ドローン操縦で重労働解消

 地域交通を支える相互タクシー株式会社(和歌山市松島)が空からの農業支援に乗り出した。昨年、「ドローン事業部」を発足。1年間の市場調査と試験的な農薬散布を経て、今年4月からの本格運用を目指している。

 背景にあるのは、コロナ禍でタクシー業界が影響を受ける中、あらわになった単一事業の危うさだ。新たな柱を模索する過程でヒントとなったのが、乗務員の傍ら農業を営む山口郁雄課長の経験だった。「炎天下、防護服と背負い式ポンプで行う田んぼの農薬散布は本当に過酷で。何とかならないかと思案した末に行き着いたのがドローンでした」。この発想に同僚の小坂亮輔課長が共感。二人で社内提案を繰り返し、実現にこぎつけた。

山口課長㊧と、試験散布にあたる野々村達也係長。 機体はプロペラを広げると約2㍍50㌢もある

 特徴は、タクシー乗務員がドローン操縦士を兼務する点。15人が操縦士の国家資格を取得しており、複数のチームを編成することで繁忙期のスケジュール調整や、天候に左右されやすい現場からの「明日来てほしい」といった急な要請にも柔軟に対応できる。

 ドローン導入による省力化は劇的だ。同社では20㍑積載可能な大型機体を使用した高濃度散布を行うが、1時間以上かけていた作業がわずか5〜10分で完了する。実際に散布を見た農家からは「もう終わったのか」と驚きの声が上がっているという。さらに、マルチスペクトルカメラによる圃場分析も導入し、生育状況をデータ化する「精密農業」も視野に入れる。山口課長は「重労働からの解放は高齢化が進む農家にとって切実な願い」と思いを強くする。

 小坂課長は「乗務員の活躍の場を広げ、待遇改善を図ることが第一。将来は耕作放棄地を借り受け、自社でスマート農業の実証も行いたい」と構想しており、地域農業の守り手としての役割が期待される。

 1反(10㌃)あたり5000円〜。傾斜地の果樹への散布も受け付ける。同社(073・494・3039)。

(ニュース和歌山/2026年2月21日更新)