒中の背景にある生活習慣病にも、短時間睡眠が大きく関係しています。アメリカで5万人以上を対象におこなわれた疫学調査では、3人に1人が6時間未満の睡眠しかとれておらず、通常睡眠の人より糖尿病や肥満の割合が高いことがわかりました(Liu Y et al., 2013)。

睡眠の質も重要です。「寝つきに時間がかかりすぎる」「途中で目が覚める」「熟睡できない」などの不眠症状がある人は、そうでない人に比べ、高血圧のリスクが2倍近くに(Suka M, Yoshida K & Sugimori H, 2003)。精神面でのダメージも大きく、不眠症状が1年以上持続していた人は、うつ病発症リスクが40倍にも及んだという報告もあります(Ford DE & Kamerow DB, 1989)。


次のページ

認知症を防ぐには、脳ドリルより7時間睡眠!!