2026
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2026年2月9日、欧州連合(EU)欧州委員会は、米IT大手メタが通信アプリ「ワッツアップ」を巡りEU競争法に違反したとの暫定的見解を公表した。他社AIの排除が問題視され、緊急的な開放措置を求める方針が示されている。

目次

ワッツアップ巡り他社AI排除と指摘

欧州委員会は、メタがワッツアップの法人向け機能に新たな指針を導入し、チャットGPTなど他社の対話型生成AIへのアクセスを制限した点を問題視した。
これにより、競合事業者が市場から締め出されるおそれがあると判断している。

同委員会は、この行為がEU競争法(※)に抵触する可能性が高いとし、「深刻かつ取り返しがつかない損害のリスクがある」と明示した。緊急的な保護が必要であるとして、暫定措置により他社サービスへの開放を求める意向を示している。

ワッツアップは、欧州域内で企業と顧客を結ぶ重要な接点として広く活用されてきた経緯がある。そうした基盤上で特定のAIのみを優遇すれば、市場競争の公正性が損なわれかねないとの見方だ。

一方、メタは自社開発の対話型生成AI「メタAI」をワッツアップ内で利用することを推奨している。広報担当者は、競合AIもアプリストアやウェブ経由で利用可能だとして、EUが介入する理由はないと反論した。

※EU競争法:欧州連合域内での公正な競争を確保するための法体系。市場支配的地位の乱用や企業間の不当な取引制限を禁じ、日本の独占禁止法に相当する。

競争政策とAI革新のせめぎ合い 市場と利用者に及ぶ影響

今回のEUの判断は、生成AI市場における競争条件の公平性を改めて浮き彫りにしたと言える。巨大プラットフォームが自社AIを優先する構造が是正されれば、技術力や独自性で勝負する中小事業者にも参入余地が広がるだろう。
結果として、企業利用者が用途に応じてAIを選択できる環境が整う可能性がある。

一方で、プラットフォーム側は法令順守を最優先せざるを得ず、新機能の実装や改善に慎重になる局面が増えると考えられる。生成AIの進化が速い分野だけに、調整負担の増大は競争力低下につながりかねない。

また、企業ユーザーにとっては運用面での複雑化も想定される。複数のAIサービスが同一アプリ内で並立すれば、選定や管理の負担が増す可能性がある。
特に中小企業では、最適なAI活用戦略を描く難易度が高まる点に注意が必要だ。

それでも、長期的には透明性の高い競争環境が市場の健全性を支えるとみられる。
AIとプラットフォームの結び付きが強まる中で、どこまでを許容し、どこからを制限するのかが今後の焦点になるだろう。

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