心地よい暮らしをするにはどうすればよいのか。Ritaさんは「日本にいる時は『便利=豊か』だと思っていた。けれど、スペインに暮らすようになり、不便さの中にこそ、『心を整えるゆとり』があると知った」という――。

※本稿は、Rita『自由で、明るく笑って過ごす スペイン流 贅沢な暮らし』(大和出版)の一部を再編集したものです。

コンビニがなくてスーパーも早く閉まるスペイン

スペインには、日本のようなコンビニはありません。スーパーも21時頃には閉まるところが多く、日曜日にはすべてシャッターを下ろし、街中がひっそりと静まり返る時間が流れます。地域によっては毎日、シエスタの時間である午後2時から5時頃まで、商店がピタッと閉まってしまいます。

最初は「えっ、今? なぜこのタイミングで?」と困惑しました。

でも、この「不便さ」が、実は最高の贅沢にも感じるようになりました。

何も買えない日曜日は、それなら公園に!

遊歩道の終点まで! 今しか行けない展示会に!

と、自分と向き合うような時間を過ごすことが増えました。

慌ただしい日々では後回しになっていた「自分自身」に、そっと耳を傾ける時間。

忙しさという「ノイズ」がないぶん、心の中の「本当はどうしたい?」が、少しずつ聞こえるようになってきたのです。

ガラス貼りのビルの通路

「何もしない」という選択

ある日、ふとした瞬間に考えました。

「何もしない時間が、どうしてこんなに心地いいんだろう?」と。

日本では、時間が空けば「何かしなきゃ」「どこかに行かなきゃ」と思っていました。「駅に近いこと」「職場に近いこと」「深夜でも買い物ができること」……。そんな「便利さ」が暮らしの正解だと思い込んでいました。

でも、スペインでは「何もしない」という選択が、ちゃんと許されているような気がするのです。「便利さ=豊かさ」ではない。

むしろ、不便さの中にこそ、「心を整えるゆとり」があったのです。

朝、パン屋の焼きたての香ばしい匂いを感じ、カウンターで新聞を読みながら1杯のカフェを楽しむおじいさんの横顔を見て、自転車に乗った子どもたちが、広場でじゃれ合う声を聞く……。

どれも、特別なことではないけれど、なぜかホッとする光景ばかりです。

そんな「暮らしの風景」に触れるたび、こう思うようになりました。

人は高い場所を目指すことや、たくさんのものを手に入れることよりも、ただ、「朝をゆっくり迎えられる」「空がきれいだと感じられる」「焼きたてのパンに笑顔になれる」といったように、自分の五感や心が反応していることこそが、本当の意味での「豊かさ」なのかもしれない、と。

もちろん、すべてが完璧に整っているわけではありません。

予定通りにものごとが進まないような、不便なことはいくらでもあるし、むしろ思い通りにいかないことのほうが多いのが、海外での暮らしです。

でも、その「不便さ」が、かえって暮らしを丁寧にしてくれました。

諦めではなく、肩の力が抜け、完璧を求めず、自分に優しくなれたと感じます。

コンビニがなくても、電波が飛んでいなくても、その不自由さの中に、自分を取り戻すヒントがたくさん隠れているのです。

その余白が今の私にとって、一番のご褒美なのかもしれません。