街中を走り回るドライバーたちが運んでいるのは、注文からわずか10分後に配達するという食料品や日用品。EC事業者の巨大倉庫からの配送では間に合わないようなスピードは、インド国内に1500万件あると言われる個人商店「キラナ」が支えている。

「プラットフォーマーは自前の倉庫を持たず、街中のキラナと提携し、その店舗裏のスペースを『ダークストア(配送拠点)』として在庫管理します。注文が入れば店主が数分で梱包し、アプリで呼び出されたドライバーがバイクで運びます」(西山氏)

キラナクイックコマースを支えているのが小さな商店の「キラナ」だ。撮影:松本和大

インドのクイックコマースシステムは、限られたリソースで創意工夫する「ジュガール」という思想が根底にある、と指摘する西山氏。

同氏によれば、クイックコマースは人々のライフスタイルも変えつつあるという。「最近、インドでは冷蔵庫がどんどん小さくなっているんです」と西山氏は言う。

「必要な時にすぐ届くなら、1週間分を買いだめする必要がありません。クイックコマースを前提にしたキッチンや住居のようなものも登場してきています」(西山氏)

なお、この変化には「副作用」もあると西山氏は指摘する。新たな雇用を生んでいる一方で、ドライバーの事故や渋滞も社会問題化しており、配送時間を10分から15分へと緩和する議論もあるという。

無人配送がすでに社会実装されている中国美団ドローンによる配送サービスなどを展開する中国の美団(Meituan)。出典:美団

「中国では、無人配送やドローン配送はすでに実証実験ではなく、実際のサービスとして提供されています」(田中氏)

そう語る田中氏は、中国での具体的な事例を動画と共に紹介した。

画面に映し出されたのは、コーヒーをドローンが運ぶ様子や、オフィスビルのエレベーターに乗った配送ロボットが、上層階までミルクティーを届ける様子だ。

「超高層ビルに勤務するオフィスワーカーにとって、地下の飲食店まで下りることはタイムロスになります。しかし、ロボットがデスクまで届けてくれるから、オフィスで仕事をしながら待てます」(田中氏)

田中氏は、こうした配送サービスについて「普段は下りてこないような高層階の人に対してもアプローチできる」と語り、店舗側のメリットもあると指摘する。

海外の事例から日本が学べること西口氏UC Berkeley Executive Education日本代表の西口尚宏氏。撮影:松本和大

セッションの終盤で、話題は日本の勝ち筋へと移った。

「総合的に見て『どうなるんだろう』と最初から考えて止まってしまうのが日本の特徴の1つ」と西口氏は指摘する。

「(インドや中国は)事故などもありますが、それは『残念だが社会全体が発展するための学びの機会だった』と割り切って次に進もうとする。今の日本と、インド・中国の中間のような着地点が見つかればいいなと思います」(西口氏)

また、西山氏はインドの事例を引き合いに出し、「日本には、『破壊』的なイノベーションよりも、既存のものをうまく活用する『オープンイノベーション』的な考えが馴染むのではないか」と語る。

「インドのクイックコマースは、卵を運んできてくれたドライバーが、クリーニングに出す衣類を回収してくれたりします。空荷の状況を減らすための努力で、『いかに効率化して収益を最大化するか』というようなところはインドからも学べるのでは」(西山氏)

田中氏匠新(ジャンシン)創業者兼CEOの田中年一氏。撮影:松本和大

田中氏は視点を変え、「課題先進国」としての日本の価値を説いた。

「課題先進国と呼ばれる日本は、いろんな課題が先行しています。それをどのように解決するかが、他国にとってもお手本になるところがある。

実際、中国のスタートアップ企業が日本に関心を持つ1つの領域が『高齢者に対するサービス』だったりします。そういった課題先進国ならではの優位性もありそうです」(田中氏)

※Business Insider JapanはTechGALA Japanのメディアスポンサーです。