学生ライター 法学部 3年次 野間 暖可(服部ゼミ)
2025年11月7日、法学部 服部 達也 教授が担当するゼミ(矯正社会学)が公開ゼミを開催しました。公開ゼミには他のゼミ所属の学生や本学教職員に加え外部の関係者も招き、服部ゼミとしては初めての試みとなりました。
前半は中溝観光開発 取締役社長 中溝 茂寿さんによる特別講義、後半は京都府北警察署との連携・協同状況の説明を含む服部ゼミの取り組みの紹介と、服部ゼミ3年次 細間 凜音さんによるナミビアでの国連ボランティア活動について発表が行われました。
以下、それぞれの発表内容を紹介していきたいと思います。

株式会社カオサポート博多の代表取締役でもある中溝さんは、元暴力団員であった過去と複数回の服役経験を持ち、現在は刑務所出所者の就労支援をはじめ社会復帰支援に取り組まれています。
活動の一つとして、社会復帰応援求人誌『REBORN』の発行があります。印刷は刑務所の刑務作業として行われ、社会貢献となるだけでなく、実際に作業に携わる受刑者の目に触れやすいという狙いがあります。加えて住宅支援や全国の刑務所との意見交換など、支援の幅は多岐に渡ります。
現在は法務省就労支援アドバイザーとして制度の拡大に取り組むほか、全国暴力追放運動推進センターでは、暴力団からの離脱を希望する組員への支援を警察と協力して行っています。「本当にやる気のある支援者はお金じゃない、ここだ」と胸に左拳をあてながら熱く語られました。
中溝観光開発 取締役社長 中溝 茂寿さんの特別講義
次に服部ゼミの活動紹介では、3年次 村山 凛さんが、ゲストスピーカーとの討議をはじめフィールド・リサーチや班別研究発表会などを紹介しました。
村山 凛さんの発表の様子
また北警察署 副署長の上田 幸則さんからは、自身の経験を踏まえ「社会情勢を正しく伝え訴えることも、警察官の重要な役割である」と服部ゼミの学びとも重ねつつ話をされました。さらに地域の方に本学をより身近に感じてもらうための交流イベント「サタデージャンボリー」への参加や、模擬面接の実施など、北警察署と本学および服部ゼミとの関わりについても説明されました。
お話される北警察署 副署長 上田 幸則さん

後半は、3年次 細間 凜音さんがアフリカ南西部に位置するナミビアでの国連ボランティア活動に参加したことについて、「私のナミビア体験記~ヒトと動物が共に生きる社会を目指して~」と銘打ち発表しました。
細間さんが参加した『Naankuse財団』は私営の野生動物保護団体で、野生動物の保護と、人間と野生動物の衝突の撲滅を目的に活動しています。細間さんは現地の強い日差しの中、広大な敷地を屋根のないサファリカーで巡回し、動物たちの生息環境を守る、回復を支える、居場所をつくる、共生をつなぐ、といった保護活動に取り組みました。
発表では、角を狙った密猟の多いシロサイに焦点を当て、保護活動について詳しく紹介しました。サイの角は伝統茶や富の象徴として需要が高く、角1本が約2000万円で闇取引きされる場合もあります。また一攫千金を狙った密猟だけでなく、貧困や飢餓などから密猟をするケースも少なくないため、人間社会の問題も背景にあるとのことでした。
活動に参加する前は「動物を助けること」が目的だったと話す細間さんですが、実際には動物から学ぶことの方が多かったといいます。「動物は『守られる存在』ではなく、ヒトと同じ世界を生きる存在であり、密猟の背景には単なる金銭目的ではなく、生きるためにその選択をせざるを得ない事情があることを知った」と語りました。また細間さんは「今回の発表を通して、一人でも野生動物の現状や課題、ヒトとの共存について考えるきっかけを持ってもらえれば」と呼びかけました。
細間 凜音さん(国連ボランティア活動について発表の様子)
以下は細間さん自身の今回のボランティア活動参加に関する所感です。
「この夏、私は動物が好きだという素朴な思いと小さな好奇心から、ナミビアでの野生動物保護ボランティアに参加しました。日本で生活していると、アフリカで生きる野生動物が直面する問題について考える機会は決して多くありません。しかし現地での活動を通じ、野生動物が抱える多くの課題は人間社会との軋轢から生じており、その背景には貧困や飢餓、国家基盤の未整備といった深刻な社会問題があることを知りました。人間側の問題が結果として動物を苦しめている現実に触れ、人間として申し訳ない気持ちを抱いたことを今でもはっきりと覚えています。
その一方で、人間と野生動物が共に生きる持続可能な社会は、十分に実現可能であるとも感じました。ただし動物そのものを守るだけでなく、長期的な視点に立ち、共存の基盤を社会全体で継続的に支えていく必要性を強く実感しました。
今回、服部先生より帰国報告の機会をいただき、公開ゼミにおいて活動内容をはじめ、現地の状況や野生動物保護の重要性についてお話ししました。小さな場であっても、この経験を共有することは、現地で学んだ者としての責務だと考えています。本発表が誰かの心を動かし、関心が広がるきっかけとなれば幸いです」
細間 凜音さん(ナミビアでの活動の様子)
最後に、細間さんの発表について服部教授は「一見すると服部ゼミのテーマとは離れているように見えるが、密猟の背景にある要因に目を向けることや、生活に困窮する人々への社会的支援の必要性といった視点を含め、ゼミの学びともつながる部分があった」と話し、公開ゼミは終了しました。
刑務所出所者の社会復帰支援、地域警察との連携、そして国際的な野生動物保護活動と、分野の異なる取り組みを取り上げた公開ゼミとなりました。いずれの発表にも共通していたのは「問題の表面だけを見るのではなく、その背景にある社会的要因や人々の置かれた状況に目を向ける姿勢」でした。どの問題も「自分に直接関係なければよい」として片付けるのではなく、社会全体で考え支えていく必要があることの重要性を改めて感じました。
