アジア有数の民主主義体制を確立し、半導体などのハイテク製品輸出で豊かになった台湾は、長年にわたり米中関係で最も不安定な問題となっている。
高市早苗首相は10日の衆院予算委員会で、台湾有事が日本の集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」になり得るとした7日の答弁について、撤回しない考えを示した。
米国は台湾の防衛力強化を支援しており、バイデン前政権は中国による侵攻があった場合、台湾を防衛する姿勢を明確にした。
一方、中国は台湾周辺での軍事演習を強化。中国共産党の習近平総書記(国家主席)は「祖国統一」を誓い、必要なら武力行使も辞さないとしている。
政権2期目のトランプ米大統領は、同盟国をしばしば不安にさせるディール(取引)重視の外交姿勢を示すようになった。これにより、米国の台湾支援がもはや確実ではないとの見方も出ている。
トランプ氏は今年2月、米国が武力による台湾併合を阻止する方針を維持しているかどうかについて明言を避けた。同氏は最近になって、中国人民解放軍が台湾侵攻を試みた場合、習氏は「何が起きるかを理解している」と発言した。

高層ビル「台北101」から臨む台北
Photographer: Betsy Joles/Bloomberg
台湾は長きにわたり、列強が領土確保を競い合う舞台となってきた。スペインとオランダ、そして中国の清朝が支配した時代もあった。
日清戦争に敗れた清朝は1895年、台湾を日本に割譲。1949年に成立した中華人民共和国は、祖国統一を人民のスローガンとして掲げるようになった。
中国共産党が台湾を統治したことはない。だが、列強に翻弄された「屈辱の世紀」を終わらせるという国家目標を完遂するために、台湾の支配を不可欠と見なしている。習氏は、南シナ海やヒマラヤ山脈の一部、香港などで、こうした主権の主張を強硬に打ち出してきた。
日本と米国にとって、台湾は中国の影響力拡大を抑え、通商ルートを確保するための海上防衛ラインにおいて極めて重要だ。
米国の保護下で台湾は繁栄し、半導体などハイテク製品の世界的供給国となった。
人口約2350万人の台湾は、アジア有数の活気ある民主主義を達成。西側の政治制度は中国文化にそぐわないとする共産党の主張に対する反証ともなっている。
「台湾問題」の発端
いわゆる「台湾問題」の発端は1949年だ。1912年の清朝崩壊後に中国を統治していた蒋介石氏率いる国民党が「国共内戦」で毛沢東氏の中国共産党に敗れ、1949年に本土を離れて台湾に撤退した。

米国は当初、蒋氏を中国の正統な指導者として支持していたが、1970年代にニクソン大統領(当時)が訪中し、中国との国交樹立を模索したことで状況が変化した。
その結果、「一つの中国政策」が生まれ、米政府は中華人民共和国を「中国唯一の合法政府」と認めた。ただし、台湾の主権に関する立場は明確にしなかった。
中国側は、一定の条件下での米国と台湾の非公式な関係や米国による台湾への武器供与を容認する一方、台湾が正式に独立を宣言すれば武力行使の権利を保持すると明言している。
台湾の世論調査では、台湾独立を支持する住民の割合が着実に増加していることが示されている。2025年6月の調査によると、全体の約4分の1が即時または将来的な独立に賛成し、中国との統一を望む人は7%未満にとどまった。
台湾を巡る緊張が最近高まっている理由
1949年から1980年代後半までの間、中国と台湾の関係は軍事的な敵対と限定的な接触、そして双方が中国唯一の合法政府であると主張する構造によって特徴付けられていた。
その後の数十年間で、敵対関係は徐々に緩和し、慎重ながらも交流が始まり、貿易や投資も拡大した。経済協力を重視する政権下で、緊張と融和の時期が交互に訪れた。
しかし、2016年の台湾総統選で、民主進歩党(民進党)の蔡英文氏が当選すると、中国はそれまで進めてきた経済・社会的な関係深化の試みを大きく覆した。
民進党は台湾が中国の一部であるという考え方を否定し、中国本土への依存を減らすため米国との関係強化を図った。
中国は台湾の選挙結果を受け、中台対話を打ち切り、中国本土と台湾の往来を制限。さらに台湾と外交関係を持つ国々を取り込む工作を再開し、多国籍企業に対しても台湾を国として扱わないよう方針変更を迫った。
2024年の台湾総統選も、蔡政権の副総統だった頼清徳氏が制した。頼氏はかつて自らを「台湾独立のための政治工作者」と表現していたが、その後は姿勢を和らげている。
頼氏は、現状維持を図るため、米国や他の民主主義国家との協力を続けると表明し、中国の圧力にも立ち向かう意向を示している。中国は頼氏への強い不信から、かつてない圧力を加えている。
頼政権が発足した昨年、中国人民解放軍は台湾周辺で3回の大規模軍事演習を実施し、歴代台湾総統の任期中で最多となった。
さらに、中国軍は台湾海峡の中間線(米国が設定した事実上の境界線)を越える軍用機の侵入を大幅に増加させた。頼氏就任初年のこうした侵入行為の1日平均件数は、前年の2倍以上に達した。
台湾国防部(国防省)は昨年10月中旬、約1日当たりで過去最多となる中国軍機111機が台湾海峡の中間線を越え侵入したと発表した。中国はこの時期、台湾周辺で大規模軍事演習を行っていた。

台北の夜市
Photographer: Lam Yik Fei/Bloomberg
中国当局は米国側との会合で、台湾海峡は「国際水域」に該当しないと主張。これにより中国が今後、米海軍による台湾海峡の航行をより強く抑止しようとするのではないかとの懸念が高まっている。
中国は台湾を支持した元米議員に制裁を科したほか、台湾に関係や投資を持つ米国の防関連企業にも象徴的な制裁措置を実施した。
米台関係の変化
トランプ政権1期目には、米国と台湾の関係が急激に深まった。トランプ氏は台湾との武器取引186億5000万ドル(現在の為替レートで約2兆8700億円)を監督し、約30年ぶりとなる米国製戦闘機の台湾への売却を承認した。さらに、米政府高官による台湾訪問を認める法にも署名した。
その後のバイデン政権も、この関係拡大路線をおおむね継承した。
バイデン氏は、中国による侵攻があった場合に米国が台湾を防衛すると繰り返し明言した。米国が長年採用してきた「戦略的曖昧性」、つまり中国への抑止を狙って米国の対応をあえて不明確にしてきた方針から大きく転換した。
トランプ氏の台湾政策
一方、政権2期目のトランプ氏は、台湾防衛に対する米国の関与に疑問を投げかけている。トランプ氏は今年2月27日に記者団から質問を受けた際、中国による台湾支配を武力で阻止することが自身の政権の方針かどうか明言を避けた。
昨年の大統領選中には、台湾は「われわれに防衛費を支払うべきだ」とも述べていた。
今年7月には、頼氏が中南米の友好国訪問を中止したとみられる出来事があった。トランプ政権がニューヨークでの乗り継ぎを認めなかったことが背景にあるとされ、米台関係の先行きへの不安が広がった。
さらにトランプ氏は、台湾からの輸入品に対して20%の上乗せ関税を課すと発表。日本や韓国といったアジアの輸出国が、台湾より低い税率の適用を受けたことから、この決定は台湾経済および頼政権にとって打撃となった。
また、特定の輸入品が米国の国家安全保障を脅かしているかを調査する米通商当局による審査の行方次第では、これまで関税の適用を免れてきた台湾のハイテク輸出にも影響が及ぶ可能性がある。

台湾の離島・金門島の海岸に設置された上陸阻止用障害物の向こうに見える台湾海峡を隔てた対岸に位置するアモイのビル群
Photographer: An Rong Xu/Bloomberg
米紙ワシントン・ポストは9月、トランプ氏が中国との通商合意を優先する中で、4億ドル超の台湾向け軍事支援パッケージの承認を見送ったと報道。米政権が中国との関係改善を優先し、台湾の利益を犠牲にする可能性があるとの懸念が、台湾および米国内の台湾支援者の間で高まった。
中国政府は同月、この機を利用しようとした兆候として、トランプ政権に対し台湾独立を公式に「反対」するよう求めたと、事情に詳しい関係者が明らかにした。
これは、バイデン政権時の米政府は台湾による正式な独立を「支持しない」との言葉よりも強い表現だ。トランプ氏がこの要請を受け入れれば、中国にとって外交上の大きな勝利となる。国際社会で台湾を孤立させる動きが加速することになる。
現時点でトランプ氏はこの件に関する決定を発表していない。
その後、トランプ、習両氏は韓国での米中首脳会談で通商休戦に合意した。しかし、中国は11月初旬、関係安定を維持するため、米国に対し干渉を控えるべき「4つのレッドライン」を越えないよう求めた。その中には台湾問題も含まれていた。
トランプ氏の台湾への姿勢は、いまだ不透明なままだ。同氏は2日放送の米CBS番組「60ミニッツ」のインタビューで、中国人民解放軍が台湾への侵攻を試みた場合、習氏は「何が起こるかを理解している」と語った。
トランプ氏によると、同氏が米国の大統領である間は台湾に対し決して行動を起こさないと習氏を含む中国高官が首脳会談で伝えてきたという。中国側が「結果を承知しているからだ」とトランプ氏は説明した。

原題:How the US Fits Into China-Taiwan Tensions: QuickTake (抜粋)
