次期FRB議長にウォーシュ元理事:識者はこうみる

写真は次期米連邦準備理事会(FRB)議長に指名されたケビン・ウォーシュ元FRB理事。2017年5月、ニューヨークで撮影。REUTERS/Brendan McDermid

[東京 2日 ロイター] – トランプ米大統領は30日、次期連邦準備理事会(FRB)議長にケビン・ウォーシュ元FRB理事(55)を指名すると発表した。トランプ大統領は、政策金利に関する計画についてウォーシュ氏に質問するのは適切ではないとしつつも、「利下げに前向きだと確信している」と述べ、利下げ推進に期待を示した。ただ、政権の圧力でFRBの独立性が揺らぐという懸念も広がる中、就任に必要な上院の承認には曲折も予想される。

市場関係者に見方を聞いた。

◎米金利に上昇圧力、10年債は4.5%目指す展開に

<三井住友銀行 チーフストラテジスト 宇野大介氏>

米連邦準備理事会(FRB)元理事のケビン・ウォーシュ氏が本命視されていたとみており、想定通りの結果となった。同氏は減税などの積極財政について現状のファンダメンタルズでの効果を疑問視しているほか、金融政策では量的緩和に否定的な見解を持っており、タカ派的だ。

米国のトリプル安を回避すべく、米国債全般のコントロールをつかさどる財務長官としては金利を低下させたいものの、結果的に米国離れ・ドル資産売りを招くことになっているトランプ大統領の言動やエネルギー政策の失敗などで、実際には金利低下圧力をかけることは難しい状況だ。次期FRB議長にウォーシュ氏が指名されたことも、金利上昇圧力の要因となる。米長期金利は現行のレンジを切り上げ、4.5%を目指す展開になるとみている。

ただ、過去の要人着任後の事例をみても、ウォーシュ氏が6月にFRB議長に就任した時に自身の見解を変えハト派に転向する可能性がある。5月末までの米金利のトレンド形勢が維持されるかどうかは、新議長になってからの発言次第となるだろう。

◎独立性には依然疑問、ドル円はレンジ回帰

<ステート・ストリート銀行 東京支店長 若林徳広氏>

米国で利下げを続けるのが妥当なのかという議論は残る。市場はパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長に関して、経済指標に基づいて判断していると信頼している。一方、後任に指名されたケビン・ウォーシュ元理事がどう振る舞うか分からないものの、トランプ米大統領の声に耳を傾けることにはなるとみられる。その点はパウエル氏と違い、FRBの独立性に疑問符が付く。ウォーシュ氏がドル高を後押しするとの見方も多く、ドルの買い戻しが進んだが、トランプ氏の利下げ要求にどう応じるかは読めない。同氏の指名でドル買いというのもやや不可解だ。

一方、ドル/円に関しては、いったん下落したところで高市早苗首相の発言が円売りに火をつけたのは残念なタイミング。発言は政権としての政策を反映しているものなのか、本人が口にしてしまっただけなのか分からないが、再びじり高となっている。為替介入への警戒感もあるため、160円は重いと思うが、結局154-156円のレンジに戻ったということかもしれない。

◎資産縮小を強調なら株に逆風、独立性や利下げに期待

<大和証券 チーフストラテジスト 坪井裕豪氏>

ウォーシュ元FRB理事は候補者の中でもタカ派寄りとみられていただけに、短期的には株価にネガティブといえる。過去には米連邦準備理事会(FRB)のバランスシート縮小を主張したこともあり、警戒感はあるだろう。バランスシート縮小なら過剰流動性へのインパクトを通じて株価にネガティブになりかねない。

もっとも、前週末の米国市場での株安はウォーシュ氏の指名だけが要因ではないだろう。米国の利下げペースがほかの候補の織り込みに比べて緩慢になる可能性はあるが、少なくとも同氏はトランプ米大統領の支持を得ているだけに、利下げできないような立場を示すとは想定しにくい。

むしろ中長期的には、市場は落ち着く方向に向かい、ポジティブではないか。30日に伝わったウォーシュ氏の指名報道を受けて金価格が下落したことは、FRBの独立性が保たれるとの思惑が働いたためだろう。金が史上最高値に上昇していた背景には、FRBの独立性が棄損されたり、ドルの信認が低下したりするリスクへのヘッジの動きもあった。

トランプ米大統領がウォーシュ氏の手腕に難色を示し、FRBの独立性が再び危惧される局面が生じないかには、目配りが必要になる。

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