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2026.02.06


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ECB・BOEの金融政策決定
~様子見継続のECB、3月利下げに傾くBOE~



田中 理



要旨

ECBは2月の理事会で政策金利を据え置き。「データに基づいて理事会毎に判断する」との政策指針を維持、景気のリスク判断も「概ねバランスしている」と説明し、様子見姿勢を継続した。足元の物価下振れは一時的なものとし、景気回復に自信を深めている。利上げ開始・利下げ再開ともに政策変更のハードルは高く、当面は様子見姿勢を続ける公算が大きい。2027年央の利上げ開始を予想する。

政府予算の発表を待って、12月に利下げを再開したBOEは、2月の金融政策委員会で利下げを見送った。ただ、金利据え置きの投票は5対4の僅差で、キャスティングボートを握るベイリー総裁は、データが裏付ければ3月の利下げを検討する意向を示唆。利下げのハードルとなっていたインフレ高止まりにも沈静化の兆しが広がっている。中立金利とみられる3%前後に向けて、四半期に1回ペースの利下げを続けると予想する。


欧州中央銀行(ECB)は2月の理事会で、下限の政策金利(預金ファシリティ金利)を2%に据え置くとともに、先行きの政策指針を示すフォワード・ガイダンスを「事前に特定の政策金利パスを想定せず、データに基づいて理事会毎に適切な金融政策スタンスを決定する」との従来の文言を維持し、景気のリスク判断についても、上振れ・下振れのリスクが「概ねバランスしている」と説明し、昨年6月の利下げ後に続ける様子見姿勢を継続した。

景気動向については、グリーンランド問題を巡る米国による関税引き上げ方針はすぐさま撤回されたが、外部環境の不確実性の高さを改めて露呈した。他方で、労働環境の底堅さやAIによる投資拡大を強調しており、全体としては景気回復の持続性に自信を深めつつある様子が窺える。ユーロ高進行についてもやや警戒を滲ませつつも、昨年1~3月期以来のユーロ高進行は既に我々の経済見通しに反映されていると説明した。

1月のユーロ圏の消費者物価が前年比+1.7%と前月の同+2.0%から上昇率が大きく鈍化し、ECBが中期的な物価安定と定義する2%を下回ったが、これは特殊要因や前年比でみたエネルギー価格のベース効果によるもので、ECBのスタッフ見通しとも整合的で、単月のデータに基づいて政策を判断しないと説明した。

こうしたECBの景気・物価認識と政策方針を考えると、利上げ開始・利下げ再開ともに政策変更のハードルは高く、当面は様子見姿勢を続ける公算が大きい。次の一手が利上げに傾くには、防衛費を中心とした財政出動の効果がECBの想定を上回る場合や、エネルギー価格の高止まりが解消されるなど、競争力回復への取り組みが予想以上に早く進む場合などが考えられよう。逆に利下げ再開に傾くには、更なる急激なユーロ高進行、物価の持続的な下振れ、現在想定していない景気・物価の下振れリスクが考えられよう。筆者は引き続き2027年央の利上げ開始を予想する。

イングランド銀行(BOE)は2月の金融政策委員会(MPC)で、政策金利を3.75%に据え置いた。政府の秋季予算発表を待ったうえで、昨年12月に利下げを再開した直後のため、今回の金利据え置きは市場参加者の事前予想通りの結果となった。声明文の景気・物価判断は、インフレ持続のリスクが引き続き後退している一方、需要減退や労働市場の緩和によるリスクが残存していると指摘。これまで「漸進的な低下経路を継続する可能性が高い」としていたフォワード・ガイダンスは、「政策金利はさらに引き下げられる可能性が高い」に変更された。

今回の金利据え置きの投票は、11月の段階で利下げを支持していたブリーデン副総裁、ラムスデン副総裁、ディングラ外部委員、テイラー外部委員の4名が25bpの追加利下げに投票し、12月に利下げ支持に転向したベイリー総裁が据え置きに投票した結果、5対4の僅差となった。そのベイリー総裁は、追加利下げを判断するには、幾つかの更なる証拠が必要としながらも、データが裏付ければ、次回3月のMPCで利下げを検討する意向を示唆した。利下げ再開を決めた12月にも据え置きを主張した4委員のうち、グリーン外部委員とロンバルデッリ副総裁は利下げを急ぐことによるリスクを強調し、ピル外部委員(チーフ・エコノミスト)も慎重な利下げを主張したが、マン外部委員は適切な利下げ時期が近づいたと発言している。

四半期毎に発表される金融政策レポート(旧物価レポート)の見通しでは、年内に50bpの追加利下げが行われるとの市場想定の下で、消費者物価の上昇率が2027年1~3月期に1.7%まで鈍化し、2027年7~9月期から2028年1~3月期に2%を下回って推移した後、2028年4~6月期以降は2%に収斂すると予想している。従来の物価見通し対比で下方修正しており、利下げ継続のハードルは下がっている。

僅差での金利据え置きとなった今回の投票、キャスティングボートを握るベイリー総裁の発言、物価見通しの引き下げなどから判断して、3月の追加利下げの確度は高まっている。3月19日のMPCの結果発表日までに発表される消費者物価(2月18日に発表、3月は費目バスケットの入れ替えで発表タイミングが間に合わない)や労働関連統計(2月17日に発表、3月はMPCの結果発表の当日で、前日の投票には間に合わない)に注目が集まる。従来、BOEは四半期毎(2・5・8・11月)の金融政策レポートの発表タイミングに合わせて、政策金利を変更してきた。12月の利下げは、政府予算案の発表を待ったことで後ずれしたが、このまま経済見通しの発表と異なるタイミングで利下げ決定を行うかどうかは判断が分かれるところだ。四半期に1回(MPCは1ヶ月半に1回のため、2会合に1回)のペースを維持するのであれば、3月の追加利下げの線が濃厚となる。景気・物価動向を詳細に点検する経済見通しの発表月と合わせたタイミングに戻すのであれば、3月を見送ったうえで5月(今年は4月30日)の追加利下げとなる。何れにせよ、筆者は今後も中立金利とみられる3%前後に向けて、四半期に1回のペースで利下げを続けると予想する。

以上



田中 理