人が減りゆく社会の中で高知の未来のあり方を考える人口減少シリーズです。今回のテーマは「林業の担い手」です。全国一の森林率を背景に栄えてきた高知の林業も担い手不足が課題です。若い人材の確保に向けた県内の林業会社の取り組みを取材しました。

北川村の山林でスギを切る男性。この春、高校を卒業し、林業の世界に飛び込みました。

■渡邉瑠久さん
「面白いですね、すごく。毎日が。みんなが当たり前だと思っている、きれいな水・きれいな空気というのは、山の管理がしっかりしていないと、それもないということで、自分がその山の管理に従事できているということが、すごい魅力的」

森林率84パーセントという日本一の環境を活かし、基幹産業として高知の経済を支えてきた林業。しかし、少子高齢化が進み、林業に就く人はこの50年で8割減りました。また全世代のうち、30歳代以下の若い人の割合は2割を切る状況です。

■別役林業 木下一希人事部長
「入社されても続かないっていうのも確かにありました。(人材育成の)中身を変えなくてはっていうので、何か良い手立てはないかなと思って模索―」

若い人たちに林業を続けてほしい。人材の定着に向けて県内の事業者が導き出した一手とは。

北川村にある標高1000メートルの笹谷山。国有林が広がるこの一帯は、安芸市の別役林業が間伐事業を請け負っています。
18歳の渡邉瑠久さんは、この春に高校を卒業し、5月に別役林業へ入社しました。伐採したスギを出荷するためチェーンソーを使い、枝や葉を切り落としていきます。

■渡邉瑠久さん
「思っていた以上にチェーンソーって難しいなと思っていて、ちょっとずつ使い方が分かってきたかなあっていう感じ」

■先輩の小松竜さん
「(瑠久さんは)飲み込み早い。飲み込みも早いし、素直やし。成長どんどんしていくと思います、これから。安全第一でケガのないようにやっていきましょう」

山梨県で育った渡邉さんは、アウトドアが大好きなカナダ出身の父の影響で実家のストーブに使う薪割りを手伝ったりするうちに木材に関わる仕事に就きたいと考えるようになりました。
ハローワークで全国の林業会社を調べるなか、渡邉さんが強い関心を示したのが高知から唯一、求人を出していた別役林業でした。

■渡邉さん
「森林率が日本一ということもあって、あとは自然環境ですかね、高知県の。山、川、海がすごいきれいで、それに惹かれて高知県でやろうって思いました。時折、体力的にしんどいなって感じる時もあったりするんですけど、基本はやっぱりもう山っていう場所が好きなんで、仕事もやっぱ学ぶこと多くて面白いし、結構良い時間を毎日過ごしてますね、山で」

県全体の84パーセントが森林で覆われた高知県では、林業が地場産業の一角を担い、1975年度には7400人あまりが仕事に就いていました。しかし、県人口の減少と共に働き手も減り続け、2023年度はわずか1600人。平均年齢は54.5歳と高く、さらに10代で働く人は23年度までの2年間、一人もいませんでした。渡邉さんは、県内の林業に久々に現れた10代の担い手として貴重な存在です。林業で働く若い人を増やすには、業界のイメージアップが大事だと渡邉さんは考えています。

■渡邉さん
「林業のイメージというか、きつい、危険、汚いっていう、3Kみたいなイメージをもっと変えれたら、やっぱ若い人もどんどん入ってきて、その山での仕事はやりがいあって楽しいよっていうのを、みんなに伝えることができたら多分増えていくとは思いますね」

林業は険しい山に入り、人の力で木を切り出すため、「危険」「厳しい」という印象があります。労働環境の改善に向けて、近年、導入されているのが、最新の機器やデジタル技術を活用する「スマート林業」です。間伐の前に行う山の調査では、ドローンによる撮影で地形や木の生育状況を把握します。

■別役林業 小松豊則さん
「(現場は)100ヘクタールぐらいの面積があるけど、全部撮るのに、30分かからんぐらい。(人力は)1週間ぐらいかかる」

こちらは「自走式タワーヤーダー」。森林の中で切った木を架線を張って集める機械です。林業が盛んなオーストリアで製造され、日本では別役林業が2番目に導入しました。タワーヤーダーは移動式で傾斜が厳しい所でも活用でき、遠く離れた場所から木材を運びます。安全な場所で無線のコントローラーを操作し、間伐材を集めていきます。

■小松竜さん
「(導入前は)重機から人が降りて、木材が来たのを手で外しに行ったりしてたけど、機械から降りなくていいし、だいぶ安全にもなったし、体力的にも楽になった」

現場作業の効率化・省力化の取り組みが進むなか人材の定着には、大きな課題が残っています。県内で林業を仕事にしている人は、2023年度までの10年間、1600人前後で推移し、大きな増減は見られません。一方で、30代以下の若い人の割合は2014年度が27.9パーセントでしたが、2023年度は19.6パーセントと減っています。
県は2018年に林業大学校を開校し、担い手の育成につとめていますが、若い世代の増加という点で大きな効果をあげるまでには至っていません。

別役林業で人事部長をつとめる木下一希さんは、運輸会社の勤務などを経て、2022年に入社しました。当時、従業員の平均年齢は42.6歳で、30代はゼロ、20代は1人でした。木下さんは、人材の確保と定着に向けて従業員の意識の改善が必要だと感じました。

■木下さん
「”昭和”という感じでした。トップダウンは今でもあるけど、根性論の方が強いようなイメージがありました。今の時代に合っているのかなというのは、個人的には思った」

そこで、木下さんが取り入れたのが世代間のギャップを埋めるコミュニケーション能力の教育です。

■木下さん
「昭和が悪いとか、平成が悪いとか、令和が悪いとかそんなんじゃないです。そこは念頭に置いといてください。お互い、昭和は平成を知る。平成も昭和を知る、令和も知る。(人材が)次、また入ってくるからね」

定期的に、従業員が集まり、自分の考えを話したりしながら理解を深めて意識の共有を図っていきます。この日は県外の大学がおこなった上司と部下の意識調査を例に出し、話を進めていきます。

■木下さん:
「(上司について)部下はどう思っているのか?話しづらい?一番若い瑠久君に聞いてみましょうか」
■他の社員:「言いにくいね。頑張れ」
■木下さん:「かまんで、正直に言わなきゃ勉強にならんがやき。世間一般でデータで話しづらいって言っているけど、瑠久くんはどうですか」
■渡邉さん:「僕は、やっぱりその仕事中に、分かんないことしかないんで、もう話しづらいとか、言ってる場合じゃないというか、先輩方にいろいろ聞くときに話しづらいなあって思ったことはないです」

このような取り組みを続けるなか、若い人材が定着し始め、現場で作業する従業員で30代以下の人たちは7人に増加。平均年齢も38.3歳と若くなりました。渡邉さんも、会社の雰囲気の良さを感じ、入社した時に抱えていた不安は消えたといいます。

■渡邉さん
「こわいというか不安はありました。大丈夫かなっていう。入る前はやっぱり、厳しい人も結構いるのかなあっていう風に思っていたんですけど、入ったら僕みたいな新人にもすごい丁寧に教えてくれて、だから俺も失敗を恐れずに、ちょっとチャレンジできるっていうのがいいですね。何十年後の話はまだ分からないですけど、とりあえず辞める気はまだ一切ないです」

日本一の森林資源を背景に地域の経済を支えてきた高知県の林業。人口減少と共に担い手不足が深刻となるなか、別役林業の取り組みは課題の解決に向けたヒントになりそうです。

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