こちらは、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が観測した渦巻銀河「NGC 105」。
うお座の方向、約2億1500万光年先にあります。
画像の左上にある斜めから見た銀河が、まるで大きな渦巻銀河に向かって衝突しつつあるかのように見えます。
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡が観測した渦巻銀河「NGC 105」(Credit: ESA/Hubble & NASA, D. Jones, A. Riess et al.; Acknowledgement: R. Colombari)】
ESA(ヨーロッパ宇宙機関)によると、左上の銀河「LEDA 212515」はNGC 105よりもはるか遠方に存在しており、2つの銀河は実際には互いに遠く離れています。
地球から見たNGC 105とLEDA 212515が偶然同じ方向にあるため、非常に接近しているように見えているのです。
宇宙膨張の謎に挑む「ものさし」として
NGC 105は、天文学において距離測定の「ものさし」として使われる2つの重要な天体・現象である「セファイド変光星」と「Ia型超新星」、その両方のデータが得られた貴重な銀河のひとつです。
セファイド変光星は明るさが変わる周期から、Ia型超新星は爆発のメカニズム(※)にもとづいて、それぞれの真の明るさを知ることができます。真の明るさがわかる天体は、地球から観測した見かけの明るさと比較することで、その天体までの距離を割り出すことができるのです。
※…Ia型超新星は白色矮星を含む連星において、白色矮星に伴星である恒星からガスが流れ込んだり、白色矮星どうしが合体したりすることで、質量が一定の値(太陽の約1.4倍、チャンドラセカール限界と呼ばれる)に達することで起こると考えられています。
このように、宇宙における距離測定の基準となる天体は「標準光源」と呼ばれています。セファイド変光星とIa型超新星のデータが揃っているNGC 105は、2つの異なる測定方法を互いに照らし合わせて、その精度を検証する絶好の機会を与えてくれる銀河のひとつです。
ハッブル宇宙望遠鏡によるNGC 105の観測は、この銀河を含む近傍銀河の精密な距離測定を行うことで、宇宙の膨張速度を表す「ハッブル定数」の導出を試みる研究の一環として実施されたということです。
冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡の「WFC3(広視野カメラ3)」で取得したデータを使って作成されたもので、ESAから2022年1月3日付で公開されました。
本記事は2022年1月4日公開の記事を再構成したものです。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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