ユネスコ世界文化遺産に登録されているルーネンバーグには、当時の建物が70%ほどそのまま残っており、北米でも保存状態のいい植民地時代の開拓地とされている。(PHOTOGRAPH BY NOVA SCOTIA TOURISM)

ユネスコ世界文化遺産に登録されているルーネンバーグには、当時の建物が70%ほどそのまま残っており、北米でも保存状態のいい植民地時代の開拓地とされている。(PHOTOGRAPH BY NOVA SCOTIA TOURISM)

この記事は『ナショナル ジオグラフィック トラベラー(UK)』により制作されました。

 明け方、波に削られたペギーズ・コーブには靄(もや)が広がり、海岸線は曖昧になり、白く塗られた灯台は優美なベールに包まれる。足元では大西洋が花崗岩(かこうがん)に打ちつけられ、朝の空気に潮水のしぶきが上がる。集落では、木造のコテージが、こうした自然環境のなかで身を寄せ合うように並ぶ。波しぶきの打ちつける冬を越えてきた屋根板は銀色だ。ロブスター用のしかけは風化した郵便受けのように積まれ、また海中で自分の役割を果たすときを待っている。

 これは、カナダのノバスコシアに数多くある、海の鼓動に陸上の生活が長らく支配されてきた町の光景だ。ユネスコ世界文化遺産に登録されているルーネンバーグでは、いまだに大型帆船が、数百年続く町の船作りの歴史に敬意を示しながら、彩り鮮やかな海岸地区を滑るように進む。(参考記事:「知られざる入植者たちの歴史 ──ノバスコシアとニューブランズウィック」)

 かつてスコットランド移民にとっての最初の寄港地だった小さな町のピクトゥも、港町としての精神を保ち続けている。それを示す見どころのひとつ、ヘクター・ヘリテージ・キーは、カナダへスコットランド移民を運んだ船を記念する場所だ。

 かつて静かな漁場だった海辺の地域は、今では旅行客が多種多様なアイデンティティーを作りあげた船乗りや船大工、貿易商人や夢を追う人たちの物語を知ることができる、活気のある拠点となっている。それでは海辺のノバスコシアを味わえる、おすすめの町5カ所を紹介する。

ハリファックス

おすすめポイント:カナダの成り立ちを知る

 ノバスコシアの物語が始まるのが州都のハリファックス。大西洋の覇権をめぐって激しく争っていた、フランスと英国の対立の過程で作りあげられていった港町だ。ただし、1749年の町の建設よりはるか昔から、先住民族であるミクマクの人々がその周辺の海岸で暮らし、土地と海について深い理解を示していた。こんにち、国際都市のハリファックスは、ただノバスコシア最大の町かつ最初の通関地というだけではない。この地域の色とりどりの歴史を知る入り口の町なのだ。

ハリファックス・シタデル国定史跡で時間をさかのぼろう。砲台の音が城壁に響き、キルトを着たガイドが19世紀の要塞を今によみがえらせ、軍事力と海事の歴史を語ってくれる。(PHOTOGRAPH BY NOVA SCOTIA TOURISM)

ハリファックス・シタデル国定史跡で時間をさかのぼろう。砲台の音が城壁に響き、キルトを着たガイドが19世紀の要塞を今によみがえらせ、軍事力と海事の歴史を語ってくれる。(PHOTOGRAPH BY NOVA SCOTIA TOURISM)

みどころ:

 ウォーターフロント・ボードウォーク(遊歩道)を歩けば、ハリファックスの雰囲気がわかるだろう。港でエンジン音を鳴らす船に、波すれすれを飛ぶカモメ。活気のあるレストランや露店では、温かいロブスターロールに、グレービーソースをたっぷりかけたプーティン(ソースやチーズのかかったフライドポテト)など、あらゆるカナダのおいしいものが売られている。

 遊歩道の南端にある大西洋海洋博物館では、町の海をめぐる歴史、ミクマクの伝統から1917年のハリファックス大爆発、そしてタイタニック号沈没事故の犠牲者の捜索や救助活動とのつながりなどが紹介されている。(参考記事:「細野晴臣 タイタニック 祖父の真実」)

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