ペルシャ湾からインド洋に抜けるホルムズ海峡は、世界の石油消費量の2割が通過する。イランがホルムズ海峡を封鎖すれば、国際原油市場に及ぼす影響は計り知れない。

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 イスラエルが6月13日にイラン攻撃を開始したことを受け、ロンドン市場の北海ブレント原油先物価格は同19日、一時1バレル=79ドル台に高騰した。ただ、米国による同22日のイラン空爆を挟んで市場は落ち着きを取り戻し、7月初旬にかけて66~69ドル台で推移した。価格上昇が限定的だった理由は三つ考えられる。

 一つ目は、イスラエルがイランの石油輸出港を攻撃しなかったことだ。イスラエルはイラン南部沖合のサウスパース・ガス田に接続する天然ガス関連施設や、首都テヘランのシャフラン石油貯蔵庫を空爆した。しかし、南部カーグ(ペルシャ語の発音はハールグ)島にある同国最大規模の石油輸出港は攻撃しなかった。石油収入源の要である輸出港の攻撃を「レッドライン」と意識したからだろう。

 仮に同港を攻撃していれば、国際原油市場に深刻な混乱をもたらすのは確実だ。復旧に数年を要するほどの被災があった場合、イスラエルが狙うイランの体制転換が実現しても、新政権は石油収入を欠いたまま安定を保てなくなる。さらに、イランがイスラエル沖合のガス施設を報復攻撃した可能性もある。イスラエルはこれらの点から、石油輸出港への攻撃に慎重にならざるを得ない。

ホルムズ海峡の封鎖は

 二つ目の理由は、イランがホルムズ海峡を封鎖しなかったことだ。ホルムズ海峡は油田・ガス田が集中するペルシャ湾からインド洋へ抜ける航路に位置し、通過する石油は昨年、重量ベースで世界の石油消費量の約2割に相当する。代替できる航路はなく、封鎖されれば原油価格が急騰する可能性は高い。

 イラン国営メディア「プレスTV」は6月22日、イラン国会が「米国の侵攻と国際社会の沈黙に対抗する」と…



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週刊エコノミスト

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