
秋田県大仙市 鈴木酒造店
【N居酒屋にて 全8回の③】
高校の同級生Kとその奥さまとわたくし。N居酒屋で、ほぼ半年ぶりに顔を合わせた。N居酒屋の店主は、わたくしが飲んだことがないだろうお酒をさりげなくそろえてくれる。その心遣いがうれしい。Kとの久しぶりの会話を楽しみ、そして美酒を愉しんだ。
「上川大雪」「流輝」と飲み進め、次にいただいたのは「秀よし 石沢繁昌 Final Edition 20th 純米吟醸(ひでよし)」だった。「秀よし」など鈴木酒造店(秋田県)のお酒を当連載はこれまで、7種類取り上げている。
今回のお酒は、鈴木酒造店で20年間杜氏を務め上げ、第一線を退く石沢繁昌さんが最後に醸したお酒。石沢さんに敬意をあらわすとともに、これまでの労苦をねぎらい、居住まいを正していただいてみる。
上立ち香は、ほのか。含み香を含め全体的に静かで落ち着いた香り。味わいは、基本的に辛口酒と感じた。旨みの無いただ辛いだけのドライな辛口酒とは違い、旨みを伴う辛口酒なので好ましく感じた。
全体的にすっきり、軽快感があるが、酸を感じ、旨みと辛みも感じ重層的な味わいとなっているため、飲みごたえがある酒質となっている。
N居酒屋の店主も「バランスが良いお酒です」と教えてくれた。
このお酒をカテゴリー分けすると、クラシックタイプの、ボディーはミディアムとライトの中間あたり。あるいは爽酒と醇酒の中間あたり。あるいは濃淡中間辛口酒。
瓶のラベルは、石沢杜氏の表情写真とともに、彼のメッセージを以下のように掲載している。万感胸に、という表現がふさわしい、心の底から発せられたメッセージに感じた。
「この蔵にご縁をいただいて20年。私が手掛ける最後のお酒になりました。いろんなことが走馬灯のようによみがえってきます。我家は親子三代続く酒屋若勢ではじめは農業と酒造りが受け入れられずにいましたが、気づけばその魅力にどっぷり漬かっていました。農業は一人で事を進めることができますが、酒造りはそうはいきません。私と一緒に酒造りに臨んでくれる蔵人がいてこそできる仕事です。和醸良酒の言葉のもと、共に歩んでくれた蔵人。もろみの中で良いコラボレーションをしてくれた麹と酵母。最大なご加護を与え続けてくださった酒の神様『松尾様』。おかげで大過なく務めさせていただきました。感謝の念でいっぱいです。 杜氏 石沢繁昌」
瓶の裏ラベルのスペック表示は「使用米 山田錦20%(麹米)美山錦80%(掛米)、使用酵母 秋田流花酵母(AK-1)、原材料名 米(国産)米こうじ(国産米)、アルコール分17度、精米歩合50%、製造年月25.10」。
酒名「秀よし」の由来について、「47CLUB」のウェブサイトは、以下のように説明している。
「創業後しばらくは『初嵐』の酒銘を使用していました。この酒が嘉永3年に秋田藩の御用銘酒になり、その前の御用酒『清正』をしのぐ酒であることから藩主佐竹候より『秀よし』と命名されました。
秀よしの名前の由来は『他のものより秀でて良し』ということから秀よしという名前を用いています。300有余年伝来の酒造心得があればこその酒の味と言えるでしょう」
その一方で、「秀よし」という酒名は、加藤清正の主である豊臣秀吉に由来するという説もある。「清正」より上の「秀吉」とは、いかにも、である。