奈良国立博物館で開催中の特別展「空海 KUKAI―密教のルーツとマンダラ世界」(読売新聞社など主催)では、インドネシア国立中央博物館の仏像や法具が出展されている。必要な修理を、現地に渡った日本の専門家がレクチャーしながら施した。関係者は「日本で初公開となる仏像をぜひ見てもらいたい」と話す。(有留貴博)
密教がインドネシアにも伝わっていたことを示す「金剛界曼荼羅彫像群」(奈良市で)
宇宙の広がりを表す円形の空間の中央で、インドネシア・ジャワ島東部の遺跡で出土した銅製の「金剛界
曼荼羅(まんだら)
彫像群」(10世紀)がひときわ強い存在感を放つ――。安置された展示室は他と全く趣の異なる雰囲気を漂わせる。躍動感のある仏像が数多く並び、壁面には球体の中に仏が描かれた色鮮やかな絵。密教の世界観をより体感できるような工夫が凝らされている。
密教は仏教発祥の地・インドで誕生した。中国にいたる
伝播(でんぱ)
ルートは<陸のシルクロード>をイメージされがちだが、南方を経由する<海のシルクロード>があり、彫像群など東南アジアにも足跡を残している。
そこに焦点を当てようと、インドネシア国立中央博物館から仏像51体、密教法具4点を借りることになったが、同時に課題に直面。一部に空輸の振動に耐えられない恐れがある状態のものがあり、どう補強するかが懸案となった。そこで、奈良博の三本周作主任研究員は金属修理で実績がある元興寺文化財研究所(奈良市)に相談し、事前に撮影した写真をもとに修理を計画。昨年8月、研究所の研究員2人と現地に向かった。
仏像は劣化して亀裂が入ったり、足の部分が折れたり。仏像の背後に立てる光背が針金で止めてあるものもあった。傷みのある仏像はほこりを除去し、強化するためにアクリル樹脂を塗布。彫像群のうち、四つの顔をもつ四面
毘盧遮那(びるしゃな)
如来(大日如来)は針金を取り、本来の場所と推定される位置に光背を設置するため、失われていた部品を作って対応するなどした。
作業では、現地のスタッフに手伝ってもらった。金属処置に関する高度な技術や経験が少なかったこともあり、延べ10人が研究員のレクチャーを受け、質問しながら作業に加わった。アクリル樹脂は塗りすぎると表面が光ることから、修理しないものと見た目に差が出ないよう気をつける点も実践してみせた。 滞在した5日間で手がけた仏像は15体。空輸に伴う問題は起きず、展示会場に無事到着することができた。「時間との戦いだった」と、研究員の初村武寛さんは語り、金沢馨さんは「相手の意向をくみつつ、どう対応するかが大変だった」と振り返る。 三本さんは「密教伝播の足跡がわかるインドネシアの作品にも注目してもらいたい」と話している。 同展は6月9日まで開催中。
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