特別展で展示されている「不動明王坐像」(奈良市の奈良国立博物館で)=宇那木健一撮影
奈良市の奈良国立博物館で開催中の特別展「空海」(読売新聞社など主催、9日まで)で、今年1月の能登半島地震で被災した石川県珠洲市にある法住寺の本尊「不動明王
坐像(ざぞう)
」(重要文化財)が展示されている。地震の影響で展示の判断が一時保留されたが、開幕2週間前に奈良博へと運ばれた。(栢野ななせ)
像は鎌倉末期の作で、
丹生都比売(にうつひめ)
神社(和歌山県かつらぎ町)から神仏分離で高野山に移った後、珠洲市山間部にある法住寺に迎えられた。歯の一部に水晶を用いる技法が珍しく、空海の念持仏と伝わる京都・東寺の秘仏、不動明王像(国宝)を模したとされる。
空海ゆかりの像として出展が決まり、図録用の写真は昨年撮影。搬出に備えていたが、今年の元日、寺は激しい揺れに襲われた。住職の佐伯快紹さん(71)は「手足を地面についても体を支えられなかった」。鐘つき堂が傾き、山門の仁王像台座が割れるなど、寺にも被害が出たが、幸い不動明王坐像は被害を免れた。
地震で傾いた鐘つき堂(石川県珠洲市で)=法住寺提供 奈良博とはその日のうちに連絡を取れたが、その後は電話がつながらなくなった。停電は2週間続き、周辺では道路の崩落や土砂崩れも発生していた。奈良博の内藤航研究員は「展示は現実的ではない、との意見もあった」と明かす。 状況が変わったのは3月中旬。寺を訪れた文化庁の調査官から、像の状況が地震前と変わらず、周辺道路も運搬可能だと奈良博に伝えられた。佐伯さんも「お像に避難いただけるほうが一安心」と望み、奈良博が搬出を決断。開幕まで2週間を切った4月初旬、寺から運び出された。
振動の影響を最小限に抑えるため手厚く
梱包(こんぽう)
され、約110キロ離れた金沢市まで半日かけて運ばれ、翌日に奈良へ到着。寺から像に付き添った岩井共二・美術室長は「無事に運ぶことができ、ほっとした」と語り、「石川と奈良をつないだ仏さまの縁を大切にして、被災地のために何ができるか、来館者と考えるきっかけになれば」と話している。
像はこれまで一般公開されていなかったが、佐伯さんは「この機会に多くの方にご覧いただき、お像にも心穏やかに過ごしてもらいたい」と願う。寺では5月下旬まで断水が続き、余震で本格的な復旧作業にも手を付けられていない。だが「お像が戻る時のため、新しい拝観施設を用意したい。そのためにも少しずつ復旧を進めなければ」と前を向いた。
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