26-02

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<リマ事務所 村井裕子、小嶋吉広 報告>

はじめに

本稿では、2025年における鉱業関連制度の主な改正状況および関連法案とその審議動向等について、前稿1および前々稿2からの進捗について報告をする。前半の1.では、正規鉱業における許認可手続きの改善に資する各事項(表1)について進捗を説明する。また、後半の2.では、正規鉱業に対し手続きの増加等のネガティブな影響を及ぼし得る各事項(表2)、および現在ペルーにおいて社会的課題となっている小規模採掘者等による非正規鉱業の合法化手続き(REINFO)について進捗状況を説明する。なお、本稿中、年について記載のない事項は2025年に実施されたものである。


表1.手続簡素化や改善に資する制度改正事項とステータス一覧


事項
内容
ステータス


探鉱環境保護規則改正
環境影響調査審査日数の明確化、試錐座数や土地改変エリア増加等
改正案公表中


閉山法施行細則改正
環境機関による査察や最終閉鎖証明書発行の時期明確化
改正案公表中


遺跡介入規則改正
地表遺跡評価の実施手順の明確化、

その他関連プロセスの簡素化等
改正済み

追加改正案公表中


水関連許可延長手続簡素化
既存許認可の延長の自動承認適用
改正済み


水資源庁組織再編
組織再編による業務効率改善
進行中


デジタル単一窓口(VUD)
環境影響調査の審査に関与する政府機関10件を繋ぐワンストップサービス導入
進行中


表2.ネガティブな影響を及ぼしうる制度改正事項とステータス一覧


事項
内容
ステータス


国土整備法
地域の特性に応じた産業や天然資源利用による国家競争力や国民生活の向上
法律公布済み

施行細則案公表中


鉱業一般法改正法案
鉱区料や生産義務未達ペナルティ増額、生産義務未達鉱区の保有期間短縮
複数の法案が存在

国会委員会審議中


鉱業合法化期限延長法案
27年末までのREINFO延長、REINFOから除外された業者5万件の再登録等
国会委員会が承認

本会審議前


1.手続簡素化や改善に資する制度改正案と実行状況


1-1.探鉱環境影響調査の審査プロセス改善、規制緩和 <改正案公表中>

エネルギー鉱山省(MINEM)は2月に省令072-2025-MINEM/DM3を公布し、探鉱環境保護規則改正案を公表した。改正案は、環境影響申告書(DIA)で設置可能な試錐座数の上限を、一定の条件を満たすことで現行の40か所から60か所とすること、土地改変エリアを現行10haから14haとすること等が盛り込まれている。また、現行の規則で明記されていないDIAや環境影響概要調査(EIAsd)の申請受理や審査の流れ・日数等について具体的に定めている。

なお本改正案のパブリックコメント期間は既に終了しているが、本稿の公表時点で規則改正は未だ実現していない。


1-2.遺跡関連調査プロセスの明確化・簡素化 <改正済み、追加改正案公表中>

3月、政府は大統領令DS04-2025-MC公布により遺跡介入規則を改正し4、地表遺跡調査等に関する定義やプロセス等を明確化した。さらに9月、文化省は関連手続きの改善や簡素化等を目的として本規則の追加改正案を公表した5。


1-3.水利用許可や処理水放流許可延長の自動承認 <改正済み>

9月、水資源庁は庁令0171-2025-ANA6を公布し、水利用許可や処理済み廃水再利用許可の延長申請や処理済み廃水の水系への放流許可延長に関し、一定の要件履行を条件に自動承認とすることを定めた。本件では、既存許可の延長であるにも関わらず審査が遅延し投資計画に影響を与えているとして業界から政府への改善要望が提出されていた。


1-4.閉山計画書審査・査察プロセス改善 <改正案公表中>

10月、エネルギー鉱山省は省令RM317-2025‐EM7を公布し、閉山法施行細則改正案を公表した。改正案は、閉山計画書の審査プロセスに係る期間や、環境監査機関による閉山計画書の履行状況確認の現地査察実施(管轄機関からの要請後45実働日以内)や査察報告書提出の期限等を定めている。査察報告書は、MIENMまたは州政府による最終閉鎖証明書発行に必要となる。

最終閉鎖証明書は、鉱業権者による閉山計画書の履行を証明し、その取得により鉱業権者が保証金の残高返還を当局に申請できる重要度の高い文書であるが、現行規則では監査当局による査察の実施時期が定められておらず、証明書取得時期の目途が立たないことがこれまで指摘されていた。現在、改正案はパブリックコメント受付中となっている。


1-5.水資源庁組織再編 <現状:再編プロセス途上>

鉱業を含めた様々な産業の環境影響調査(EIA)の審査において、水資源庁(ANA)による水資源関連の審査遅延がEIA審査長期化の主要因となっていることが長年指摘されている。このような中、ANAを管轄する農業・灌漑開発省は、2024年に業務内容に応じた人材の再配置や業務プロセス簡素化等の組織再編に取り組む方針を示し、大統領令013-2024-MIDAGRI8の公布によってANAの組織再編を宣言したほか、ANAの業務運営改善に向けた検討を行う時限委員会が設置された。

6月には、時限委員会の報告・提案9に基づく再編実行に向けた作業グループが立ち上げられた10。


1-6.デジタル単一窓口(VUD <現状:世銀、関連機関と調整中>

2018年にMINEMは鉱業関連手続きの窓口を一本化するデジタル単一窓口(Ventanilla Unica Digital、VUD)の構想を発表、2023年に設置を発表したが、現状、同Webサイト11は既存手続きのガイド集や担当政府機関へのリンク集に留まる。

MINEMは、VUDにより連携する10政府機関での審査業務の内容や期間等を定める内部規則を更新し、鉱業関連手続きに必要な期間を現在の2年から6か月に短縮することを目指すが、各機関との調整が難航している12。このような中、8月にMontero前MINEM大臣は、世銀がVUD導入に当たり50mUS$の支援を行うことを表明し、2026年前半に本件の進展が見込まれるとコメントした13。


2.正規鉱業に対しネガティブな影響を及ぼしうる制度改正案等

以下は、正規鉱業に対しネガティブな影響を及ぼし得る制度改正、および近年政府が取り組んでいる非正規鉱業事業者の合法化プロセス(REINFO)について説明する。


2-1.国土整備法 <現状:公布済み、施行細則案公表中>

3月に国会は「国土整備及び国土整備国家システム(SINADOT)設置」法を可決した14。本法律は各地域のポテンシャルや文化的多様性、能力、特徴等を考慮しつつ、生産的、持続的かつ競争力ある国土を実現し、天然資源の最適な利用を通じて国民生活環境を向上させること等を目的としている。またSINADOTは官学民の連携を通じて国土整備政策の履行を保証するシステムであると定義されている。さらに9月、本法の施行細則案15が公表され、パブリックコメントの受付が行われている。

なお本法律のベースとなった3件の法案の一部に関し、業界関係者からは、州政府が鉱業活動制限エリアを設置できるようになる可能性があるとする懸念の声が上がっていた。


2-2.鉱区料増額、鉱区期間短縮を目的とする改正法案 <現状:国会委員会で審議中>

2024年から2025年にかけて、鉱区料の引き上げや、生産義務不履行の鉱区の有効期間短縮を目的とする複数の法案が提出された16。現在、大・中規模鉱業の年間鉱区料は3US$/haだが、これら法案は保有鉱区面積に応じて最大20US$/haに引き上げること等を提案している。また、現在は生産義務を不履行の場合もペナルティの支払いにより最大30年間鉱区を維持できるが、本期間を20年から5年まで短縮することを提案している。


2-3.鉱業合法化期限延長法案 <現状:国会本会第1回採決承認、第2回採決前>

12月4日国会本会は、小規模採掘事業者等による非正規鉱業の合法化手続き期限(REINFO)を2026年末まで1年間延長する法案を承認した。

既存の合法化制度は機能不全(20年間で合法化に至った業者は約2%)や犯罪組織による不正利用が指摘されつつ、これまで期限延長が繰り返されてきた。Boluarte前政権は、小規模採掘事業者に係る合法化手続きの許認可権限を州政府から中央政府へ移管し、2025年末の合法化手続きの終了を目指していたが、政権交代間もなく国会エネルギー鉱山委員会は2027年末までのREINFO延長や、一定条件を満たすことで2025年6月にREINFOから除外された業者約5万件の再登録を可能とすること等を定める法案を可決した。本法案に対して現政府や正規鉱業団体は、非正規鉱業に譲歩しすぎた内容だと反発して修正を要請した結果、国会本会は第1回採決で26年末又は小規模・零細鉱業(MAPE)法成立までの延長を承認した一方、除外された業者の再登録等については否決した。なお、本法案の可決確定には2度目の採決における承認が必要である。一方前政権がREINFOの後継制度として準備に取り組んでいたMAPE法案の審議は進んでいない。

ペルーでの膨大で煩雑な鉱業関連手続きや審査の長期化は長年の問題である。このような中、2018年に設立された鉱業・エネルギー執行協議会(Mesa Ejecutiva Minero Energetica)では、経済財務省を筆頭に政府機関や業界団体が制度の障壁や改善について継続的に協議しているほか、現在政府は鉱業を含む規制緩和パッケージ 17実行するなど、様々な取り組みが行われている。上述の改正(案)も多くが業界団体の要望や提案を反映したものである。ただし、デジタル単一窓口(VUD)等複数の政府機関の調整や多額の予算が必要となる、よりインパクトの大きな制度改正は調整が難航している。

政府主導の制度改正が進む一方、国会では正規鉱業に必ずしも裨益しない法案を支持する議員が少なくない。2-2.で示した複数の鉱区期間の短縮法案では、大企業の休眠鉱区を解放し合法化途上の小規模・零細業者に付与することが目的であると謳っており、正規業界団体は警戒感を高めている。

金価格の上昇を背景に、非正規採掘事業者や違法採掘事業者の数は増加していると言われており、REINFO延長を推し進める党や議員には2026年の総選挙でこれら事業者の票を確保したい思惑があると指摘されている。また、次期選挙ではREINFO登録者が様々な政党の議員候補に擁立されているほか、違法鉱業から候補者への多額の献金が行われる可能性もメディアでは指摘されている18。

このような状況の中、次期選挙はペルー鉱業の方向性を見定める上で重要なプロセスとなると思われる。従来、政府は規模の大小に関わらず正規鉱業を推進する方針を示してきたが、国として本方針を引き続き維持していくことができるのか、制度改正の動向と並行して注視していく。


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