逃げ切りが濃厚と見られたツール・ド・フランス第15ステージで、ティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツXRG)が43.6kmに及ぶ圧巻の独走勝利。チームメイトの勝利で2週目を締めくくったポガチャルは、総合2位ヴィンゲゴーに4分13秒のリードを保ち、勝負の3週目に臨む。
一際大きな声援を受けるヴォークラン photo:A.S.O.前日勝者のアレンスマンが集団先頭に並ぶ photo:A.S.O.

エアロヘルメットを着用し、勝利への意思を表したワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos
7月20日(日)第15ステージ
ミュレ〜カルカッソンヌ(丘陵)
距離:169.3km
獲得標高差:2,400m
気温:27度

第15ステージ ミュレ〜カルカッソンヌ image:A.S.O.
ピレネー山脈を後にした一行は、ミュレから東のカルカソンヌを目指す。ツール・ド・フランス第2週の最終日は、中盤に3つのカテゴリー山岳が設定された、獲得標高差2,400mの丘陵ステージ。近年のカルカソンヌ・フィニッシュは集団スプリントが定番だったが、今年は逃げ切り向きのレイアウトが採用された。

今大会を象徴する混沌とした展開は、この日もスタート直後から始まった。激しいアタック合戦の中からニールソン・パウレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)が単独で飛び出す一方、メイン集団では道幅の狭い直線区間で落車が発生。ジュリアン・アラフィリップ(フランス、チューダー・プロサイクリング)やマイヨブラン(ヤングライダー賞ジャージ)を着るフロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)などが巻き込まれたが、幸いリタイア者なくレースは続行された。

序盤に単独先頭に立ったニールソン・パウレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:A.S.O.
落車で肩を痛めたジュリアン・アラフィリップ(フランス、チューダー・プロサイクリング) photo:A.S.O.
この落車により一時、総合2位ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)がタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)から遅れたものの、ポガチャルがこの好機を見送ったため、集団は再び一つに戻る。先頭ではパウレスが吸収され、代わってマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)らがアタックを仕掛ける。目まぐるしく変わる風向きと激しい展開も相まって、最初の50kmは平均時速50.6km/hというハイスピードで進んだ。

残り109.5kmの中間スプリントをファンデルプールが先頭で通過する頃、強力な15名の逃げ集団が形成される。その中には、ヴィスマ・リースアバイクからワウト・ファンアールトとヴィクトル・カンペナールツ(共にベルギー)が入り、対するUAEチームエミレーツXRGはティム・ウェレンス(ベルギー)が乗る。さらにアルペシン・ドゥクーニンクはファンデルプールとカーデン・グローブス(オーストラリア)と、各チームが力のある選手を送り込んだ。

中間スプリントを前に形成されたマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)ら15名による逃げ集団 photo:CorVos
しかし、この日最初の3級山岳でレースは再び動く。マイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダー・プロサイクリング)やクイン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック)らが逃げ集団に合流すると、続く3級山岳で先頭は8名にまで絞られる。ファンデルプールやファンアールトはこのペースアップに対応できず、シモンズやパウレス、マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)といったパンチャー系の精鋭たちが残った。この時点でメイン集団をコントロールするUAEチームエミレーツXRGがペースを緩めたため、逃げ切り勝利は濃厚となった。

そして勝負が動いたのは、残り55.6kmから始まる最終の2級山岳(距離2.9km/平均10.2%)だった。今大会5度目の逃げに乗ったストーラーが加速すると、シモンズがこれをマーク。そこに淡々と踏み続けたカンペナールツとウェレンスが合流。ストーラーが頂上を先頭通過した4名集団に、ワレン・バルギル(フランス、ピクニック・ポストNL)やカルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)も追いつき、ここからウェレンスが勝負を決する走りを見せた。

レース先頭はマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)らパンチャー系の選手たちに絞られた photo:A.S.O.
残り43.6km地点で仕掛け、単独先頭に立ったティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.
2級山岳の頂上を越えても続く約8kmの登り区間でアタックしたウェレンスは、単独で34kmに渡る長い下り坂へと突入。一方、カンペナールツを中心とする追走集団は協調が乱れ、当初10秒ほどだったタイム差は30秒、1分と瞬く間に開いていく。後にメイン集団から飛び出したアラフィリップらが追走に加わったが、人数が増えてもウェレンスとの差は最後まで縮まらなかった。

今年6月29日のベルギー選手権ロードレースを41.8kmの独走で制したウェレンス。その証であるベルギー王者ジャージを身にまとい、ボトルで水を浴びながら独走を続ける。残り3.5kmで後続との差を1分48秒まで広げると、モトカメラに笑顔を見せる余裕も。そして残り43.6km地点でのアタックから始まった圧巻の走りを完遂し、両手を広げてフィニッシュラインを駆け抜けた。

圧巻の独走からツール初勝利を手に入れたティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos
表彰式で勝利を喜ぶティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.
ジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャでそれぞれ区間2勝を挙げていたウェレンスにとって、キャリアを完成させる嬉しいツール初勝利。「誰もが憧れ、走りたいと願うレース。だが実際に勝てる人は多くない。だからこそ本当に美しい勝利だ。最終山岳での感触が良く、他の選手も強力だったので、勝つには単独で行くしかないと思った。チャンスを掴み、最後まで走り切る脚があった。最後まで踏み続けたのは、タイム差をしっかりとつけて全身で勝利を喜びたかったから。バイクを掲げようかと思っていたが、嬉しすぎて忘れてしまった」と饒舌に喜びを語ったウェレンス。また、「それでももしタデイ(ポガチャル)がパリでマイヨジョーヌを獲得できるなら、この勝利はすぐにでも彼に譲るよ」と、チームへの忠誠心も示した。

2位には追走集団から抜け出した同郷のカンペナールツが入り、3位を争う集団スプリントはレース序盤の落車で肩を脱臼したアラフィリップが先着。「落車で無線が壊れ、状況を把握していなかった」というアラフィリップは、勘違いのガッツポーズを見せる一幕もあった。

仲間の勝利を祝福するポガチャルら、メイン集団は6分7秒遅れでフィニッシュし、総合順位に変動はなし。ポガチャルが総合2位ヴィンゲゴーに4分13秒という大きなアドバンテージを手に、地中海沿岸の都市モンペリエで2度目の休息日を迎える。

3位スプリントを制し、勘違いのガッツポーズを見せたジュリアン・アラフィリップ(フランス、チューダー・プロサイクリング) photo:A.S.O.チームメイトの勝利に笑顔でフィニッシュしたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.

4分13秒のアドバンテージで2週目を終えたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.