参議院選挙の投開票は7月20日、今回の選挙の大きな争点になっている物価高への対策ですが日本の基幹産業の一つ、一次産業の現場にもその影響は色濃く出ています。高知と徳島の現場を取材しました。
高知県の中西部に位置する四万十町・窪川地区。竹内正文さん(80)は、約2ヘクタールの田んぼでコメを作っています。この日の最高気温は34.8℃。厳しい暑さのなか、雑草の刈り取りに汗を流します。
■コメ生産者 竹内正文さん
「暑いけどやっぱり、百姓はこんなもんです」
Q.コメの生育具合は?
「今のところ良しとしています。良いと思います。問題は、これから後の台風とか、取り込みの時期の気候。台風が来て、風が吹いたら、かやって(倒れて)しまうので。雨もほしいけど、ありすぎても困るし、そこがね絶対上手くいかないところ」
四万十町窪川地区は高知県内有数のコメどころで、地区で生産されるコメは「仁井田米」ブランドで親しまれ、日本一の評価を得たこともあります。
しかし農業分野でも人口減少による担い手不足や少子高齢化は避けられず、課題となっています。高知県内の農家のうち65歳以上が占める割合は、2000年が32.1%でしたが2020年には48.8%に上昇しています。
そんな中、竹内さんが期待を寄せるのが、孫の彩竜さん(24)です。高知市出身の彩竜さんは、去年からコメ作りを手伝うようになりました。
■彩竜さん
「田舎とかも結構好きだったんで、他に作る人もいないっていうので、やってみようかなって思い、自分が手伝う事にしました」
■竹内さん
「こうして、後をやろうかという気持ちでやってもらうことは嬉しいこと。時間はかかりますけど、ゆっくり教えていかんといかんと思いゆうがです」
コメの生産者にとって担い手の確保と共に頭を悩ますのが物価高です。竹内さんのコンバインは、6年前に購入したときと比べて現在、50万円以上値上がりしたといいます。
■竹内さん
「もうすでに今年の秋の収入は、ほとんどここへ入ってます、メンテナンスに。もう新しいのをよう買い替えていかんけん、やっぱり大事に、大事にして使うしかないんでねえ。自分らが食べるぐらいのものが残っていくという程度で、現金で入ったものは支払いをしていかないかん」
近年、コメの生産者は物価高によるコストの上昇と手ごろな価格を求める消費者との間で翻弄されてきました。
国は長年続けてきたコメの減産を止めて増産の方針に切り替えましたが、竹内さんは厳しい現実を前に、増産する気にはなれないと憤ります。
■竹内さん
「私らコメ作りにしてみれば、一生懸命汗水たらして、こうして作った良いコメがそこそこな値段でしか売れない。これじゃ、とても採算がたたん。肥料代もない。機械代も払えん。もう、辞めようか。結局、答えはそれじゃないですか。そうなってくると、狭い日本の国で、この農業をする人がどんどん減っていって、政府も輸入ばっかりに頼って、輸入でなんとかなる。これは、日本はかつえますよ」
コメの政策が争点の一つである今回の参議院選挙。竹内さんたちが託す思いとは―。
■彩竜さん
「日本で生産していけてる、良いモノとかやっぱりあるんで、経済的に落ち込んでいるって、よく見たりとか言われているので、そこを立て直していけるような政策とか、できる人がいいですね」
■竹内さん
「日本のモノは、やっぱり日本で作って我々が手をかけて作って、それを食べて日本を守っていく。(政治家が)先導に立ってもらったら助かるなあという気持ち」
徳島県美馬市。標高600メートルほどのこの場所で祖父の代から酪農を営む古川善久(44)さんです。父親から経営を引き継いで20年。現在50頭余りの乳牛を育てています。
■酪農家 古川善久さん
「電気代は上がってるし、エサ代は上がってるし、ありとあらゆるもの(の値段が)あがってますね」
コロナ禍やウクライナ侵攻、それに長引く円安など、複合的な要因による物価高騰の波は酪農の現場にも大きな影響を及ぼしています。なかでも影響が大きいのは、エサにかかる費用です。
■古川さん
「コロナ前でだいたい (月)200万くらいで収まっていたのが100万、150万くらいエサ代は上がっている」
古川さんは、牛のエサとなる牧草などを自分の畑で育てていますが、肥料や種の値上がりがじわじわと経営を圧迫。さらに猛暑で牧草の収穫量が減少すれば高い輸入飼料に頼らざるを得ず、エサ代の更なる値上がりを懸念しています。
Q.扇風機はフル稼働?
■古川さん「はい そうですね」
Q.24時間?
■古川さん「はい、今年梅雨が短かったんで、だいぶ電気代いると思います」
観測史上最速となる異例の梅雨明けが追い打ちに。牛は暑さに弱いため夏の間は20台の大型扇風機をフル稼働。電気代は月50万円に迫ります。
コスト高騰分を賄うには、牛乳の販売量を増やし、利益を上げなければいけませんが、少子化で学校給食における需要が減少、消費量は年々落ち込んでいます。
こうした中、6月古川さんたち酪農家らでつくる団体が徳島県庁を訪れ、県産牛乳や乳製品の消費拡大への協力を訴えました。徳島県によると県内では5年間で約30軒の酪農家が廃業。後継者不足に加え終わりの見えない物価高、現場の不安も高まるばかりです。
■古川さん
「後継者の中でも話するんですけど希望が無いよねって話はよく出ますね。この先どうなるんだろうっていうのが一番大きい」
そんな古川さんが今、政治に求めるものとは。
■古川さん
「農業全般にもっと力を入れて欲しいなと。今コメが高いとかいってニュースになってるじゃないですか。希望の持てる農業の未来を作って欲しい。酪農なんか365日仕事しないとダメなんで人手不足だと代わってくれる人材がいないんで人材を確保できるような政策とか、消費量も拡大をできるような(政策)。また技術も発展してきたんで輸出とかもできるような未来にして欲しいなと」
酪農の衰退は、食の安全保障の根幹が揺らぐことを意味します。
その場しのぎの政策ではなく中長期的に酪農経営を安定させる新たな仕組みづくりが求められています。
