テニスの天才・越前リョーマ(右、今牧輝琉さん)たちの熱い戦いを描き、人気を博してきた「テニミュ」 (c)許斐剛/集英社・テニミュ製作委員会テニスの天才・越前リョーマ(右、今牧輝琉さん)たちの熱い戦いを描き、人気を博してきた「テニミュ」 (c)許斐剛/集英社・テニミュ製作委員会 2003年に初演され、「2・5次元ミュージカル」の草分けとして高い人気を誇る「ミュージカル『テニスの王子様』」が現在、20周年記念期間の公演中だ。多くの人気俳優を生み出し、「テニミュ」と呼ばれる同作がファンに愛され続ける仕掛けについて聞いた。(浅川貴道)

観劇縁遠い若者に仕掛け 選考で「キャラの種」重視
 原作漫画は
許斐(このみ)剛(たけし)
さんが1999年7月から2008年3月まで週刊少年ジャンプ(集英社)に連載したヒット作。米国から帰国した天才テニス少年・越前リョーマが、テニスの強豪・青春学園中等部(
青学(せいがく)
)に入学し、全国制覇を目指すという物語だ。
2000公演 動員300万人突破 舞台では個性的な選手たちが漫画のコマから飛び出してきたように再現されて人気を呼び、シリーズ通算公演数2000回、累計動員数300万人を突破。2・5次元作品のモデルケースともいえる形を作り上げた。
 その発想の原点について、テニミュの制作会社「ネルケプランニング」の野上
祥子(しょうこ)
社長=写真=は「演劇を見ることへのハードルが高い若い世代の観劇人口を増やすにはどうしたら良いかを考えた」と語る。劇場に気軽に足を運んで楽しんでもらうための仕掛けとして企画されたのがテニミュだった。
「卒業システム」の魅力音と光の軌跡でテニスの試合を再現した演出が「テニミュ」の代名詞だ(c)許斐剛/集英社・テニミュ製作委員会音と光の軌跡でテニスの試合を再現した演出が「テニミュ」の代名詞だ(c)許斐剛/集英社・テニミュ製作委員会 20年の歩みの中で、様々な刷新が加えられているが、基本姿勢はスタート時から変わらない。例えば出演者の選考。当初からキャスティングに関わる野上社長は、オーディションでは「演技経験よりもキャラクターとしての『種』を持っているかを見る」という。本当にそのキャラが実在したら……という雰囲気を感じ取れるかを重視し、「その『種』を一緒に育てていけるかどうかを基準に、俳優を選んでいる」と明かす。 テニスをミュージカルとしてどう表現するかという難問には、初演の演出を担当した振付家の上島雪夫さんがラケットを振る動きから躍動的なダンスを作り、試合の演出では球の打ち合いを光の軌跡と音で表現する斬新な見せ方を編み出した。その趣向は作品の大きな軸となった。 出演俳優が「卒業」して交代していくというシステムも魅力の一つだ。「俳優は他にも仕事がある。ずっとテニミュに縛り付けてはいけない」(野上社長)という理由が背景にあったが、結果的にこの制度が、作品の新陳代謝につながった。 舞台では原作の世界をすでに3回も完結させ、現在は「4thシーズン」の公演中だが「次はどんな俳優が演じるのか」という関心がファンの心を引きつけ続けている。一心不乱がリアリティー生む 「ただし、それだけではない」と野上社長。「毎回、若い俳優たちの作品に懸ける熱量がすごい。物語は結末が決まっているけれど、『どちらが勝つんだろう』という気持ちになる」という。一心不乱に役に打ち込む俳優たちが、スポーツの試合のようなリアリティーを生んでいる。 舞台だけでなく、ライブコンサートやキャストによる運動会まで開催され、08年には台湾、韓国で上演が実現するなど様々な展開を見せている。20年には続編漫画「新テニスの王子様」を原作とするミュージカルもスタート。野上社長は「『テニスの王子様』の世界を365日感じられるようにしたい」と語る。 訪日観光客の観劇も増えているといい、今後は海外への本格進出も展望する。野上社長を始め、関係者一同が「100年後も続いているように」と夢を描いている。9人目リョーマ役 今牧輝琉さん…「誕生前に始まった超有名作品」
 現在進行中の4thシーズンで歴代9人目の越前リョーマを演じるのは、今牧
輝琉(ひかる)
さん。漫画のキャラクターを演じるということの意味や「テニミュ」の魅力について聞いた。
◎ テニミュは僕が生まれる少し前にスタートしていて、僕がこの世界を目指し始めたときには、超有名な作品でした。 原作のリョーマは圧倒的な強さの主人公ですが、僕は、彼が中学1年だということにも注目しました。地元の中学生を観察したりして役作りに役立てました。これまでに先輩たちが演じていますが、物まねをするのではなく、僕ならどうやるのかを常に考えています。 テニミュの公演期間は長く、同じ学校のメンバーを演じる俳優たちは家族よりも近い存在になり、一生の仲間になります。観客の皆さんもそんな僕らを見て、学生時代に戻れるんじゃないかな。20年続く魅力は、そこにあると思います。城田優 古川雄大 斎藤工…スター 輩出2005~06年に上演された舞台に出演する城田優さん(中央)(c)許斐剛 TKWORKS/集英社・テレビ東京・NAS(c)許斐剛/集英社・マーベラス音楽出版・ネルケプランニング2005~06年に上演された舞台に出演する城田優さん(中央)(c)許斐剛 TKWORKS/集英社・テレビ東京・NAS(c)許斐剛/集英社・マーベラス音楽出版・ネルケプランニング テニミュの出演俳優はこれまで400人を超える。この作品が初舞台という俳優も多く、「どこに出しても恥ずかしくないように、礼儀や振る舞いなどからしっかり教育する」(野上社長)。テニミュでの経験を経て大きく羽ばたくスターが何人も出ていることから「若手の登竜門」とも言われる。
 1stシーズンで主人公が通う青春学園中等部のキャストを演じた城田優さん、古川
雄大(ゆうた)
さんは、今や大劇場で主役を張れるほどの堂々たるミュージカル俳優に。実力派俳優として成長中の瀬戸康史さんも若手時代、青学のキャラクターを演じた。
 ライバル校の選手役からも人気者が生まれている。試合中でも感情をあらわにしない天才プレーヤー・忍足侑士の初代キャストだった斎藤工さんを筆頭に和田正人さん、志尊淳さん、声優としても活躍する宮野真守さんや小野賢章さんなどだ。
 
◆2・5次元ミュージカル=
アニメや漫画、ゲームといった2次元の世界観を3次元の舞台で表現するエンターテインメントを総称し、ファンの間から自然発生的に生まれた呼称。「刀剣乱舞」「弱虫ペダル」「ハイキュー!!」などファンを夢中にするヒット作が生み出されている。

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「Dream Live 2024」開催
 20周年記念期間の締めくくりとして、約60人のキャストが出演する「4thシーズン Dream Live 2024」が25、26日、神戸ワールド記念ホール、31日~6月2日、東京・有明アリーナで開催される。問い合わせはネルケプランニング
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