JR北海道ホテルズが2026年9月16日に告知したホテル日航ノースランド帯広(171室)の営業休止は、12月1日のチェックアウト後に始まり2027年4月下旬まで続く。函館・湯の川温泉でも、平成館海羊亭(214室)が11月15日宿泊分から4月15日宿泊分まで、望楼NOGUCHI函館(79室)が8月20日のチェックアウトから4月19日まで休館する。3施設に共通するのは、再開を春に合わせ、北海道のホテルが最も単価を下げる冬をまるごと工期に充てている点である。本稿では、帯広市と函館市の月別推定成約ADRに観光庁の施設タイプ別稼働率を掛けた「売上指数」で、この休館設計が年間客室売上のどれだけを手放すものなのかを定量化し、同じ日数を別の時期に置いた場合と比べる。改装の時期を決めようとしている地方ホテルのオーナーや、工事資金を出す側が最初に見るべき数字を1本にまとめたい。

本記事における指標の定義

ADR(平均客室単価):各施設が予約サイト上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
客室稼働率:本稿の月別稼働率は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値)の北海道・宿泊施設タイプ別の値を用いる。表6のみ、OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)であり、定義が異なる。
売上指数:月別の推定成約ADR×客室稼働率を、12か月平均=100として指数化したもの。客室1室が1日に生む売上の相対水準を表す。
逸失割合:休館(宿泊停止)期間の売上指数の合計を、年間(365日)の合計で割った値。客室売上のみを対象とし、料飲・宴会売上は含まない。
データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング、観光庁「宿泊旅行統計調査」、各社公式告知

北海道ホテルの改装休館、冬に当てると逸失売上30.5% — 帯広171室・湯の川293室の季節設計

帯広の休館151泊

30.5%

年間客室売上に占める逸失割合(日数では41.4%)

同じ151泊を6月上旬から

55.0%

最も不利な時期に置いた場合

帯広市 12〜4月の推定成約ADR

¥5,852

6〜10月平均¥9,386の0.62倍

湯の川の休館152泊

35.2%

旅館ADR×旅館稼働率ベース

休館中も営業する客室

2,837室

帯広1km圏(湯の川1.5km圏は1,932室)

Key Takeaways

— 30.5%:帯広の休館151泊(12月1日〜4月30日と仮定)は年間泊数の41.4%だが、売上指数で重みづけした逸失客室売上は30.5%にとどまる。
— 55.0%:同じ151泊を6月上旬から置くと逸失割合は55.0%。窓の置き方だけで手放す客室売上が1.8倍変わる。
— 0.62倍と0.94倍:帯広市の推定成約ADRは12〜4月が6〜10月の0.62倍。函館市の旅館は0.94倍で、湯の川の冬の谷は単価より稼働の側にある。
— 下限から1ポイント以内:帯広(下限30.0%)も海羊亭型(35.2%、下限34.2%)も公式の窓は理論上の下限に近い。望楼型243泊は64.8%。
— 25.3〜35.5%:冬(12〜4月)の単価±10%・稼働±10ポイントを動かしても帯広の逸失割合はこの範囲で、6月置き(51〜59%)との差は残る。

3施設の休館設計 — 公式告知で揃える期間と範囲

まずは各社の告知を一次情報として並べる。ホテル日航ノースランド帯広は、客室改装工事等のため宿泊とレストラン「J」を休止する一方で、宴会場とラウンジ「オーロラ」を2027年1月16日まで残す二段構えの設計をとった。同ホテルは2027年6月17日に開業30周年を迎える旨も告知に明記されている。平成館海羊亭は10月1日の告知で期間と再開予定日を示し、理由には触れていない。望楼NOGUCHI函館は4月4日の時点でメンテナンス工事に伴う休館を告知し、9月には休館中の案内として同グループの道内外の施設を紹介しつつ、再開後の予約受付を始めている。

表1 北海道3施設の休館設計(各社公式告知)施設(所在地)運営会社休館期間(公式表記)再開備考ホテル日航ノースランド帯広(帯広市)JR北海道ホテルズ2026年12月1日(火)チェックアウト終了後〜2027年4月下旬(予定)2027年4月下旬予定客室改装工事等。宿泊とレストラン「J」を休止、宴会場・ラウンジ「オーロラ」は2027年1月16日(土)まで営業。2027年6月17日に開業30周年平成館海羊亭(函館市・湯の川温泉)トーホウリゾート2026年11月15日(日)宿泊分〜2027年4月15日(木)宿泊分2027年4月16日(金)チェックインより再開予定理由は公式告知に記載なし(2026年10月1日告知)望楼NOGUCHI函館(函館市・湯の川温泉)野口観光マネジメント2026年8月20日(木)チェックアウト〜2027年4月19日(月)2027年4月20日(火)チェックインより再開メンテナンス工事に伴う休館(2026年4月4日告知)。再開後の宿泊予約は受付中

出典:JR北海道ホテルズ、トーホウリゾート、野口観光マネジメントの各公式告知よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

この3件のうち帯広と海羊亭は、11〜12月に入って4月中旬〜下旬に出る「冬を跨ぐ窓」である。望楼NOGUCHI函館だけは8月下旬から始まる8か月の窓で、夏の山の一部を含む。休館の理由はメンテナンス工事と公式に示されている以上のことは分からないため、本稿では理由を推測せず、窓の置き方が逸失売上に与える差だけを扱う。

単価の谷はどこにあるか — 帯広市は12〜4月が6〜10月の0.62倍

帯広市の推定成約ADR(対象施設の中央値)は、確定している直近12か月(2025年10月〜2026年9月)で9月の¥10,100 を山とし、4月の¥5,400 を谷とする。12〜4月の5か月平均は約¥5,900、6〜10月の5か月平均は約¥9,400 で、比率は0.62倍になる。対象施設数は月ごとに28〜36施設である。一方、函館市の旅館(20〜26施設)は様相が違う。8月の¥11,900 が山で3月の¥8,000 が谷という形は同じだが、12月と1月に¥11,300 前後の高い水準が立ち、12〜4月平均は約¥9,800 と6〜10月平均の約¥10,400 の0.94倍にとどまる。年末年始の温泉需要が単価を支えているためで、函館市の全施設(80〜88施設)で見ると12〜4月は6〜10月の0.77倍と、帯広と湯の川旅館の中間に落ちる。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADR、2025年10月〜2026年9月の確定月。帯広市N=28〜36施設、函館市旅館N=20〜26施設)。帯は帯広・海羊亭の休館月

つまり「冬に休館を当てれば単価の安い月を手放すだけで済む」という直感は、帯広では強く成り立ち、湯の川の旅館では単価面だけを見る限り弱い。湯の川で冬の休館が効くとすれば、それは単価ではなく稼働の側である。

稼働を掛けると売上の谷はどこか — 月別売上指数

観光庁「宿泊旅行統計調査」の2025年年間値(確定値)によると、北海道のシティホテルの客室稼働率は7月82.7%・8月82.6%・9月81.4%に対し、4月は56.8%、3月は67.5%である。旅館は7月の56.3%が最高で、4月29.6%・3月34.7%・11月36.5%・12月37.0%と、冬から春にかけて30%台に沈む。帯広市のADRに道内シティホテルの稼働率を、函館市旅館のADRに道内旅館の稼働率を掛けて12か月平均を100とした売上指数にすると、谷の位置がはっきりする。

表2 月別の推定成約ADR・稼働率・売上指数(売上指数=ADR×稼働率、12か月平均=100)月帯広市 推定成約ADRN道内シティホテル稼働率帯広 売上指数函館市 旅館 推定成約ADRN道内旅館稼働率湯の川 売上指数2025年 10月¥9,6003078.5%132.8¥11,4082148.7%125.62025年 11月¥7,3362970.3%90.9¥10,0522036.5%82.92025年 12月¥6,3262872.6%80.9¥11,3082037.0%94.62026年 1月¥6,2873178.7%87.2¥11,3232140.3%103.12026年 2月¥5,7773380.5%81.9¥8,2352547.4%88.22026年 3月¥5,4413367.5%64.7¥7,9912634.7%62.72026年 4月¥5,4273456.8%54.3¥9,9762629.6%66.72026年 5月¥6,5543465.5%75.6¥9,9262640.4%90.62026年 6月¥8,5583476.3%115.0¥9,2662649.3%103.32026年 7月¥9,1233582.7%132.9¥8,8262556.3%112.32026年 8月¥9,5383682.6%138.8¥11,8622553.8%144.22026年 9月¥10,1113581.4%145.0¥10,7992551.5%125.7

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADR)、観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値)第8表・北海道の宿泊施設タイプ別客室稼働率

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング、観光庁「宿泊旅行統計調査」より作成(売上指数=ADR×稼働率、12か月平均=100)

帯広の売上指数は9月の145.0を頂点に、4月の54.3まで2.7倍の開きがある。12月80.9、1月87.2、2月81.9、3月64.7、4月54.3と、休館に充てた5か月はいずれも100を下回り、特に3〜4月は年間で最も客室が売上を生まない時期にあたる。湯の川の旅館は8月144.2が山、3月62.7が谷で、休館5か月の指数は12月94.6・1月103.1・2月88.2・3月62.7・4月66.7となる。年末年始を含む12〜1月は平均近くまで戻るため、帯広ほど深い谷ではないが、2〜4月は明確に谷である。稼働の低い時期を休館に充てる考え方は曜日単位でも成り立ち、観光白書2026「稼働の谷を閉じる」が曜日別の稼働率から戦略的休館日の収益余地を整理している。

休館の窓を動かすと逸失売上はどう変わるか — 日数の41%で売上の30%

ここからが本稿の中心である。帯広の休館を4月末までと置くと151泊で、年間365泊の41.4%に相当する。ところが売上指数で重みづけすると、この151泊が年間客室売上に占める割合は30.5%にとどまる。同じ151泊を1月1日から始めた場合の30.0%が理論上の下限で、公式の12月1日開始はそれに0.5ポイント差まで迫っている。逆に6月上旬から同じ日数を休めば逸失割合は55.0%に達し、冬置きとの差は24.5ポイントになる。日数が同じでも、窓の置き方ひとつで手放す売上が1.8倍変わるということである。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング、観光庁「宿泊旅行統計調査」より作成(各月1日開始で同じ泊数を休館した場合の、年間客室売上に占める逸失割合)

表3 休館の窓と年間客室売上に占める逸失割合(帯広=帯広市ADR×道内シティホテル稼働率、湯の川=函館市旅館ADR×道内旅館稼働率)休館(宿泊停止)の窓泊数年間泊数に占める割合年間客室売上に占める逸失割合同じ日数を最も有利な時期に置いた場合同じ日数を最も不利な時期に置いた場合帯広:12月1日〜4月30日(4月末までと仮定)151泊41.4%30.5%30.0%(1月1日開始)55.0%(6月上旬開始)湯の川:11月15日〜4月15日152泊41.6%35.2%34.2%(12月31日開始)50.9%(6月上旬開始)湯の川:8月20日〜4月19日243泊66.6%64.8%57.6%(11月1日開始)74.2%(6月1日開始)

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング、観光庁「宿泊旅行統計調査」より作成。帯広の終了日は公式告知の「4月下旬予定」を4月30日と仮定

湯の川の海羊亭型の窓(152泊)は、年間泊数の41.6%に対し逸失割合35.2%である。帯広より5ポイントほど高いのは、12〜1月の旅館単価が落ちないためで、下限の34.2%(12月31日開始)との差は1.0ポイントしかない。ここでも公式の窓はほぼ最適に近い。望楼型の243泊は泊数の66.6%に対し逸失64.8%で、8月20日開始は11月1日開始の57.6%より7.2ポイント高く、6月1日開始の74.2%より9.4ポイント低い。8か月という長さになると、どこから始めても夏か秋の山のどちらかに掛かるため、窓の置き方による差は5か月の窓より小さくなる。

金額の目安も示しておく。帯広市の推定成約ADRと道内シティホテルの稼働率を100室に当てはめると、年間客室売上は約¥207,463,000で、12月1日〜4月30日の休館で手放すのは約¥63,229,900 である。同じ151泊を6月上旬に置けば約¥114,147,600 になり、差は約¥50,917,700 に広がる。171室に換算すれば休館分は約¥108,123,200、6月置きとの差は約¥87,069,200 となる。湯の川の旅館水準で100室なら、年間約¥161,737,400 のうち11月15日〜4月15日の休館分が約¥56,941,200、6月置きなら約¥82,342,100 で、差は約¥25,400,900 である。いずれもエリアの標準的な施設の単価水準と道内平均の稼働率を使った目安で、各施設の実際の単価・売上ではない。

前提を動かすと30.5%はどこまで振れるか — 冬の単価×稼働の感度

表3の30.5%は、確定済みの2025年10月〜2026年9月の推定成約ADRと2025年の稼働率をそのまま休館期間に当てた値である。休館する冬の実際の単価・稼働が前提からずれた場合の振れ幅を見るため、12〜4月の推定成約ADRを±10%、同じ5か月の客室稼働率を±10ポイント動かし、他の月は据え置いて帯広の逸失割合を計算し直した(表3-2)。冬が前提より弱ければ逸失割合は下がり、強ければ上がる。

表3-2 帯広(12月1日〜4月30日・151泊)の逸失割合の感度 — 冬(12〜4月)の推定成約ADR×客室稼働率冬の単価の前提 \ 冬の稼働の前提稼働 −10pt稼働 −5pt稼働 ±0pt稼働 +5pt稼働 +10pt冬の推定成約ADR −10%25.3%26.8%28.3%29.7%31.0%冬の推定成約ADR −5%26.4%27.9%29.4%30.8%32.2%冬の推定成約ADR ±0%27.4%29.0%30.5%31.9%33.3%冬の推定成約ADR +5%28.4%30.0%31.5%33.0%34.4%冬の推定成約ADR +10%29.3%31.0%32.5%34.0%35.5%

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング、観光庁「宿泊旅行統計調査」より作成(太字が表3の中位ケース。12〜4月以外の月は表2の値で固定)

四隅の範囲は25.3%(冬の単価−10%・稼働−10ポイント)から35.5%(同+10%・+10ポイント)で、171室換算の休館分は約¥83,702,400〜約¥135,568,100 になる。同じ前提の組み合わせで151泊を6月上旬に置いた場合の逸失割合は51.1〜59.1%で、冬置きとの差はどのケースでも15ポイント以上残る。冬に休館を寄せるという結論は、冬の単価・稼働の前提が多少ずれても揺らがない。

既刊の「ホテル改装の逸失売上は工事費の32.6%」では、100室・1室300万円の全館休館モデルで逸失分が工事費の32.6%に相当すると試算した。あの数字は年間を通じた平均的な室日単価を前提にしている。本稿の帯広の例では、同じ日数を冬に寄せることで逸失売上が平均置き(4月や10月開始で39〜43%)より2〜3割小さくなるため、工事費に対する逸失の比率もそれに応じて下がる。改装の実質Capexを押し下げる手段として、工事単価の交渉と同じくらい工期の置き方が効くことになる。

望楼NOGUCHI函館 — 8か月の窓は夏の山を含む

望楼NOGUCHI函館の休館は8月20日のチェックアウトから始まる。湯の川の旅館の売上指数で見ると、8月は144.2と年間最高、9月も125.7と高い月で、ここに掛かる窓は他の2件とは性格が異なる。ただし243泊という長さを前提にすれば、どの開始日を選んでも逸失割合は57.6〜74.2%の範囲に収まり、8月20日開始の64.8%はその中央よりやや低い側にある。メンテナンス工事という公式説明以上の事情は分からないので、本稿では工期の長さそのものが窓の自由度を奪うという一般論に留める。工期が8か月を超えるなら、夏を外すには翌年の11月まで着工を遅らせるしかなく、その間の設備リスクと天秤にかける判断になる。

同館の休館中の案内では、同グループの望楼NOGUCHI登別やBOUROU LAKE TOYA、湯の川の湯元啄木亭とHAKODATE海峡の風などへの滞在を勧めている。グループ内に受け皿があれば、休館中の顧客接点を維持しながら工事に入れるという点で、複数館を持つ運営会社の強みが出る設計といえる。

宴会場を1月16日まで残す設計 — 非客室売上の暦に合わせる

帯広の告知で目を引くのは、宿泊とレストランを12月1日で止めながら、宴会場とラウンジを1月16日まで営業する点である。帯広市内でシティホテルに分類される施設は3施設しかなく、年末の忘年会や年始の賀詞交歓会といった法人宴会需要の受け皿は限られる。既刊の「婚礼2,292億円・組単価363万円|ホテル非客室売上の61%は9-11月と3-5月」で整理したとおり、結婚式場業の売上は11月が年間最大で1月が最小となり、客室の暦とは別のリズムで動く。客室の谷である12〜1月は、宴会にとっては忘新年会という固有の山を持つ。

宴会場だけを1月中旬まで残す設計は、客室改装の工期を冬に寄せつつ、冬に売上が立つ非客室部門を途中まで動かすという二つの暦を同時に満たすものである。客室部門と宴会部門で休止日をずらすこの型は、フルサービス型のホテルが冬季改装を組むときの参照例になる。工事の動線と営業エリアを分けられる建物であることが前提になるため、改装計画の初期段階で建築側と確認しておきたい論点でもある。

休館中の受け皿 — 帯広駅周辺1km圏と湯の川1.5km圏の客室ストック

休館中の需要がどこへ移るかを見るため、ホテル日航ノースランド帯広の所在地を中心とする半径1km圏と、湯の川温泉の中心(北緯41.7775・東経140.7855)から半径1.5km圏の客室ストックを数えた。施設の母集団は、2026年7月〜10月のいずれかの月に予約サイト上で価格観測がある施設に限っている。価格観測で数えるのは、営業中であることを直近の販売実績で確認するためである。

帯広の1km圏には28施設・3,008室があり、休館する171室はその5.7%にあたる。休館中も2,837室が営業を続ける計算で、ビジネスホテルが客室の大半を占める。湯の川の1.5km圏は28施設・2,225室で、海羊亭と望楼を合わせた293室は13.2%に相当し、残る1,932室が受け皿になる。温泉旅館が客室の中心であるため、受け皿も同じ温泉滞在の客層を迎える施設が主体になる。

図4 帯広:半径1km圏の客室ストック(円の大きさ=客室数、濃色=休館予定)

図5 湯の川温泉:半径1.5km圏の客室ストック(同)

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(2026年7〜10月に価格観測がある施設。帯広28施設・湯の川28施設)

表4 ホテル日航ノースランド帯広を中心とする半径1km圏の客室ストック(2026年7〜10月に価格観測がある施設)区分施設数客室数構成比ビジネスホテル232,47982.4%シティホテル234511.5%リゾートホテル11173.9%ホステル・ゲストハウス1471.6%旅館1200.7%合計283,008100%うち休館予定(171室)1715.7%休館中に営業を続ける客室2,83794.3%
表5 湯の川温泉(北緯41.7775・東経140.7855)を中心とする半径1.5km圏の客室ストック(同)区分施設数客室数構成比旅館151,39262.6%リゾートホテル455825.1%ビジネスホテル31838.2%デラックスホテル1793.6%ホステル・ゲストハウス180.4%貸別荘・コンドミニアム450.2%合計282,225100%うち休館予定(海羊亭214室+望楼79室)29313.2%休館中に営業を続ける客室1,93286.8%

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(施設区分・客室数はメトロエンジンリサーチ&コンサルティングの収録値で、各施設の公式値と異なる場合がある)

受け皿の余力は季節で変わる。2026年夏の稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)を見ると、帯広市の全施設は6〜9月に92〜96%、函館市の旅館は75〜86%で推移しており、夏に同じ客室数が抜ければ周辺施設の空室だけでは吸収しきれなかった可能性が高い。冬の稼働率は観光庁統計の道内シティホテルで56.8〜80.5%、旅館で29.6〜47.4%であり、同じ客室数が抜けても周辺に受け止める余地がある。冬の休館は、自館の逸失売上を小さくするだけでなく、商圏全体の受け皿という観点でも整合的な選択になっている。

表6 2026年夏の稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)エリア・区分6月7月8月9月対象帯広市 全施設94.8%92.3%92.6%95.6%20施設/2,304室函館市 全施設85.2%83.9%86.9%90.4%69〜72施設/6,529〜6,795室函館市 旅館78.5%74.6%81.7%85.8%14〜16施設/1,091〜1,140室

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(主要予約サイト掲載ベース。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。総客室の30%以上を掲載する施設の固定コホートで、掲載外の客室を消化済み側に数えるため観光庁統計より高めに出る)

函館市内では、J-REITが保有するホテルが4物件ある。インヴィンシブル投資法人が開示する函館国際ホテル(435室)の2026年8月の運営実績は稼働率91.3%・ADR¥26,277で、函館の夏の山がフルサービス型でも高い稼働で裏づけられる。いずれも湯の川温泉の1.5km圏の外にあるため受け皿の集計には含めていないが、函館市のホテル市場が機関投資家の保有対象になっている点は、改装資金の出し手が市場の厚みを測るうえで参考になる。

表7 函館市内のJ-REIT保有ホテル(保有関係データ 2026年10月12日時点)物件保有REIT客室数取得価格函館国際ホテルインヴィンシブル投資法人(8963)435室¥16,830 百万円ホテルマイステイズ函館五稜郭インヴィンシブル投資法人(8963)208室¥2,792 百万円コンフォートホテル函館星野リゾート・リート投資法人(3287)139室¥937 百万円fav 函館霞ヶ関ホテルリート投資法人(401A)30室¥1,360 百万円

出典:各投資法人のポートフォリオ開示(インヴィンシブル投資法人 ポートフォリオ一覧)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。函館国際ホテルの運営実績はインヴィンシブル投資法人「2026年8月 月次運営実績」

改装の時期設計 — オーナー・地銀・再生ファンドが確認したい4点

1. 単価の谷と稼働の谷を分けて見る

帯広のように単価が0.62倍まで下がるエリアと、湯の川旅館のように単価は0.94倍で稼働が30%台に落ちるエリアでは、谷の正体が違う。売上指数(ADR×稼働率)で月の順位をつけてから窓を決めたい。

2. 窓の長さが5か月なら冬置きで逸失は3割

帯広型151泊は年間泊数の41%でも売上の30.5%。同じ日数を6月から取ると55.0%になる。工期が決まったら、開始月をずらした逸失割合の表を融資審査の添付資料にしておくと説明が速い。

3. 非客室部門は別の暦で止める

宴会場を1月16日まで残す帯広の設計は、忘新年会の需要を取り切ってから閉じる型。客室と宴会で休止日を分けられるかは建物の動線次第なので、設計初期に確認する。

4. 商圏の受け皿と再開時期を重ねる

帯広1km圏に2,837室、湯の川1.5km圏に1,932室が営業を続ける。冬は周辺の空室で吸収でき、4月中旬〜下旬の再開はゴールデンウィーク前の立ち上げに間に合う。再開後の予約受付を休館中に開く望楼の例は、顧客接点を切らさない運用として参考になる。

冬に休館を当てる設計は、北海道の地方都市と温泉地に共通して逸失売上を最小に近づける。本稿の3件は、公式告知の窓がいずれも理論上の下限から1ポイント以内(5か月の窓)か、長い工期の中では低い側(8か月の窓)に置かれており、季節性を織り込んだ時期設計がすでに実務として定着していることを示している。改装後の単価上昇余地まで含めた投資判断は別稿に譲るが、工期を動かすだけで逸失売上が1.8倍変わるという事実は、Capexの議論の最初に置かれてよい。

⚠ 試算の前提と将来日程に関する注意:本稿の逸失割合は、確定している2025年10月〜2026年9月の推定成約ADRと、観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年の北海道・施設タイプ別客室稼働率を月別に組み合わせた指数で、休館期間(2026年11月〜2027年4月)の実際の単価・稼働を予測したものではない。帯広の終了日は公式告知の「4月下旬予定」を4月30日と置いた。エリア単位の推定成約ADRは中央値であり、対象3施設の実際の単価・売上とは異なる。2026年10月以降の推定成約ADRは調査時点の掲載水準に基づく推定であるため本稿の集計には用いていない。客室売上のみを対象とし、料飲・宴会売上は含まない。

集計方法と出典

推定成約ADRは市区町村単位(帯広市・函館市)および函館市の旅館区分について、2025年10月〜2026年9月の確定月を用いた。稼働率は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値)第8表から北海道の宿泊施設タイプ別(シティホテル・旅館)の月別値を取り、帯広にはシティホテル、湯の川には旅館の値を当てた。都道府県単位の稼働率を市の単価に掛けている点は近似であり、帯広市・函館市固有の稼働率ではない。逸失割合は、2026年7月1日から365日の暦に各月の売上指数を日割りで並べ、休館期間の合計を年間合計で割って求めた。代替の窓は同じ泊数を各日開始で動かして計算し、最小・最大を示した。客室ストックは、各中心座標から半径1km(帯広)・1.5km(湯の川)の施設のうち、2026年7月〜10月のいずれかの月に主要予約サイト上で価格観測がある施設を数えた。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

推定成約ADRはメトロエンジンリサーチ&コンサルティングの市区町村別月次中央値(帯広市・函館市・函館市の旅館区分、2025年10月〜2026年9月の確定月)。月別の客室稼働率は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値)第8表の北海道シティホテル・旅館。休館期間は各社公式告知。半径圏の客室ストックは2026年7〜10月に価格観測がある施設、夏の稼働率はOTA掲載在庫ベースの推定値。

■ 試算前提

売上指数=月別の推定成約ADR×客室稼働率(12か月平均=100)。2026年7月1日から365日の暦に月の指数を日割りで並べ、休館期間の合計を年間合計で割って逸失割合とした。帯広の終了日は公式告知の「4月下旬予定」を4月30日と置いた。金額は100室・171室への単純換算による目安。感度表(表3-2)は12〜4月の単価を±10%、稼働率を±10ポイント動かし、他の月は据え置いた。

■ 限界・留意点

北海道の施設タイプ別稼働率を市の単価に掛けた近似であり、帯広市・函館市固有の稼働率ではない。エリアの推定成約ADRは中央値で、対象3施設の実際の単価・売上とは異なる。客室売上のみを対象とし、料飲・宴会売上、改装後の単価上昇、工事費、休館中の固定費は含まない。休館期間(2026年11月〜2027年4月)の実績を予測したものではない。

■ 一次情報(各社公式告知)

■ 政府統計・公的データ

■ 市場データ・REIT開示

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