米製薬大手イーライリリーの早期アルツハイマー病治療薬「ケサンラ」について、欧州医薬品庁(EMA)医薬品委員会(CHMP)は、販売を承認しないよう勧告した。重大な脳内出血リスクに勝るほどのベネフィット(便益)はないとしている。

  リリーはケサンラ(一般名ドナネマブ)について、早期アルツハイマー病治療の適応で承認獲得を目指していた。今後、欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会が最終決定を下す。リリーは発表文で、勧告には「失望した」とし、再審査を求める方針を示した。

  同社はアルツハイマー病治療薬の世界市場でエーザイとその提携先バイオジェンと競合しており、今回の勧告は痛手だ。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)によると、この分野の医薬品売上高は2030年までに130億ドル(約1兆9400億円)と、昨年の約2億5000万ドルから急増が見込まれる。

  CHMPは脳出血の可能性や脳の浮腫(ふしゅ)を伴う副作用「アミロイド関連画像異常(ARIA)」に言及。ケサンラを投与された患者3人が死亡したことを指摘した。

  リリーは、欧州の患者にケサンラを届けたい考えに変わりはないとし、安全性と有効性には自信があるとも表明した。

  CHMPは、 エーザイとバイオジェンが共同開発したアルツハイマー型認知症治療薬「レケンビ(一般名レカネマブ)」については承認を勧告したが、使用は脳の浮腫といった重大な副作用のリスクが低めの患者に限定された。

  ウィリアム・ブレアのアナリスト、マイルス・ミンター氏は顧客向けリポートで「ケサンラに関するCHMPの見解が最終的に変わる可能性もあるが、ARIAの発現率が比較的高いことを踏まえると、レケンビより見込みがかなり低いと考えられる」とし、「このためケサンラがEUで承認されない現実的なリスクがあるだろう」と分析した。

  レケンビとケサンラはいずれも脳内のアミロイドベータを除去する点滴薬。病気の進行を抑制するペースは緩やかなものにとどまる。

  リリーはケサンラについて既に米国、日本、英国で承認を取得。レケンビが隔週で投与する必要があるのに対しケサンラは月1回で済むため、利便性で有利な可能性がある。

原題:Eli Lilly’s Alzheimer’s Drug Kisunla Fails to Get EU Backing (2)(抜粋)