睡眠不足と仕事の影響
日本人の睡眠時間は先進国の中で最低ランク。仕事の成果を出せていないどころか、パフォーマンスは低下の一途を辿っています。
今回は、東京大学大学院 理学系研究科睡眠生理学研究室の林悠教授の監修書『ぐっすり眠り、スッキリ目覚める! 明日が変わる 睡眠の科学大全』(ナツメ社)を一部抜粋してご紹介いたします。
なぜ私たちは睡眠を削ってしまうのか、そしてこの「寝かせない社会」の中で、いかにして休養を取るべきなのでしょうか?
短時間睡眠が続くと、飲酒時並みのパフォーマンスに!
寝る間を惜しんで働くほど、非効率なことはない
日本人の平均睡眠時間は7時間22分。世界標準より1時間ほど足りない計算です。しかも40代以上の睡眠時間は、いまも減少傾向です(厚生労働省、2023)。
では、睡眠を削ったぶんだけ、仕事の成果を出せているでしょうか? 残念ながら、日本人の生産性はOECD加盟国中最下位。国の政策、企業経営の問題を差し引いても、働きかたと休養のとりかたには問題がありそうです。
睡眠時間を削るほど、仕事のパフォーマンスも落ちることは、世界の睡眠研究からもあきらかです。「6時間寝ていれば何とかなる」と思う人もいるでしょうが、8時間睡眠と比べると、比較にならないパフォーマンスの低下ぶり。この状態が続けば、3日間の徹夜後と同じレベルに。飲酒時並みに頭が回っていない状態です。
5~6時間寝ていても、パフォーマンスは落ちている
1、2時間の睡眠不足も、毎日続くと、徹夜明け並みの疲労度になってしまう。

注意力や反応を見る課題(PVT)でのミスの数を調べた実験。4時間はもちろん、6時間睡眠でもミスが多発。

注意力が命に直結する、トラック運転手での実験。3時間睡眠が続くと、1週間で、徹夜後と同レベルの注意力に。

無意識のうちに、小さな居眠りをしてしまう
「私は5、6時間睡眠でも平気」という場合、考えられる可能性は2つあります。1つめは、遺伝子的にショートスリーパーであること。最適な睡眠時間には個人差があり、短時間で平気な人もいます。ただし該するのは人口の1%未満で、可能性は限定的です。
もう1つの可能性は、寝不足への慣れ。寝不足が続くとパフォーマンスは落ちる一方ですが、眠気は一定程度で止まるため、問題を自覚しにくいのです。睡眠不足の人は、10~15秒ほどの無意識の居眠り「マイクロスリープ」をくり返していることもわかっています。車や飛行機の交通事故でも報告される現象で、いつかは致命的なミスを引き起こすおそれもあります。
「私、大丈夫です」は、ぜんぜん大丈夫じゃない
パフォーマンスの低下は眠気に比例しない。部下の言葉なども真に受けないこと!

短時間睡眠にもやがて慣れ、14日目には「わずかな眠気しか感じない」と回答。

実験1と同じ課題を毎日実施した結果、ミスの数は増え、パフォーマンスの直線的な低下を認めた。
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眠りが1時間でも足りないと、「睡眠負債」がたまる
