ドイツのシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州が、州政府のメールシステムとカレンダーシステムをオープンソースソフトウェアに切り替えた。「Microsoft Exchange」と「Outlook」から「Open-Xchange」とMozillaの「Thunderbird」への6カ月にわたる移行だった。対象となったのは、4万以上のメールボックス、1億件以上のメッセージとカレンダーの予定だ。
デジタル化担当相のDirk Schrodter氏は次のように宣言した。「任務完了だ。州首相府や省庁から、司法機関、警察、その他の州機関まで、約3万人の職員が新たな道を共に歩み始めた。巨大テック企業への依存から脱却し、デジタル主権を確立したい。メールでのコミュニケーションに関しても、任務完了と言えるようになった」
Schrodter氏は、移行の実現に尽力した職員を称賛した。「過去数週間、数カ月で、こうした移行が決して容易ではないことが分かった。われわれは真のパイオニアだ。世界を見回しても、これほど大規模なプロジェクトはほとんどない。全職員に心から感謝したい。職員の協力なくして今回の移行は実現しなかっただろう」
オープンソースのメールへの移行は、長年の計画期間を経て実施された。シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州は、Nextcloudなどのオープンソースベンダーと協力して、あらゆるプロプライエタリーシステムをオープンソースソフトウェアに切り替えている。例えば2024年には、「Microsoft Office」に代わるデフォルトのオフィススイートとして、「LibreOffice」の導入を開始した。
同州の経験が、オープンテクノロジーへの移行を目指す他の行政機関の模範になる、とSchrodter氏は語る。「データ分析やデータセンターの監視などに関する知識を生かして、同じ道を歩む他の行政機関を支援できる」
欧州連合(EU)では、他にも多くの政府機関がすでにMicrosoft製ソフトウェアの使用を終了している。例えば、オーストリア軍、デンマークの政府機関、フランスのリヨン市などだ。その背景には、EUの多くの政府機関が米国のソフトウェア企業に依存する状況に嫌気がさしていることがある。
シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州政府は、2025年4月の政策声明「Open Innovation and Open Source Strategy: Schleswig-Holstein」の中で、今後の展望を次のように語っている。「州が使用するITシステムを州がコントロールし、市民や企業のデータを引き続き主体的に管理していくためには、1つの独占的な組織への経済面と技術面での依存を避けることが、これまで以上に重要になる。したがって、現在の依存を低減し、デジタル主権への道を歩むことが不可欠だ」
同州はオープンソースソフトウェア(OSS)が解決策だと考えており、その理由を次のように説明している。「既存システムに代わる選択肢であると同時に、将来の変化の多くにも対応できる。そのため、OSSは主権を獲得するための最も重要なツールの1つだ」
デジタル主権は、米国ではあまり聞かない言葉だが、欧州や他の国々では重視されている。「プロプライエタリーソフトウェアは悪質で高価、オープンソースソフトウェアは安価で良質」という単純な話ではない。デジタル主権は重大な政治問題となっている。
欧州の政府、企業、個人は、米国に拠点を置く企業やクラウドサービスに不安を抱いており、必要なときに利用できないのではないか、データを安全に保管していないのではないか、と信用できずにいる。ドイツのデジタル大臣であるKarsten Wildberger氏は、ドイツとEUが顧客としてではなく、「プレーヤーとしてこの(分野)に積極的に参加する」必要があると述べた。
デジタル主権への関心の高まりは、新しいトレンドではない。フランスのEmmanuel Macron大統領は2020年、「全ての分野、全てのイノベーションにおいて、今われわれに必要なのは、欧州のソリューションと欧州の主権だ」と述べた。Macron大統領はデジタル主権を政策の中心的な課題に据えている。
今後、欧州では、さらに多くの政府、企業、個人が「Windows」から「Linux」とオープンソースソフトウェアに移行するだろう。これはオープンソースファンの希望的観測ではない。オフィスソフトウェアに対する見方と利用方法が根本的に変化しているのだ。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。
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