ロシアの全面侵攻から4年目の夏を迎えるウクライナは、激しさを増すミサイルやドローンの攻撃に苦しんでいる。だが、支援国の一部は関心を別の問題へと向けている。
米国のトランプ政権はウクライナへの砲弾や防空システムの供与を停止した。備蓄状況を確認した結果だとし、米国が重要な支援を継続するとの期待を打ち砕いた。
フランスではマクロン大統領がロシアのプーチン大統領と電話会談を行い、他の欧州首脳を困惑させた。主な議題はイランだったとしているが、ロシアを孤立させる団結した取り組みを二の次とし、他の地政学的な問題を優先させたことは明らかだ。
戦争終結を目指したトランプ氏の外交攻勢は不発に終わり、ウクライナ問題への米国の関与低下は著しい。米上院はロシアに対して強硬姿勢を維持しているものの、「骨の髄まで砕くほどの制裁」が成立する見込みは立っていない。

ロシアのミサイルとドローンによる攻撃を受け、損傷した住宅建物(17日、キーウ)
Photographer: Efrem Lukatsky/AP Photo
今年に入りロシアはウクライナに対する空襲を大幅に強化し、大量のドローンとミサイルでインフラや住宅を破壊している。ウクライナ防空部隊によると、6月29日の攻撃だけで537のドローンと弾道・巡航ミサイルが使われた。
国連が1日公表した報告書によると、今年1-5月に戦争被害で死亡したウクライナの民間人は約1000人に上り、前年同月に比べ37%増加した。
不意打ち
米国の兵器供与停止に、ウクライナ当局者は詳細確認と影響把握を急いでいる。トランプ氏は先週、ハーグで行われた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に合わせたウクライナのゼレンスキー大統領との会談を「良かった」とし、ウクライナへの地対空ミサイルシステム「パトリオット」の追加供給を検討すると述べたばかりだった。

ザポリージャ州で、155ミリ榴弾砲を構えるウクライナ兵
Photographer: Dmytro Smolienko/NurPhoto/Getty Images
ウクライナ国防省は2日、米国から供与停止に関する公式な通知は受けておらず、納入予定にも変更は見られないと発表した。同国外務省は同日、駐キーウ米国大使館の臨時代理大使ジョン・ギンケル氏を招き、同日中に協力について協議したと明らかにした。
「ウクライナの防衛能力支援におけるいかなる遅延やちゅうちょも、侵略者の戦争とテロ継続を後押しするだけで、平和を導くことはない」と、外務省は声明で主張した。
NATO首脳会議でのトランプ氏の発言を聞いていただけに、米国の供与停止の決定に欧州首脳は不意を突かれたと、当局者は述べた。欧州首脳は細る米国の支援を補う計画を進めているところだという。当局者は非公表の協議内容だとして、匿名を要請した。
当局者によると、欧州の同盟国はホワイトハウスに決定の詳細な説明を求めており、決定が緩和される、あるいは一部撤回される可能性に期待を持つ向きもいる。
電話外交
欧州連合(EU)の有志国は年内にウクライナに弾薬200万発を提供すると約束するなど支援を強化しているが、その取り組みは十分速いとは言えないと、ウクライナのポドリャク大統領顧問は指摘。同氏はウクライナの放送局に対し、欧州の軍用品生産拡大は「遅い」と語った。
マクロン氏とプーチン氏の電話会談も、意識の低下を印象づけた。両者の電話会談は2022年以来で、フランス側が申し入れた。

マクロン仏大統領
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フランスの働きかけはイランの核開発を巡る危険が強まる中で、西側首脳の中でトランプ氏だけがプーチン氏に接触する状況を避けるために行われたものだと、マクロン氏の意向に詳しい当局者は説明した。
マクロン氏は、イラン問題について国連安全保障理事会の常任理事国5カ国共通のアプローチを構築しようとする自身の取り組みについて、欧州各国の首脳およびゼレンスキー氏にも説明したと、電話会談の内容に詳しい関係者は語った。フランスがウクライナ防衛支援を続けていくことも、ウクライナ側に伝えたという。
当局者によると、それでも欧州首脳の間でロシアとの対話ルートを開くことの有用性は疑われている。
一方、この電話会談は勝利としてモスクワでは受け止められている。モスクワを拠点とする中東問題専門家エレナ・スポニナ氏は、「欧州主導の動き」だと評価し、米国の兵器供与停止と重なったのは「偶然ではない」との見方を示した。
原題:Key Ukrainian Allies Are Shifting Focus to Other Priorities(抜粋)
